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63、魔石の花の店

 私達は、さっきの話をしながら、魔石の花を扱う花屋に向かっていた。


「しかし、やっぱ、リュックさんはすごいな。あんな短時間でどうやって魔物化したやつを見つけたんだ?」


「ノーマンさん、マスターはリュックくんを呼ぶ前に、すでに場所は見つけていたみたいですよ」


「えっ? ルーク、ほんの一瞬じゃないか」


「ノーマン、たぶん見つけたのは配下の幻術士じゃない?」


「シャラさん、正解です。近くにカースさんも居ましたもんね。俺の父さんが念話でマスターに事情を説明していたときに現れたから、そのあたりから探し始めてくれたんだと思います」


「やっぱり、幻術士が近くにいたのね。なんだか術を使われたような違和感があったんだよねー。頭の中を覗かれたときみたいな感じのー」


「全員から一気に情報を集めたみたいですね。急いでいたのか、乱暴なやり方だったから、俺も少し気持ち悪かったです」


(えっ……私は何も気づかなかったわ)


「マジか? 俺は気づかなかったぞ」


「バートンは呪いにかかってたからだろ。まぁ、俺も全くわからなかったけどな〜」


「アルさん、たぶん魔導系じゃないと気づかないですよ。逆に、人族のシャラさんが違和感を感じる方がすごいです」


「そう? ルークにそう言われると、ちょっと嬉しい〜」


 シャラさんは、とても嬉しそうに笑っていた。私だけじゃなくアルフレッドにもわからなかったことを察知できるなんて、さすが冒険者一家ね。危機探知能力が高いのだろう。


(私は、まだまだだわ……)



「でも、闇竜の眷属に生まれ変わっていたなんて……」


「えっ? けんぞく?バートン、彼女はすばしっこい影トカゲになっていたって、カバ……じゃなくて、リュックさんが言ってたじゃない」


「それ、影トカゲって俺も知らない魔物なんだけど? 地底だけにいる魔物なのか?」


「ローズちゃんもアルも、知らないのは当然だな。影トカゲっていうのは、闇竜が使役する魔物なんだ。魔族の国では、だいたい屍の山に生息しているんだ」


「闇竜のしもべってことなの? 闇竜って……存在するのね」


「闇竜のしもべの中でも一番下の……ゴミ処理役みたいなものだな。闇竜は地上で見ることはないから知らないよな。確か、ドラゴン族の次の族長争いをしている奴がいるぞ。今の族長である魔王の娘と、神族の闇竜が、バチバチな状態みたいだ」


「そう……。ん? 神族なのに闇竜なの?」


 そう聞き返すと、バートンは首をひねった。私は何か変な質問をしたのかしら。



「ローズさん、神族には、いろいろな種族がいますよ。ほとんどの神族は光属性ですけど、それだと、他の星からの侵略に対応できないと考えたんじゃないかと、爺ちゃんが言ってました。マスターも闇属性の神族ですし」


「へぇ。私の知らないことばかりだわ。私はまだまだね」


「ローズ、この学園はそのためにあるんだぜ。俺も逆にアマゾネスのことはよくわからなかった。互いの理解を深める場所だからな」


「アルフレッド、そうね。ありがとう」


「えっ!? お、おう……。ローズにありがとうなんて言われると、ちょっとビビるぜ」


「はぁ? 何、それ」


「悪気はないから、怒るなよ。それより、バートンの元気がないな」


「奥さんが魔物になっていたから……」


 バートンは、奥さんが影トカゲに生まれ変わっていたことに、ショックを受けていたようだった。屍の山ということは、墓地のようなものだろうか。そんな場所に生息する魔物だなんて……。


 みんなの視線がバートンに集まった。


「ん? 大丈夫だぞ。次は魔族になれるはずだから、これでよかったんだぞ。長い期間、俺が持ち歩いたせいで、あんな魔物になっちまったんだ。ユーリスに会ったら、謝らないと……」


「バートンさん、それだけ大切だったんですよね。でも、百年以上は、さすがにダメでしたね」


「ルーク、俺、何年経ったかなんて、気にしてなかったんだよな。失敗したぞ」


 バートンは、しょんぼりしつつ、でもその表情は明るかった。もう、大丈夫かしら。





「あー、ここだ。やっと見つけた〜」


「やっぱ、迷ってたんですね、アルさん」


「あはは、だってわかりにくいだろ」


 魔石の花を扱う店は、大通りから離れた普通の民家が並ぶ場所にあった。確かに、私なら絶対にたどり着けない。アルフレッドも、地図のようなものを出してそれを見ながら、やっとたどり着いた店だ。


「マッピングの魔道具があっても迷うなんてな」


「ノーマン、おまえならどうやってたどり着くんだよ」


「アル、俺はそもそもこんな店を探そうとはしない。各地に魔石の花を採りに行く方が早いからな」


(ノーマンもたどり着く自信がないのね)


「でも、こんなに隠された店を見つけることができる魔道具ってすごいですね。俺も欲しい」


「ルーク、これは、学園の魔道具科の試作品なんだよ。でも市販はされないと思うぜ。これがあると隠れているものを探せてしまうから、使い方によっては害になる」


「そうですね。しかし、魔道具って楽しいですね。俺、魔道具科に進学したいかも」


「俺も魔道具科狙いなんだよな。一番の人気学科だから、試験が難しいらしいぜ。ルークは算術をなんとかしないとな」


 アルフレッドにそう言われ、ルークさんはパッと私の方を見た。そんなすがるような目はやめて。


「ルークさん、一緒に頑張りましょうね」


 そう言うと、ルークさんはホッとした笑顔を見せた。こういうところは、年相応なのよね。


(ふふっ、かわいい)




 店に入ると、中は想像と違っていた。花屋というより、宝石店という感じだった。透明なケースに入れられた、大小さまざまなクリスタルのような花が、ショーケースの中に並べられていた。


「いらっしゃい。何の目的で来られた?」


(何? 失礼な男ね)


 主人らしき年配の男が、私達を睨むようにジッと見ていた。客に対する態度ではないわね。でも、アルフレッドは、気にもせず、普通に返事をした。


「店主、俺は、リュウ探偵事務所で見習いをやっているアルフレッドです。一緒にいるのは学園のクラスメイトです。ちょっと困ったことがあって、怪盗アールを呼びたいんです」


「探偵が、怪盗なんぞに頼るのかい。リュウは神族だろう。神族は怪盗を取り締まる側じゃないのかい」


「いや、所長には話していないんです。クラスメイトと相談して、謎解きをしていて虹色花束の一つは魔石の花じゃないかと考えて……」


「ふぅむ。なるほどな、その魔石の花の特定ができていないから、ワシの店を探し出したということかい」


「えっ? あー、まぁ、はい……」


「フォッフォッフォッ、素直じゃな。ふぅん、おまえは、フリードの孫か。このメンツからして、学園の変わり者クラスってとこか」


 すべてを見透かしているのかしら。もしくは頭の中を覗いているのかもしれない。この男の口調からすると、彼も神族なのだろうか。


「ローズさん、この人は、神族じゃないです。魔族です」


(また、思念が漏れてしまっていたのね)


「そ、そう」


「ほう、悪魔族か。坊やの父親の名前は?」


「確認する必要ないんじゃないですか、老師」


「フォッフォッフォッ、バレておったか。変装しておるのだがな。クラインの息子か」


「はい、そうです。初めまして、タトルーク老師」


 老師と呼ばれた男は、ニヤリと笑った。一方、その名を聞いたためか、バートンとタクトは固まっていた。


「フッ、名を聞いて怖がるとは情け無いのぉ。もう何のチカラもない爺だというのに。クラインの息子は、平気なようじゃな」


「俺もビビってますが……。老師、魔石の花なんですが……ライトブルーがないのは売り切れですか?」


「フォッフォッフォッ、ライトブルーは置いていない。それがおまえ達の求める答えじゃよ」


(どういうこと?)



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