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55、祭りの手伝いミッションを受注

「めちゃくちゃたくさん出てるじゃねぇか〜」


 私は、いま、クラスのみんなとギルドに来ている。掲示されている依頼票を見て、バートンは嬉しそうにはしゃいでいた。今夜のサプライズで実施される祭りの手伝いのミッションを、みんなで探しに来たのだ。

 私はどれが何だかわからなかったが、バートンが任せろと言って、珍しく真剣な顔をして選んでいる。



「シャラさん、バートンに任せて大丈夫なのかしら」


「あはっ、バートンは、クラスの中では冒険者ランクというかステージが一番高いから大丈夫だよ」


「ステージって何?」


「そっか、ローズさんは初ミッションだよねー。こっちの表を見てみて。いろはにほへとが終わると、カードの色が変わるのよ。それがステージアップだよ」


「カードの色?」


 私は、登録者カードを出してみた。そういえば、もらったまま、ブレスレット型のアイテムボックスに入れっぱなしだったわ。能力検査の結果も見ていない。


「ローズさんのカードは、フチなしで鉛色でしょ? 次は銅色、そして銀色、金色になって、さらにステージアップすると、フチありの鉛色になるのよ。バートンは赤フチの鉛色よ。あれ? 赤フチの銅色になっているみたい」


 シャラさんの視線の先には、登録者カードをひらひらさせているバートンの姿があった。なんだか見せびらかしているようにも見える。


 他にも、カードをひらひらさせている冒険者が何人かいた。一種のステータスなのだろうか。



「赤フチ?」


「そう、フチの装飾部分は、虹色ガス灯と同じ順番にステージアップするのよ」


「カードの色って、何回ミッション受ければ変わるの? って書いてあるわね。うーん、「い」から「ろ」に上がるのが100ポイント、それが、いろはにほへと……48段階。4,800ポイント必要なのね」


「そうだよ。でも、街にいるだけミッションもあるから、何も特別なことをしなくても、15年くらいでステージアップするよ」


「15年!? でも、何もしなくてもいいミッション?」


「治安維持のミッションだよ。街にいて、暴動や異変があれば、いち早く対処するだけ。逆に暴動を起こすと欠格事由になって、半年くらいミッション受けれなくなるよ」


「へぇ。ということは、この街にいる魔族がそのミッションを受けていること自体が、治安維持になるのね」


「うん? ローズさん、わかんない」


 シャラさんは、眉間にしわを寄せていた。えっと、そんなに、難しい話をしたかしら?



「抑制効果よ。ミッションを受けていたら暴動を起こせないということでしょう? うまくできた仕組みだわ。だから、こんな凶暴な魔族が大量に歩いているのに、平和なのね」


「ローズさんの話、むつかしいよ〜」


「シャラ、ローズはそういう教育を受けてきたんだと思うぜ。じゃなきゃ、女王になんてなれないぞ。王宮の王族も、継承権のある者は、帝王学を学ぶからな」


「へぇ、やっぱ、ローズさんってカッコいいねー」


「シャラ、俺も王族だぜ」


「うーん、アルは庶民派な感じだもん」


「そうか。ふっふっ、それが一番の褒め言葉だぜ」


(私も庶民派を目指すべきなのかしら?)




「おーい、ミッションを決めたから、みんな登録者カード持って来いよ〜」


 バートンが目を輝かせて叫んでいた。いいミッションが見つかったのだろうか。こちらを見てニマニマしている。

 私達は、ギルドの受注カウンターに並び、ミッションを受注した。仕事の内容は、あの探偵事務所の業務補佐だった。

 終了報告が不要のミッションは、報酬が前払いということで、今日の日当として銀貨3枚を受け取った。ほんの数時間で銀貨3枚とは破格だと驚いたが、バートンは銀貨5枚もらっていた。どうやらランクによって、報酬が異なるようだ。



「シャラちゃん、俺、ローズちゃんの応援できてるよな? 報酬はしょぼいけど、応援を優先したんだよ。できてるよな? なっ? なっ?」


(それでニマニマしてたのね)


「そうね、バートン、よく見つけたねー」


 シャラさんに褒められて、バートンはガッツポーズをしている。なんだか、少年のようね。


「でも祭りの手伝いで、銀貨3枚も報酬もらえるなんて、きつい仕事なのかしら」


「ん? ローズさん、しょぼい報酬だよ? 銀貨3枚なんて、ワンピース1枚買ったら無くなるわ」


「そうだけど、私が国でもらっていた給料は、数日の遠征に行っても銀貨3枚程度だったから…」


「それだから優秀な人は、冒険者になるのよねー。王国の警備隊なんかも安いよ〜。だから、休みの日は冒険者してるよ」


「そう……。いろいろと学ぶべきことが多いわ。シャラさん、ありがとう」


「えっ? あ、別に何も……」


「私の国は、閉鎖的すぎるから、シャラさんにとって当たり前のことを知らないのよ。ここに来て、みんなと知り合えて良かったわ」


「じゃあ、気づいたことは、じゃんじゃん話すね〜」


「ええ、期待しているわ」




 そして、私達は、探偵事務所へと移動した。


 事務所の1階の店の前に、大きな荷物が置かれていた。2階の事務所に入っていくと、たくさんの人がバタバタしていた。こないだより一層散らかっている。


「所長〜、クラス全員で手伝いミッション受注してきましたよー。それから、ラボさんから魔道具預かってます」


「アル、助かったよ。部長さんとこに取りに行かなきゃとは思っていたんだけどね。皆さん、ミッションありがとう、よろしくね」


「よろしくお願いします!」


「ふふっ、みんな仲良しだね。声が揃って」


(確かに、今のは綺麗に揃ったわね)


「俺達は何をすればいいですかー」


「今回、設営担当になってしまってね。街長の所から、予定図をもらってきてくれるかな? その予定図に合わせて、台の設置も頼みたい」


「了解です〜。じゃあ、みんな行くぜ」


 私は所長の仕草を目で追ってしまう自分に、ため息をついた。こんな恋心は高校生以来か……。そう考えて、ふと、自分が16歳だということを思い出した。

 前世の記憶を思い出してからは、自分は20代後半のつもりでいたが、そう、まだ16歳だ。こんな恋心も、まぁ年相応というところかしら。




 マスターの店の前にも、たくさんの荷物が置かれていた。


「ちょっと聞いてくるから、みんなは待ってて」


 そう言うと、アルフレッドは、店に入って行った。そういえば、私は、以前の朝食代を支払っていないわ。


「私、店に払ってない分があるから、ちょっと行ってくるわね」


 私もアルフレッドについて、店に入った。アルフレッドは、すでに予定図を受け取っていた。


「ローズ、どうしたんだ? 待ってろって言ったのに」


「私は別件なのよ。支払いを忘れていたから……」


 店の中には、マスターは居なかった。でも店員さんが、帳簿を調べてくれた。きちんと帳簿があるのね。


「数日前の朝食なら、もう支払済みになっていますよ」


「えっ? まだ支払ってないわ。誰が払ってくれたか、わかるかしら」


「はい、カースさんがまとめて支払われています」


「あの幻術士が? なぜ……」


「はい、カースさんはいつもこんな感じですから、お気になさらず。ご一緒されていたのですよね」


「ええ。お礼を言わなければならないわね」


「たいした金額じゃないですから、知らぬふりで大丈夫です。逆に、下手に礼を言うと……彼の場合は、変な反応をされることもありますから」


「頑固だものね」


「あはは、そうですね。次に会ったときにさりげなくで、大丈夫ですよ〜」


「わかったわ、ありがとう」


 私のやり取りを聞いていて、アルフレッドが不思議そうな顔をしていた。


「ん? 何?」


「いや、ローズが、男にありがとうって自然に言うなんて……ちょっと驚いただけだ。気にするな」


(アルフレッド、私のことをどんな目で見ているのよ)



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