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50、派手なお菓子の家での告白?

「す、すごいな、おまえら……」


「怪我はないですか?」


「大怪我はしていないよ。後で、誰かに治してもらう」


「遊撃隊には白魔導士もいますから。このワームは、採取の邪魔になるから、俺が持って行きますね。後で食べましょう」


「こんな大きなバケモノを入れる魔法袋を持っているのか」


「はい。ダンジョン産の大きなのを持ってます」


 ルークは、キョロキョロと見渡していた。


「シャイン、どこに行ったかな? この人達の怪我の治療をしてほしいんだけど」


「あの二人、消えたわよね」


「はい、このワームを追っていた魔物を追い払いに行ったみたいですけど」


「ん? 魔物なんて、いたかしら?」


「はい。あちらから、かなりの大群が来てました」


 そう言われて、私は忘れていたことを思い出した。確か採取班に追いつこうとしていたとき、横からドドドッと、何かが突進してくるような音がしていたわね。


「それを二人で? ドドドドッと、すごい音がしていたけど」


「追い払ったにしては、時間がかかりすぎですね」


「えっ!? もしかして、やられているんじゃ……」


「それはないです。あの二人ですから、遊んでるんじゃないでしょうか」


(遊んでいる? 追い払って、そのままサボってる?)




 採取班の採取が終わり、果物や野菜を持って森の中の派手な小屋がある集合場所へと移動した。


 派手な小屋の他に、コテージのような小屋もあった。小屋に囲まれた場所は、広場になっていた。派手な小屋からは甘い香りがする。私はこの島に来たときに、草原で会った精霊のことを思い出した。


 ミューがファンだと言っていたあの精霊は、いろいろなものをお菓子に変えてしまう精霊だ。もしかすると……?


「ローズさん、あの派手な小屋は、目印になっているんです。魔物は近寄れないように結界が張られいるので、困ったときは、あんな感じの小屋に逃げ込めばいいですよ」


「ルークさん、あんなのがいくつもあるの?」


「はい、この島のあちこちにあります。中に入ると、食べ物や飲み物があるので、困ったときの避難場所です。ただ、精霊ヲカシノ様が作ったので、紅茶とお菓子しかないようですけど」


「やはり、あの戦闘狂の精霊ね。あの小屋を見たときに、そうじゃないかと思ったわ」


「派手ですからね。たぶんこれは、キャンディで作られていると思います。小屋の一部を壊すと、ヲカシノ様が気づきますから、助けが必要なときは、壊せばいいんですよ」


「へぇ、それは便利ね」


 広場の端では、調理班が、料理をしていた。そこには、シャインくんとカバンの姿もあった。


「あー、あの二人、さっさと戻ってますねー。ちょっと行ってきます」


 ルークは、二人の方へと駆け寄っていった。さっきのバケモノを魔法袋から取り出して、なんだか楽しそうにしている。


(食べ物のことになると、ニッコニコなのね)


 年齢相応に、はしゃいでいるルークを見て、私は少し微笑ましい気分になった。シャインくんも、ルークに懐いているように見える。


(ふふっ、かわいい)



 私は、ふと、派手な小屋が気になり、近づいてノックをしてみた。中からは、なんの返事もない。そっと、扉を開けて、中に入った。


 お菓子で、できているとは思えないほど、中は普通のログハウスのようだった。キャンディの甘い香りも、小屋の中では気にならなかった。


 外からは、中の様子は見えなかったけど、窓からは外の様子がはっきりと見えた。窓に近づくとミントの香りがする。この窓はミントキャンディなのだろうか。


 キィ〜と扉が開く音がした。


 私は、振り返ってギョッとした。そこに立っていたのは、カバンだった。


「おまえ、何してんの? 遊撃隊の仕事、サボってんじゃねーよ」


「あ、ごめんなさい。ここは結界があると聞いたから、ちょっと休憩がてら、覗いてみたのよ。アナタこそ、途中で消えたじゃない」


「オレが消えて、寂しかったのか?」


「は? 何を言ってるの。ルークさんは、アナタ達は魔物を追い払いに行ったみたいだと言ってたけど」


「追い払ったのもあるけど、ほとんどは狩ったぜ。先に調理班に渡しておこーと思って戻ったんだよ。まだ、狩り班は、何も獲物を捕まえてねーしな」


「そう」


「おまえら、ワームを狩ったらしーな。あのワーム、めちゃくちゃ美味いんだぜ? 日本で言うと、牛肉と鶏肉のいいとこどりをした感じだ」


「なぜ日本を知っているの? アナタは一体……」


「日本から転生してきた神族は、オレの主君以外にも何人かいるんだ。そのうちの一人が、よく日本に仕入れに行くからな」


「えっ? ここから日本へ、地球に行くルートがあるの?」


「ルートってわけでもねーが、転生者が死んだ時代に女神は運ぶことができるからな。たまに、それに付いていくんだ。まぁ、荷物の一部としてだけどな」


「じゃあ、私も……いえ、なんでもないわ」


「ふっ、おまえのことは、カースから聞いている」


「えっ? な、なぜ? もしかして、幻術士の関係者みんなが知っているの?」


「いや、オレは個人的に聞いたんだ。カースは基本的に他言はしねーから。だから、オレの主君も、最低限の情報しか知らされてねーと思うぜ」


「じゃあ、私が背負っている言葉のことも?」


「カースから聞いた。でもライトは知らねーと思うぜ」


「そう……。じゃあ、私も女神様に頼めば地球に、私が死んだ時代に戻してもらえるのかしら」


「さぁな、それは厳しいかもしれねーな。女神は、おまえが死んだ時代には行ったことないだろーからな。それに、おまえは、女神の転生者ではない。地球の神が転生させたんだからな」


「そう、まぁ、こんなこと、女神様に頼めるわけないのはわかっているわ。どうすれば会えるかもわからないし」


「へ? 女神なら、おまえ、会ったことあるじゃねーか」


(あー、入学式のことね)


「もういいわ。他の手段を考えているから」


「おまえ、地球を救うつもりか? 無謀だぜ? それにおまえはもう地球には戻れないぜ? 何のために、救おうとしてんだ?」


「そうね、でも、やはり自分の生まれた星が消えるなんて、嫌だから。それに戻るつもりはないわ。私には役割があるもの」


「アマゾネスの女王か? だが、アマゾネスは、時代の流れから置き去りになっている国だ。そんな閉鎖的な国は、他の星からの何かがあれば一瞬で滅びるぜ」


「なっ? おまえ、アマゾネスを愚弄する気か!」



 私はカチンときた。反射的に反論した。でも、わかっている。この街にきて、そして前世の記憶を取り戻して、アマゾネスがいかに閉鎖的で情報の入らない国であるか……痛いほどわかっていた。


 アマゾネスは、このままではいけない。何かが起これば、真っ先に滅びるであろうことは、カバンなんかに言われなくてもわかっている。



「ふぅん、やっぱ、おまえ、変な女だな」


「なっ!? なに?」


(えっ?)


 私は、一瞬思考が停止した。ちょっと待って。



 私は、カバンの腕の中にいた。キュッと抱きしめられていたのだ。


「な、何をしているの、無礼者!」


「わからねー。オレ、なんだか、おまえと話すとイライラしてくるみてーだ」


「は? イライラするなら離しなさいよ、ちょっと!」


 私は振り解こうとしたが、彼はビクとも動かない。ちょっと、なんなのよ!


「なぁ、やっぱ、オレの女になる?」


「ならないわよ! バカじゃないのっ!!」


「好きな男でもいるわけ? アマゾネスのくせに、おまえ、恋愛感情あるんだろ」


(えっ……)


 私の頭の中には、所長の顔が浮かんだ。落ち着いた雰囲気の探偵の彼、そして手合わせをしたときの感覚。


「アナタには関係ないでしょ!」


「関係ある。オレ、おまえのことが妙に気になる。なんなんだ、おまえ……」


「知らないわよ」


 私は、一瞬ゆるんだ彼の腕の中から抜け出し、小屋を飛び出した。


(はぁ、もう、最低ーー)



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