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42、謎解きにワクワクするクラスメイト

 怪盗アール……。次元の狭間に入り込む能力を持つ者。確かに泥棒には最高の能力かもしれないわね。


「俺は、あの怪盗は処刑されたと聞いたんだけどな…。もし今も活動しているなら、会ってみたいぜ」


 なぜか、アルフレッドは子供のように、目をキラキラと輝かせている。好奇心が旺盛なのね。


「アル、あの怪盗が捕まらないのは、見た者はすぐにそれを忘れるからだと言われている。魅了を使う悪魔族じゃないかと思うんだが」


 悪魔族だとノーマンが言ったことで、ルークとタクトが同時にノーマンを見た。タクトは冷たい目で睨んでいる。だが、ルークは興味深そうにしていた。


「ノーマン、ちょっと待て! 投獄されていたって言わなかったか? 見た者がすぐに忘れるなら、誰が捕まえたんだ?」


「女神様の番犬と呼ばれる、女神様の側近達が数人がかりで捕まえたらしい」


(ただの泥棒を捕まえるために、女神様の側近が動くの?)


「うおっ! そんな戦闘力バリバリな神族にしか捕まえられないのか。俺、街長くらいしか知らないけど、半端なく強いぜ?」


「ちょっと待って。街長は白魔導士なのに、戦えるの? 治療をしているところしか、見たことないよー」


「シャラ、街長は、側近の中では一番の平和主義者だからじゃないか? 滅多に怒らないけど、キレると半端ないみたいだぜ」


「怒るタイプには見えないよ。想像できなーい」


 シャラさんは、その表情からみても、街長に好意的なようだ。私の中での街長のイメージが間違っているのかしら。不気味な頑固爺さんじゃないの?



「シャラさん、街長に会ったことあるの?」


「うん、あるよ。あれ? ローズさんは会ったことないの?」


「ないわ。どんな爺さんか知らないけど、種族名を聞いて驚いたわ」


「だよねー。半分アンデッドだし、魔族の国で会ったときは、死霊の姿をしていたし……。でも、死霊なのに青くてとてもキレイなんだけどね〜」


「えっ? 青い死霊? 幽霊? やはり、私には無理だわ。幽霊って、苦手だったから……。それより、魔族の国? シャラさんは地底に行ったことがあるの?」


「ローズさん、やっぱりお茶目ねー。ふふっ。魔族の国は、冒険者ミッションで、よく行くよ。死霊族は、格も戦闘力も低いから、魔族の国ではザコだよ? 怖くないよ。襲われても、簡単に倒せるからー」


「そ、そう…」


 そんな弱い種族なのに、女神様の側近をするほどの能力があるということかしら。少し興味があるわね。いや、でも……幽霊はダメだわ。



「おまえら、話の方向が全力で外れてねぇか? 怪盗の話じゃなかったのかよ」


(全力で? 変な言い方ね)


「そうだったわ。アルフレッド、でも、どこにいるかわからない怪盗をどうやって探すのかしら。さっきシャラさんが不思議な言葉を言っていたけど…」


「あぁ、ローズ、謎解きが必要だぜ」


「謎解き? さっきの言葉って、何かの暗号なの? 闇夜の晩に、虹色の花束を捧げれば、それが怪盗を呼ぶ合図になるのでしょう?」


「やはりアマゾネスは世間知らずだな。どこに闇夜があるんだ? 虹色の花束って意味不明だし、どこで捧げるんだ?」


 ノーマンは、勝ち誇ったかのように、上から目線で嫌味な笑みを浮かべている。ほんとに器の小さい男ね。



「地上はずっと太陽が出ているから、地底のどこかじゃないの?」


「ローズさん、地底は常に月が輝いているから、意外に明るいんだよ」


「ずっと月が輝いているの?」


「そうだよ。月明かりだけじゃなく、街には、あちこちにガス灯もあるよ」


「うーん。月明かりの届かない場所かしら?」


「ローズさん、シャラさん、地底に闇夜はないと思います。地上の洞窟じゃないでしょうか」


「ルークさん、洞窟なら地底の方が暗いんじゃないかしら?」


「地底の洞窟には、必ずそこを縄張りにしている種族や魔物がいます。それに、ヒカリゴケが生えていることが多いから、かなり明るいですよ」


「そうそう。地底の洞窟は、そう言えば外よりも明るいとこもあるよねー」


「へぇ、そうなのね。でも、地上の洞窟って……かなりの数があるわよね」


「虹色の花束の意味もわからないよねー」


「怪盗を呼ぶには、知恵が必要ってことだな。おもしれぇ〜」


 アルフレッドは、ますます楽しそうな顔をしている。『闇夜の虹色花束は怪盗を呼ぶシグナル』だったかしら? 探偵見習いのアルフレッドには、ワクワクする謎解きのようね。



「怪盗を呼べるということは、今までに呼んだ人に聞けばいいんじゃないのかしら」


「ローズさん、でも怪盗は、忘却系の術を使うみたいだから、呼んだ人も覚えていないんじゃないかな?」


「えっと、謎解きまで忘れてしまうのかしら?」


「おまえら、怪盗を呼んだ奴は、何か悪事を依頼したってことだ。呼んだ奴は謎解き方法を覚えていても、他人に喋るわけないだろ」


「ノーマン、でも、今は義賊だと言ってたわよね?」


「あぁ」


「じゃあ、悪事じゃないだろ。謎解きより、怪盗を呼んだことのある人を探す方が早いかもしれないな。所長に頼んでみようか」


 ドキン!


(また……突然、所長って言うのね)


「依頼料って高いんでしょうか」


「おっ、ルークも所長に依頼するのに賛成か」


「あ、アルさん、いえ、怪盗に依頼料を支払わなければならないのではないかと思って……」


「確かに……。高そうだな。怪盗を呼ぶ前に、みんなでミッションを受けて稼がないといけないな」


(あ、ギルドに登録者カードを取りに行かないと)


「コイツのために、なぜ俺達が稼がないといけないんだ?」


「ノーマン、別にローズのためだけじゃないぜ。伝説の怪盗を呼べるかもしれないネタなんて、滅多にないじゃねぇか。ワクワクしないのか?」


(ネタ? まぁ、いいけど)


「皆さんで一緒に、狩りミッションを受注するのも楽しそうですね。このクラスは、様々なトップがいるから、すごいパーティですよ」


「ルーク、確かにそれも面白いな。学園に報告しておけば、授業の一環になるから、暇な教師が同行してくれるかもしれないし」


 アルフレッドは、私達の顔を見回した。バチっと目が合って、私は思わず目をそらしてしまった。まだ登録者カードさえ持ってないとは言えない。



「ローズ、男が多いパーティは嫌か? 引率は女性教師に頼めば大丈夫か?」


(はぁ、仕方ない、白状するわ)


「そうね。その前に、私はまだギルドの登録者カードを持っていないのよ」


「ん? まだ登録していないのか?」


「学生証を持って手続きに行ったけど、封印のことでいろいろバタバタしていたから、まだ受け取りに行っていないわ」


「新人冒険者は、狩りミッションなんて受注できないぞ。とんだお嬢様だな」


「ノーマン、ローズに突っかかっるなよ。別に明日すぐに狩りにいくと決めたわけじゃないんだから」


「狩りミッションは、ランクを上げなきゃ受注できないじゃないか。洞窟ミッションを受注すれば、暗い洞窟を探せるかもしれないのに」


「ノーマンも、闇夜の解釈は、洞窟案に賛成なのね。暗い洞窟が、もしかしたら、怪盗の隠れ家かもしれないわね」


「は? かもしれないじゃなくて、隠れ家に決まっているだろ。常に居るかはわからないが、少なくとも怪盗がいつも出入りする場所だ。じゃないと、合図にならないからな」


「ちょっと待て。全員揃わないと授業の一環にはできないからな。まずは、バートンを探すことが先だぜ」


「トリ頭、使えねぇな」


「緊急ミッションなら、ギルドに聞けばわかるんですよね」


「そうだな、ルークが一番冷静だぜ。飯食ったら、ギルドに行こうぜ。ローズのカードを受け取るついでに、職員さんに事情を話せば、バートンの居場所もわかるだろ。じゃあ、みんな、さっさと食うぞ」


 そう言うと、アルフレッドはまた料理を取りに行った。


(まだ食べるの?)



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