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40、クラスメイトに話す

 ゴーン、ゴーン、ゴーン


 低い鐘の音が鳴った。


「おーい、みんな集合〜」


 アルフレッドが声をかけた。終業の鐘かしら? 私はシャラさんと、アルフレッドの元へと移動した。


「今日はこれで終わりだ。明日以降の話をしたいから、メシ行かないか? 俺、昼メシは、銅貨1枚ショップのパンだけだったんだよな」


「アルさん、俺も腹ヘリで死にそうです」


「ルーク様、大丈夫ですか。ルーク様に死なれては…」


「タクト、前にも言ったけど、例え話だからー」


「はっ、申し訳ありません」


 タクトは、ルークに取り入りたいというより、ルークのことが大事すぎるのかもしれない。以前の私は気にもしなかったが、今は少し興味がある。



「じゃあ、今夜は食べ放題の店に行こうぜ」


「いいですね。くいだおれストリートですね」


「あぁ、みんな行くぞ。ローズの封印の話も聞きたいしな」


 ノーマンは嫌そうにしていたが、封印の話に興味があったのか、しぶしぶ付いていった。

 タクトは相変わらず暗く無表情だが、ルークが行く場所に付いて行かないわけがない。


 黒魔導族の大人が、悪魔族の子供にここまで執着するなんて、あまりあることではないと思う。そもそも、魔族が他種族に仕えるということ自体、あまり聞かないことだ。

 それほど惹きつけるチカラを、ルークは持っているということなのだろう。



「ローズさん、魔族は種族ごとに、魔王が居るのはご存知ですか?」


「ええ、あ、また思念が漏れてしまったのかしら」


「はい。聞こえてしまいました」


「あらら……」


「安心してください。おそらくタクトには聞こえていません。俺は、一族の中でも、思念を拾いやすいタイプなんです」


「そう、ルークさんは紳士ね。それで魔王が、何?」


 紳士だと言うと少し照れ笑いを浮かべながら、ルークは話を続けた。


「はい、種族の長である魔王には、格というものがあるのです。格の高い魔王の中で最もチカラのある者が大魔王になります。格の低い魔王は、ただの族長扱いです。だから、より格の高い他種族に仕えたいという動きは、普通のことなんです」


「なるほど、ルークさんの種族の長は、大魔王だからということね」


「はい、俺は直系の子孫なので、かなり多くの配下の申し出があります」


「違う! 私は大魔王様の直系だからという理由で、ルーク様にお仕えしたいわけではない!」


 タクトが、珍しく口を挟んだ。ルークがチラッと彼の方に目をやると、タクトは、しまったという顔をしていた。


「も、申し訳ありません。お話の邪魔をするなどと、私はなんて無礼な振る舞いを……」


「俺だけじゃなく、ローズさんにも失礼だよ」


「はっ」


「ルークさん、彼は必死に……本気なように見えるわ。ただの格という理由であれば、ここまでルークさんに執着しないと思うわよ」


 そう言うと、私がルークに意見を言ったことが気に障ったのか、タクトは私をギロリと睨んだ。擁護してあげたはずなのに、失礼な男ね。


「ローズさん、ありがとうございます。俺はまだ子供ですから、配下はまだまだ決める時期じゃないんです。父は早くに第1配下を得たから、俺も早く決めると思われてるみたいで…」


「そうなのね。それで、タクトが学園にまで付いてきたのかしら。でも、時期が来れば、きっと良い主従関係になると思うわ」


「ローズさんにそう言ってもらえると安心します。ただ、俺には、タクトよりも先に出会った、配下候補がいるんですけどね」


「あら、そうなの。優秀な人?」


「はい。ただ、まだ子供なので、ちょっと泣き虫なんです。それに何度言っても、無理だと断られてしまうんですよね」


「ルークさんの方からスカウトしているの?」


「はい、そうなんですが、なかなかうまくいかないんですよ」


「そう。それも時間が解決してくれると思うわ。時期が来れば、ルークさんの申し出を、受けてくれるようになるんじゃないかしら」


「ふふっ、だといいな」


 泣き虫という言葉で、私はシャインくんの顔を思い出していた。あの子は、いじめられると言っていた。この学園にイジメがあるのだろうか。



「おーい、おまえら、どこまで行くんだよ」


 ルークと話しながら歩いていて、不覚にもアルフレッドが止まったことに気づかなかった。


「あ、気づかなかったわ」


「おいおい、おまえらまさか、そういう関係……なわけないか。ローズはアマゾネスだもんな。悪りぃ」


(私は確かにアマゾネスだけど……)



 店は、前にミューと来た、あの食べ放題の店だった。入り口で、まさかのノーマンが支払いをしていた。


「えっと、ノーマンが出してくれたの?」


「は? これくらいの金額で、まさか割り勘でとか言うんじゃないだろうな」


「ありがとう。ごちそうになるわ」


「へっ? あ、あぁ、別に…………おまえ、どうしたんだ? 男におごらせるのは、嫌なんじゃないわけ?」


「確かに、ちょっと抵抗はあるけど。でも、記憶が戻ったから、少し緩和されたわ。以前の私は男女平等の世界に居たから」


「そんなことでアマゾネスの騎士が務まるのかよ」


「ふふっ、逆よ。視野が広がったわ」


「へぇ……あっそ」



 席に案内され、すぐにアルフレッドとルークは、料理を取りに行った。なんだか兄弟のように仲が良さそうに見える。剣術練習で、手合わせをしてから、遠慮がなくなったようだ。


「ローズさん、一緒に取りに行きましょう」


「そうね。あ、あの人達……」


「取りに行く必要がなくなっちゃったね」


「確かに…。でも、あんなに食べられるのかしら?」

 

 私達のテーブルには、驚くほどたくさんの料理が並んでいた。もしかしたら、気を利かせて取りに行ってくれたのかもしれないけど。



「さぁ、食い物は、たんまりあるぜ。シャラもそこに座れ。ローズの話を聞こうじゃないか」


 こんなたくさんの食べ物を前にして話すような話ではないけど、まぁ仕方ないか。


 みんなの視線が私に集まった。いや、タクトは気にせず、マイペースなようだが。



「昨夜から今朝にかけて、占いの館の幻術士に、まず、私の前世の記憶を思い出させてもらったわ。でもそれだけでは封印は解けなかったの」


「二段階の仕掛けだから、前世の記憶を思い出せば封印が解けるはずなのにですか?」


「ルークさんは、そこまでわかっていたのね。幻術士もそれで解けると思っていたみたい。私は記憶が混乱している状態だったから、すぐに眠らされたわ。その間に、理由を探ってくれたみたい」


「おい小娘、簡単に言うが、理由を探るなんて、憑依しても難しいぞ。おまえの前世に戻るわけにもいかないしな」


「私の前世に行って、私が死んだ原因を見てきたそうよ」


「次元と時間軸を越えたということか? まさか」


「タクト、カースさんならできるよ。ただ、かなり消耗するはず。彼は思念だけで移動していたんだろうから、神経がすり減るよ」


「かなり消耗したと言っていたわ。私には想像もできないことだから、どれくらい大変なことかはわからないけど」


「カースさんが消耗したというなら、とんでもなく大変なことです。彼は魔力量も異常なので、多少のことでは疲れもしないみたいですから」


「ローズ、それで?」


「彼によると、私の死因は、星の消滅だったそうよ」


「ええっ!? 星が消し飛んだ? なぜ?」


「神々の戦乱に巻き込まれたらしいわ。前世の私は、壁がオレンジ色に揺れるように見えたのよ」


「極炎系の魔法か……星を吹き飛ばすほどの魔力を持つとなると、やはり神か魔王だな」


「その状況を知らされたことで、ローズさんの封印が解けたのですか」


「ええ」


「まさか、封じられていたのは、星を救えという指令じゃないだろうな」


「アルフレッド、勘がいいわね」


 シーンと、皆は静まり返った。


(無理なミッションよね)



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