表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/124

37、心配性な寮長と、変な案内係

「ローズ様ぁ〜、ミューにはあの女性が何を話していたかわからないです。教えてください〜」


「そうね、日本語だったからね。幻術士さんはなぜわかるの? 日本語を知っているの?」


「あぁ、日本には何度か行ったからな。まぁ、時代は昭和だったようだが」


「じゃあ、地球が消滅してしまったら、あなたも地球に行けなくなって困るのよね? 無茶振りに協力…」


「俺は困らない。俺が行く時代の地球はあるからな。買い物も困らない。だから、おまえも、気にする必要はない」


「あなたには、地球は救えないってことかしら?」


 私はあえて、挑発的に話した。プライドの高い彼のことだ。普通に聞くよりも効果があるはずだ。

 ミューは、私達の会話から状況を把握しようと、ジッとこちらを見ていた。


「ふん、小娘、それで俺を挑発しているつもりか。はぁ、ガキには付き合っていられない」


「できないということね?」


 すると、幻術士はカチンときたらしい。


「おまえ、少しは自分の頭を使って考えてみろ。神々の戦争をどうやってやめさせるんだ? どの次元、どの時間軸での戦争かさえもわからない。奴らは時空を超えながら戦っているのだからな」


(そ、そんなの、私には想像さえできないわ)


 私が黙ると、幻術士は小さなため息をついた。


「おい、マナを循環させてみろ」


「えっ? どうやって…」


「何も遮断するものはない。もう魔法を使えるはずだ」


 私は手先にマナを集めることはできたが、循環なんてできない。今まで、できなかったことだから、やり方がわからない。


「まぁ、学園で誰かになんとかしてもらえ。俺の仕事はここまでだ。じゃあな」


「えっ……あ!」


 お礼を言おうと思ったのに、もう幻術士の姿はそこにはなかった。おそらく、かなりの労力をかけさせてしまったようだ。キチンと礼を言うべきだった。


「ミュー、お礼を言えなかったよ」


「また、会ったときでいいんじゃないですかー」


 私は、日本語で何が語られたのかをミューに話した。ミューは驚き、そして幻術士と同じことを言った。


「ローズ様は気にしなくていいと思います。星が消滅してしまう事故は少なくないですし、何より、そんな神々の戦争を止めることなんて、できませんよ…」


「そうよね。私にも、手段なんて想像もつかないわ。でも、私が忘れないようにと、右肩の焼印が…」


「ローズ様だけじゃなく、数百人に封印が施されたなら、誰かがなんとかしてくれるかもしれませんよ。ローズ様はただの人族なんですから、無理ですよ」


「確かに、もっとチカラのある種族に転生した人なら、可能かもしれないわね。私には、どうすればいいのかさえ、何もわからないわ」


「ローズ様、考え事より、今日は学校あるんじゃないですか? 遅刻しますよ」


「そうね。あ! ギルドの冒険者カードは…」


「そっちは、学校が終わってからで大丈夫ですよー。たぶん数日は普通に置いておいてくれますよ」


「わかったわ。魔法学園に行ってくるわ」


「じゃ、ミューは、宿に戻って寝ます〜」


「ミュー、心配してずっとそばにいてくれたのよね。ありがとう」


「あれ〜? なんだかローズ様が、素直で怖いですぅ」


「もう、ミュー!」


「ひゃっ! やっぱ、いつもの怖いローズ様でした〜」


(ミューなりの気遣いなのかしら?)


 ミューは、キャハハと笑って手を振り、宿のある通りへと、バタバタと走り去った。


 私達がバーから出ると魔道具が作動していた。シャッター代わりかしら? 不思議な魔道具が多くて戸惑ってばかりね。


(そういえば、寮長は魔道具科だと言っていたわね)



 私は、寮で会った親切な男のことを思い出した。あのときの私と今の私では、当たり前だけど、随分と物事の捉え方が変わってしまったと思う。


 アマゾネスのローズとしては、男は下等な生き物だと見ていたが、元日本人の美優としては、対等な存在だ。

 なによりも、この点の頭の整理が一番難しいような気がする。まぁ、自分の感覚通りに生きるしかないのだけど…。




「おっ! おまえ、昨夜、寮に戻ってこなかっただろー。どこ行ってたんだよ、心配したじゃねぇか」


 学園の門をくぐると、まるで門番かのように寮長がいた。


「あ、寮長、おはようございます」


「お、おう。おはよう。ローズ、寮に戻らないときは掲示板に書いておけよ。ギルドに問い合わせたら、夕方に取りに来るはずの冒険者カードを取りに来ていないって聞いたから、何かあったのかと焦ったぞ」


「え? そんなルール、知らなかったから…。ごめんなさい」


「あ、いや、別にそんな顔をされると…」


 何? 寮長ってこんな人だったかしら? なんだか、もぞもぞしているというか…。まぁ、いいか。


「次からは気をつけるわ」


「あぁ、そうしてくれ」


 寮長は、他の人にも声をかけていた。どうやら、本当に門番をしているようだ。



 校内に入って私は、どこへ行けばいいのかわからないことに気づいた。案内板も標識もない。まぁ、当然ね。

 キョロキョロとしていると、左腕に腕章をつけた男に声をかけられた。


「新入生かな? もしかして、迷い子?」


「はい。どこへ行けばいいのかわからなくて…」


「クラスは? 学生証、持ってる?」


「ええ、持っているわ」


 私は、彼に学生証を見せた。


「50ー2期生、ローズさんだね。おっと、Sクラスか」


「50ー2期生?」


「あー、この数字ね。学園設立50年目の秋入学ってことだよ。入学は、春秋冬の年3回あるからね。冬は人族の入学はないんだけど」


「へぇ、学生番号か何かだと思っていたわ」


「そういう所に気づいてるって、ローズさんはすごいね。座学でSクラス入りかな?」


(普通のことじゃないの?)


「ええ、そうよ」


「俺はヒューズ。同じ授業を受けるときはよろしくね。ここだよ、同じクラスメイトは、いるかな?」


 歩きながら雑談をしている間に、ドームのような場所に着いた。中を覗くと、アルフレッドとルークが、剣術の手合わせをしていた。


(二人とも本気じゃないのに、速いわね)


「おっと、もしかしてあの少年も、クラスメイト?」


「ん? ルークのことかしら?」


「そう、確かそんな名だった。大魔王の直系の子孫だよな。まだあんな子供なのにすごいな」


「有名人なの?」


「そりゃそうだよ。あの子の父親は、この街の長の主君だからねー。みんな注目している」


「そう。でもなんだか、そういう見方ってどうなのかしら? 彼の家族じゃなく、彼自身を見てあげるべきだわ」


「へぇ、おまえ、いい女だな」


「は? どういう意味?」


「いや、そんな睨まないでくれよ。悪意はない。いや、むしろ…」


 そのとき、スッと誰かが近寄ってきた。


「おまえ、ルーク様に取り入るだけじゃなく、小娘にまで媚を売るのか。アマゾネスは確かに豊かな国だからな」


(相変わらず、暗いわね……なぜ国をバラすのかしら)


「まじ? ローズさんって、アマゾネス!?」


「ええ、そうよ」


「この小娘は、次期女王だそうだ。おまえのモノにはならないだろうな」


「アマゾネスだから、そんなに凛としているんだな。いい! めちゃくちゃいい!」


(なんだか、気持ち悪いわね)


「何してるのー、タクト。またケンカじゃないよね」


 手合わせをやめて、ルークがこちらへ走ってきた。


「げっ! じゃあ、案内はこれにて失礼するよ」


 そう言うと、ヒューズは逃げるようにホールから出て行った。


「はぁ、ローズ、絡まれたか? 大丈夫か?」


 ルークの後ろから、アルフレッドが歩いてきた。


「大丈夫よ、もしかしてアルフレッドの知り合い?」


「あぁ、王宮に仕える貴族の息子だよ。アイツ、たぶん、ローズにロックオンしたぜ。厄介だな…」


「どういうこと?」


「まさか、ローズの国のこと、言ってないだろうな?」


「タクトさんが…」


「おいおい、タクト…」


「隠すことではない」


(な、何?)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ