25、Sクラスの最初の課題、ほぼ完了
「ルーク、この封印が解けたら、私はどうなるの?」
「魔法を発動できるようになると思います」
「他には?」
「封じられた能力や記憶がよみがえります。それによって、今までの人生が大きく変わることも少なくありません」
「やっぱり……私は操られるのかしら」
「……かもしれません。でも今ならまだ打つ手はあるはずです」
「そう……かしら」
私の様子が変わったことに、みな気づいたようだ。男に弱みを見せるなんて、アマゾネスとしてあまりにも恥さらしだ。
「おまえ、どういうことか話してみろよ」
「関係ない人達を、巻き込むわけにはいかないわ」
「何言ってんだ? ローズが魔法を使えないと俺達は、進級できないかもしれないんだぜ? 無関係じゃないだろ」
「じゃあ、アル、私、学園をやめるわ」
「ローズちゃん、退学はできないんだよ。卒業か、休学しかないよ」
「じゃあ、休学するわ」
「あのなー。おまえ…」
「放っておけばいいじゃないか。アマゾネスなんていない方が学生生活を楽しめる」
「ノーマン、おまえなぁ…」
「あの、ローズさんは、アマゾネスですが男でもキチンと評価する懐の広さを持ってますよ。話せないのは、信用されていないということです」
ルークが、ノーマンを真っ直ぐに見て、そう言った。ノーマンは、一瞬カチンときたようだけど、ルークには反論しない。強い者には従うということなのか。
そういえば、みんなのサーチをしていなかった。ノーマンだけは、私より弱いことがわかっていたけど…。
私は、一人一人の戦闘力をサーチした。
アルフレッドは、私より強い。やはりね…。
シャラは、魔力は高いけど回復役ね。
バートンは、かなり強い。絶対に勝てない。
ルークは、戦闘力が見えないわ。
タクトも、戦闘力が見えない…。
やはり、人族より魔族の方が戦闘力が高いのね。認めたくないけど、頭では理解していた。女性より男の方が体力的に上位であることも…。
(はぁ、らしくないわね。切り替えなきゃ)
「ローズさん、事情を話してみてくれない? 男の人に話すことに抵抗があるなら、私が聞いて、みんなに事情を説明するよ」
「シャラさん、お気遣いありがとう。取り乱してしまって、ごめんなさいね」
「そんな、ローズさんは私より年下なんだから、気にせず、もっと甘えていいんだよ? あ、王女様にこんなことを言うと失礼かな」
「ふふっ、ありがとう。シャラさんは優しいわね」
「ローズちゃん、俺も優しいぜ〜」
「バートン、おまえの優しさには、シタゴコロはないと誓えるか?」
「は? アル、何言ってんだ? 下心あるに決まってるだろうが。かわいい子にはとりあえず突撃するのが男ってもんだ」
「はぁ、やはりトリ頭は、何も考えてないようだな」
「ノーマンは何か考えてんのか? お高くとまってると彼女できねぇぞ」
「俺は、別に女を探しに来たわけじゃないから」
「じゃあ、男を探しに来たのかよ?」
「えっ……そんなんじゃない」
「まぁまぁ、バートン、ちょっとは空気読めよ」
「はぁ? 空気に何が書いてあるんだ? 読めねぇぞ」
バートンは、嫌味ではなく、本当に不思議そうにしている。何というか、お気楽な男だ。
アルフレッドは、みんなをまとめようと頑張りすぎているように見える。互いのことを知らないのに……すべてが善人かのように思っているのだろうか。
ノーマンは、何か目的を隠して学園に入学したようにみえる。神経質だし、プライドが高い。
私は、だいたいクラスメイトの性格が掴めてきた。あ、タクトはよくわからないけど…。彼は、ルークのこと以外には全く関心なさそうだ。
でも、だからと言って、封印の話をしていいかは、正直なところわからない。だが、アマゾネスと繋がりのありそうな人はいない。クラスメイトに知られても、国に情報が漏れるリスクは、高くはないような気がする。
(そうね、うじうじしていても仕方ないわ)
「わかったわ。封印のこと、話すわ」
「あ、ローズ、その話、所長にも聞かせていいか? 俺達に手に負えないものなら、打つ手を考えてくれるはずだ」
「えっ? 所長って?」
「俺が仕事してる探偵事務所の所長だ。神族だから、顔は広いはずだぜ」
「封印の話が、なぜ探偵事務所なの?」
「探偵事務所は、街の、なんでも屋なんだよ。みんな、困ったことがあれば、役所か探偵事務所に行くんだ」
「そう……でも…」
「大丈夫、秘密厳守がモットーだからな。マスター! 所長をここに呼んで〜」
アルフレッドは、喫茶店のマスターに、所長を呼んで来いと言っている。マスターは片手を上げて返事をしていた。どういうこと? アルフレッドが王族だから?
「アル、なぜ、マスターに言うんだ?」
珍しく、バートンがまともな質問をした。
「ん? だってこの店は所長の店だから。マスターは、所長を呼ぶ連絡係なんだ。マスターも神族だから、念話を使えるんだぜ」
「そうなの? 神族って便利なんだね。私、念話どころか、簡単なテレパシーの受信もできないよ」
「神族の全員ができるわけじゃないらしいぜ」
「ふぅん」
「所長はこの時間なら、たぶん2階に居るんじゃないかな? ここの2階と3階が探偵事務所なんだ。まぁ、3階はただの物置きになってるけどなー」
「へぇ」
「ローズ、せっかく話す気になったのに、水を差して悪いな。先にもう一つの課題を片付けようか」
「もう一つって、まだ何かあったか?」
「バートン、剣術、武術だよ。確か3人が評価Eだっただろ?」
「シャラちゃんと、ノーマンと、あと誰だっけ?」
「タクトが、剣術だけ評価Eだったよな」
話題をふられて、タクトが顔を上げた。そして、ちらっとルークを見て、そのまま目を逸らした。
「タクト、きちんと答えなさい」
「はっ、申し訳ありません。剣術は、そもそも剣は握ったこともありません」
「剣術も武術も、評価Dに上げるのは結構な時間がかかるよな。ここは、ペアを組むか?」
「アル、俺、シャラちゃんがいい」
「バートン、却下だ。下心しかないんだろう?」
「なっ? なぜわかるんだ!?」
「さっき、自分で認めてたじゃねぇか、トリ頭」
ノーマンは、バートンが嫌いなのか、やたらとトリ頭と、けなしている。だが、バートンは、嫌味に気付かないものだからケンカにもならないが…。
「うーむ。タクトは、剣術をルークに教わりたいか?」
「えっ? そんな……ルーク様に? とんでもない。恐れ多いことだ」
「じゃあ、まず、シャラは、ローズが担当な。武術も剣術も評価Cなら、両方任せて安心だ」
「わかったわ」
「ローズさん、よろしくです〜」
「ええ、頑張りましょう」
「じゃあ、タクトの剣術は、俺が担当だな」
「タクト、よろしくって言って」
「アルフレッド、よろしく」
「あぁ、人族に教わるのは嫌かもしれねぇけど、そういう忍耐もどこかで役に立つかもな」
「別に、嫌ではない。おまえは、俺より物理戦闘力は圧倒的に高いからな」
「なら、よかったぜ。あとは、ノーマンだな、剣術はルーク、武術はバートンが担当してくれ」
「両方、魔族かよ…」
「怖いのか?」
「クラスメイトを殺したりはしないだろう? それでいい」
「ノーマン、教わる方が偉そうだぜ。おまえも、挨拶しとく方がいいんじゃねぇの?」
アルフレッドにそう言われ、ノーマンは、ふたりをちらっと見て、ボソッとよろしくと言っていた。
「まぁ、俺達が担当するなら、ノーマンはすぐに評価Dに上がるぜ。なー、ルーク」
「ふふっ、あまりスパルタにならないようにね。ノーマンさんは人族だから、簡単に潰れてしまうよ?」
「結界術士なら、バリアは得意なんじゃねぇの?」
「バートン、無茶するなよ? ノーマンの顔色が悪い」
「ん? 風邪か?」
「ぷはは、ダメだ。バートンは、天然すぎる〜」
(ふふっ、確かに)




