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24、ローズの封印

 私達は、アルフレッドがオススメだという店に入った。


 城壁内の壁沿いにあるレトロな雰囲気の喫茶店だった。それに、客層もレトロ……だと言うとお叱りを受けそうだが、老人だらけにみえる。



「アル、なんかここ老人だらけじゃねぇか?」


「バートンもそんなに若くはないだろ? 20代後半にみえるけどさ」


「俺、まだまだピヨピヨだぜ? 神戦争の後に生まれたから、30くらいじゃねぇか?」


「神戦争は、50年前だぜ」


「あー、じゃあ、50の少し下くらいかもな」


「バートンも算術苦手だったな。数、30より上は、わからないとか?」


「なっ!? なんでわかるんだよ。アル、おまえ、俺の思考を覗けるのか? 人族だろ?」


「覗けるわけねぇだろ。俺は、探偵事務所で働いてるんだぜ? それくらい、すぐにピンとくるぜ」



 私達は、席に案内され、メニューを受け取った。男達が妙な言い合いをしてるが無視した。


 メニューには、軽食と飲み物だけだった。もう夜なのにアルコールは置いていないらしい。


「ローズさん、何にする? 私はカフェオレにしようかな」


「えっ? シャラさん、コーヒーじゃない? カフェオレって…」


「そうよ。コーヒーにミルクが入っているの。美味しいよ」


「コーヒーって、苦いし酸っぱいでしょ?」


「あー、この街のコーヒーは、そんなに苦くないし、酸っぱくもないわよ。神族の特殊なルートで仕入れているらしいわ」


「へぇ、あ、そっか。神族の街ですもんね。そういえば神族ってあまりいないのかしら?」


「うーん、店や宿を営んでるのは、ほとんどが神族だと思うよ。でも、街の半数は魔族ね」


「えっ、そうなの?」


(だからこの街は強い人が多いのか…)


「そうよー。魔族の国は地底にあるから、太陽が昇らないでしょ? 太陽の光を浴びたい魔族は、地上だとこの島にしか住めないから」


「あ、そうね。二つの大陸は、一応どちらも人族の国だわね。私の方の旧帝国側は、魔族もかなりいるけど、王国側は人族だけなのよね?」


「うん、王国側はほとんど人族だよ。そういえば、昔、太陽を求めて、旧帝国側では魔族の侵攻が続いてたって習ったよ。でも旧帝国側は、寒いでしょ? きっとこの島の方が快適だよ」


「そう……確かにこの島が出来てから、魔族との戦乱はかなり落ち着いたって聞いたことあるけど、小競り合いは毎日続いてるわ。昔はもっと激しい戦争をしていたってことらしいけど」


「へぇ、そうなんだ。私は王国側で生まれたからなぁ。あ、ローズさん、注文どうする?」


「じゃあ、私もカフェオレにしてみるわ」


「ふふっ、もし苦かったら他のも注文すればいいからね」


「ええ、ありがとう」



 そして、みなそれぞれ注文が終わったところで、アルフレッドが話を始めた。


「よし、じゃあ、続きの話し合いやるかー」


「俺、難しいの無理だからな」


「あぁ、わかった。バートンは、はい、だけ言ってればいいから」


「はい? なんかわからねぇけど、はいー」


「じゃ、みんなの評価Eの改善方法だけどな、算術は、数の数え方をを覚えて、簡単な釣り銭計算ができれば大丈夫だ。そんなに問題なく習得できる」


「えー、数の数え方を覚えるのが大変じゃねぇか」


「バートン、はい、だけって約束したよな」


「おわっ? そういうことかよ。おまえ、姑息な手を使うじゃねぇか……はいー」


「ふっ、素直だな」


「なんだ? ノーマン、性格悪いぞ」


「うるせぇな、トリ頭。はい、だけ言っとくんじゃないわけ?」


「おまえとは、その約束はしてねぇ」


「あの、話がそれてますよ。アルさん、続きをお願いします」


「ルーク、ありがとな。おまえが一番大人だな」


「当然だ。ルーク様は、おまえ達とは違って…」


「タクト、余計なこと言わないの」


「はっ、申し訳ありません」


「ふっ、ルークも数の数え方を覚えること、できるな?」


 すると、ルークは私の方をパッと見た。私が頷くと、ニッコリ笑って答えた。


「はい、ローズさんが教えてくれるので大丈夫です」


「えー、ローズちゃん、俺にはー?」


「バートンは、さっきできるって言ったじゃないか」


「それは、アルが姑息な手を使うからじゃねぇか」


「男に二言はないんじゃねぇの?」


「はぁ……仕方ねぇな……はいー」


 バートンは、頭をかきながら、大きなため息をついている。まぁ、気が向いたら教えてあげてもいいかしら。

 でも、釣り銭の計算くらい、誰でもできるはずよね? 私がでしゃばることでもないわね。



「じゃあ、算術は片付いたな。次は、魔法の評価Eだが…」


 私はギクッとした。確か私だけ…。あ、シャラが黒魔法できないんだったかしら。


「これも、たいした問題じゃないだろ。シャラは、黒魔法だったな?」


「あー、うん、攻撃魔法は使わないから」


「戦闘が苦手って言ってたっけ?」


「うん…。魔物とか出てきても殺せない…」


「じゃあ、メンタル面だな。剣術や武術ができるようになれば使えるんじゃないか? 魔法適性あるよな?」


「うん、火は使えるはず…」


「自分に自信がないか、慈悲の心が強すぎるか…。って、さっき、肉も食ってたよな?」


「えっ? うん」


「じゃあ、自分に自信がないだけだ。魔法はメンタル面が大きく影響するんだ。何か取っ掛かりがつかめれば大丈夫だ」


「そうかな」


「あぁ、それより問題は、魔法オールEのローズだ。学生証の成績を出せるんだから、魔力もあるし使えるはずだけど?」


「ええ、そうね…」


「魔法適性はあるんだろ?」


「詳細は調べたことないけど、あるはずよ」


「まだ、冒険者ギルドの登録してないんだな?」


「えっ? あ、そういえば、入学したら案内があるとか聞いたけど…」


「普通は明日、それをやるはずだけど、Sクラスは明日は授業ないからなー。学生証あれば優先登録できるはずだぜ? 明日、行ってみるか。付き合ってやるよ」


「それなら、私、自分一人で行けるわ。ギルド登録と魔法適性に何の関係があるの?」


「遠慮しなくていいぞ? あー、登録時に、能力測定があるんだよ。だから、一瞬で魔法適性もわかるんだぜ」


「へぇ…」


「あの、俺、調べられますが、やりましょうか?」


「ん? ルークが? あ、そっか、悪魔族か」


「はい。サーチ能力は高いです」


「じゃあ、頼む」


「あの、手に触れますが大丈夫ですか?」


「大丈夫よ。ルークは紳士ね」


「いえ……では、始めます」


 そう言うと、少しはにかんだような顔をしながら、私の両手を握った。ルークから出てきた波動のようなものが、私の左手から身体の中を駆け巡って右手へ出ていった。


「あれ?」


「ルーク、どうした? 失敗か?」


「いえ、あの、ローズさんの魔法適性は、基本属性オールです。火、水、土、風、すべて適性があります」


「うおー、ローズちゃん、すげぇじゃねぇか」



 私は、愛想笑いを浮かべつつ、運ばれてきたカフェオレを一口飲んだ。あれ? 飲んだことのある味がする。また、前世の記憶かもしれない。


 ルークが、困った顔をしている。私に伝えるべきか悩んでいるようだ。おそらく封印のことだろう。ミューが、魔力の流れない場所が封印だと言っていた。


 いま、私の身体に魔力を流して適性を調べてくれたから、きっと魔力の流れない場所に気付いたんだ。



「ローズ、なぜ使えないんだ? ルークどうした? 何か気づいたのか?」


「えーっと……うーん、別に…」


 ルークが困った顔をして私をちらっと見た。


「ルーク、気づいたんでしょ? 私の封印に。もしかして、魔法が使えないのは、封印が魔力の流れを遮断するから?」


「あ、ご存知だったんですね。はい、たぶん封印が魔力の流れを邪魔しているので、魔法を発動できないんだと思います」


「な、何? ローズちゃん、何の封印?」


「わからないわ」


「もしかして、それでこの街に来たのか?」


「おっと、探偵見習いの推理かー?」


(話すべき……なの?)



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