22、このクラスは連帯責任!?
自己紹介は、最後に私の番がまわってきた。アルフレッドは、巨大な王国の王族だから、私の家の名を知っていたのね。
私のアマゾネスという種族名は知らない人がいないほど有名だと、以前ミューが言っていた。だから、男尊女卑の人の前で種族名を明かすと、必ず反感を買うことになるらしい。でも、家の名はあまり知られていないと言っていた。
(素性を隠すことは、自分を否定することだわ)
「私は、ローズ……ローズ・シャリル、16歳よ。女尊男卑の国アマゾネス、人族よ。この街へは、女王陛下の命令で留学に来たわ。星がついていたのは、一般教養と算術。魔法は全く使えないわ」
「ちょ、やはりおまえ、アマゾネスか」
ノーマンがギロリと睨んできた。神経質そうなタイプだが、戦闘力は低い。反感を持たれても無視できる。
「ローズ、家の名は言わない方がいいって教えただろう? なぜ素直に聞かないかなー」
「家の名を隠すことは、自分を否定することになるわ。私はコソコソ隠さなきゃならないようなことは、何もしていないわ」
「ローズさん、たぶん、ノーマンさん以外は、貴女の素性がわかっちゃったと思うよ」
「えっ? シャラさん、なぜ? 知られていないはず…」
少し驚いたり、興味深そうにしたりと、反応はバラバラだけど、確かにわかっているようだった。
(失敗したかしら…。でも、隠す必要もないわ)
「ちょ、俺だけわからないって、どういうことだ? アマゾネスの家柄に、みんな興味があるのか?」
「ローズ、言ってもいいか」
「私から言うわ」
「あぁ」
「私は、アマゾネス国女王の娘、次期女王の指名を受けている。私が35歳になったら女王の地位を継承するわ」
「えっ? 王女か…」
「そうね。でも、他国の令嬢のようなお嬢様ではないわ。私は、アマゾネスの騎士だから」
「ローズちゃん、カッコいい〜」
チャラチャラしたバートンが、茶化すように妙なことを言ったが、私は無視した。
「へぇ、騎士ならさぞかし剣術や武術の評価は高いんだろうな?」
ノーマンは、ニヤニヤしている。魔族がたくさんいるこの街の学園で、私のような人族に高い評価がつくわけがないとわかって言っているのだろう。きっとサーチも済ませた上での発言なはずだ。
「私の能力をサーチした上で、そんなことを聞くなんて、性格悪いわね」
ノーマンは素知らぬふりをしている。
「ローズ、単純な数値と実戦では違うぜ? だからわざわざ、一人一人、手合わせの試験をしていたんだ」
「そうなのね」
アルフレッドは、なんでも知っているのね。国の大きさが違うと、やはり入ってくる情報量にも差がつくことを私は思い知らされた。
アマゾネスは、もっと他国と交流して情報を集めなければいけないわね。
「武術、剣術は、サーチ魔法では細かな技量はわからない。同じクラスメイトだから、みんな見せ合いしておかねぇか?」
「バートン、プライバシーに関わることだ」
なぜか、ノーマンは嫌そうにしている。戦闘力は私より低い。私に負けたくないのだろう。
「でも、このクラスは特殊だから、助け合わないといけないんじゃないの? 私も白魔法は、苦手な人に教えるから」
(えっ? 教え合いをするの?)
「このクラスの次学年への進級条件か…。厄介だな。あ、おまえ、さっき、魔法は全く使えないとか言ってなかったか?」
「使えないわ」
「ノーマン、なぜそんなにローズちゃんに突っかかっるわけ? もしかして、狙ってんの?」
「は? なぜアマゾネスなんかを…。トリ頭、寝ぼけたこと言うなよ?」
(何を言ってるの?)
「あの、ノーマンさん、バートンさんをあおらない方がいいと思います」
「えっ? 子供にそんなこと……はぁ、まぁ、わかった」
「ふっふっ、なんだかノーマンさんは、魔族のような方ですね。ルーク様はクラスメイトには何もされませんよ」
「タクト、また様呼び…」
「はっ、申し訳ありません」
魔族のような人ってどういう意味なんだろう? 褒めているわけではなさそうだけど…。
「あの、俺、進級条件ってわかってないんですが、厄介なのですか?」
「ルークは、評価Eはあったか?」
「試験の成績ですか?」
「あぁ」
「はい、あります。俺は算術がEでした…」
「進級条件は、すべて評価D以上にすることだ。まぁ、評価Dは普通ってことだから、人並みにってことだ」
(すべて評価D? 私は魔法オールEなのに)
「ええっ!? 俺、算術どころか銀貨と銅貨の計算も厳しい…」
「銀貨1枚は、銅貨100枚と同じ価値だぜ?」
「ほら、それです。100とか言われると難しい…」
「Sクラスなんだぜ? どの科目も、成績1位がいるぜ?」
すると、ルークはパッと私の方を向いた。そんなつぶらな瞳で見つめないでほしい。
「る、ルークさん、一緒に頑張りましょう」
「ローズさん、ありがとう。あ、ローズさんが苦手な魔法って、すべて評価Eでしたか?」
「ええ…。そうよ」
「じゃあ、ローズさんはすぐに使えるようになりますよ。たぶん全員、魔法は……あ、アルフレッドさん以外は、みんな魔法は得意分野ですから」
「おーい、ルーク。これでも俺も魔法は使えるんだぜ」
「失礼しました。人並みには使える感じですね」
「魔族の中でその程度だと使えない人ですから、ルーク様が謝る必要はありません」
「タクト、また様呼び…。直す気ないよね?」
「いえ、決してそんな…」
「ルーク、もう様呼びでいいんじゃないか?」
「うーん…。でも、アルフレッドさんも様呼びされていないですし、ローズさんも…」
「クラスメイトに、従者や使用人がいないからだよ。まぁ、そんなに気にしないで大丈夫だぜ?」
「はい…」
やはり、ルークは邪悪な感じはしない。それどころか、一番若いのに最も常識人な気がする。私の大魔王に対する認識が間違っているのだろうか。
「じゃあ、評価Eがある人、全部ここで白状しておこうか。クラス連帯責任らしいからな。助け合いクラスだ。一人でも評価Eがいれば、全員が進級できないこともあるらしいぜ」
(えっ! アルフレッド、何言ってるの?)
「それ、初耳だよ? 親戚の兄ちゃんもSクラスだったけど、そんな話してなかったよ」
「シャラ、それはそのクラスに、たまたま評価Eがいなかったんじゃないか?」
「なぜ、連帯責任なのかしら?」
「ローズ、それが女神様の目的だからだよ。この学園はすべての種族が互いに理解し、無益な争いをしないために学ぶ場として作られたんだ」
「アル、他にも孤児の救済目的だろ?」
「そうだな、バートン。魔族は、かなりマシになったみたいだが、自分が生きるために、弱い者を殺して略奪する行為が多かったんだ。仕事をすれば金を稼げる、ということを学ばせるためでもあるらしい」
「だからって連帯責任…」
「ローズ、ピンときてねぇみたいだな。略奪当たり前だと考える教養のない者が、戦闘力高いと危なくねぇか?」
「あ、確かに…」
「ささ、評価Eがある人、素直に白状しとこうか。俺は評価Eはないぜ」
アルフレッドは、一人一人の顔を見ていった。目が合うと白状してしまうようだ。
シャラは、黒魔法と剣術と武術。
バートンは、算術。
ノーマンは、剣術と武術。
ルークは、算術。
タクトは、剣術。
私は、黒魔法と白魔法と緑魔法。
「剣術できないヤツが多いな。俺は剣術AだったからトップのルークもAだな?バートンは、剣は使えるのか?」
「ハッハー、俺は初めて使ったけどDだったぜ。センスがいいってことじゃねぇか」
「評価Dは普通だってば。じゃあ、ローズの方が同じ評価Dでも指導できるよな?」
「私は、剣術も武術も、評価Cだったわ…。指導できるレベルじゃないわ」
「えっ? 女なのに、評価Cかよ?」
(アルフレッドまで、男尊女卑?)




