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第四幕

「さぁ、行くわよ。」

お母様の目がキラキラと輝いている。久し振りに家族に会うのだ。前世でも今世でも家族というものに恵まれなかった私には若干分からないが、推しに会うという認識で良いだろう。


「紫苑……大丈夫?」

紫苑の顔を引き込まれてしまいそうな煤色の瞳が覗き込んだ。

緊張を感じ取られてしまったのだろうか。……………でもそれよりも


「心配してくれてるの?」


綴はムッと眉をひそめた。

「当たり前だ。紫苑は僕の婚約者だから。」

やたらと婚約者である事を強調しながら、聞いたのが恥ずかしかったのか心配したのに意外に思われたのが心外だったのか綴は頬を膨らませた。

攻略キャラのショタ化はただでさえヤバイ上に怒っている顔はかなり可愛い。

にやける紫苑を見て更に綴は更に頬を膨らませた。限界まで焼こうと頑張った餅みたいでちゃんちゃら可笑しい。


「うん。大丈夫よ。綴のお陰で緊張とか抜けちゃった。」

「あはは。」と笑う紫苑を見て綴も釣られて綴も餅の様に膨れ上がった頬を解いて相好を崩した。


普段オールで無表情な綴がこうして笑わせてくれるのだ。転生してから寝込んでるか考えこんでる事が多かったので綴には不要な心配をさせてしまったのかもしれない。


綴はそっと私の手を取るとぎゅっと「大丈夫。」とでも言うように手を握った。

 こんなこの前まで傀儡子宜しくやっていた悪役令嬢にこんなに優しくしてくれるのはきっと本当はもっと社交的で明るくて優しい男の子になった筈だからだ。そう、取り返しのつかない大きな罪。


綴の優しさに呑まれない様に紫苑は手を握り返す。

空虚な煤色の瞳が初めて優しく揺れた気がした。


お母様は執事さんを失神させた際に拝借したスマホで遊馬家へ連絡を取ると、スマホから、おばあ様だろうか、女の人のむせび泣く声がしてお母様は困った顔ような、安心した様な困った顔をしていた。お父様は産後から精神的な病気を理由にして遊馬家とお母様の接触を回避していた可能性が高いというお母様の見立て通りだった様で、すんなり話は通じたようだった。


間もなく、威圧的なアーチ状の門がゆっくりと開くとうちの執事さんの父親だという執事さん(執事さん父)に遊馬家一同のいる部屋へ案内された。


遊馬家一同のいる部屋に続く長い長い廊下で紫苑は深く深呼吸する。そんな紫苑の気持ちをほぐすように優しく綴は手を握ってくれている。というか、離してくれない。


(遊馬家…一体どんな方々なのかしら?明らかにお母様の気分は良さそうだし、静乃宮の御爺様の様に気難しい方々では無いのでしょう。ともあれ、人がこの家にいて良かった。対応が早かったのも。一之宮の運転手が上手くまいて時間を稼いでくれていたけれど遠くから疑いようが無い静乃宮のマークが着いた黒のワゴン車が近づいていたから本当にギリギリだったわ。)


格調高い両開きのドアを執事さん父がゆっくりと開けた先には、優しそうな50代くらいの夫婦とうちの学園の高等部の服を着た顔がお母様にそっくりな男の子とスーツを着て前髪を緩やかに七三分けしたお母様をイケメンにした感じの男の人がいた。この人達が遊馬家の面々だろう。


一同はお母様を見るなりビックリするくらいの雄叫びに近い声を出すと自分達より大きな大人たちが奇声を発する光景に、行くわよ。」行くわよ。」から冒頭の「さあ、行くわよ。」に戻って同じ文章が繰り返されているようです。

お母様の目がキラキラと輝いている。久し振りに家族に会うのだ。前世でも今世でも家族というものに恵まれなかった私には若干分からないが、推しに会うという認識で良いだろう。


「紫苑……大丈夫?」

紫苑の顔を引き込まれてしまいそうな煤色の瞳が覗き込んだ。

緊張を感じ取られてしまったのだろうか。……………でもそれよりも


「心配してくれてるの?」


綴はムッと眉をひそめた。

「当たり前だ。紫苑は僕の婚約者だから。」

やたらと婚約者である事を強調しながら、聞いたのが恥ずかしかったのか心配したのに意外に思われたのが心外だったのか綴は頬を膨らませた。

攻略キャラのショタ化はただでさえヤバイ上に怒っている顔はかなり可愛い。

にやける紫苑を見て更に綴は更に頬を膨らませた。限界まで焼こうと頑張った餅みたいでちゃんちゃら可笑しい。


「うん。大丈夫よ。綴のお陰で緊張とか抜けちゃった。」

「あはは。」と笑う紫苑を見て綴も釣られて綴も餅の様に膨れ上がった頬を解いて相好を崩した。


普段オールで無表情な綴がこうして笑わせてくれるのだ。転生してから寝込んでるか考えこんでる事が多かったので綴には不要な心配をさせてしまったのかもしれない。


綴はそっと私の手を取るとぎゅっと「大丈夫。」とでも言うように手を握った。

 こんなこの前まで傀儡子宜しくやっていた悪役令嬢にこんなに優しくしてくれるのはきっと本当はもっと社交的で明るくて優しい男の子になった筈だからだ。そう、取り返しのつかない大きな罪。


綴の優しさに呑まれない様に紫苑は手を握り返す。

空虚な煤色の瞳が初めて優しく揺れた気がした。


お母様は執事さんを失神させた際に拝借したスマホで遊馬家へ連絡を取ると、スマホから、おばあ様だろうか、女の人のむせび泣く声がしてお母様は困った顔ような、安心した様な困った顔をしていた。お父様は産後から精神的な病気を理由にして遊馬家とお母様の接触を回避していた可能性が高いというお母様の見立て通りだった様で、すんなり話は通じたようだった。


間もなく、威圧的なアーチ状の門がゆっくりと開くとうちの執事さんの父親だという執事さん(執事さん父)に遊馬家一同のいる部屋へ案内された。


遊馬家一同のいる部屋に続く長い長い廊下で紫苑は深く深呼吸する。そんな紫苑の気持ちをほぐすように優しく綴は手を握ってくれている。というか、離してくれない。


(遊馬家…一体どんな方々なのかしら?明らかにお母様の気分は良さそうだし、静乃宮の御爺様の様に気難しい方々では無いのでしょう。ともあれ、人がこの家にいて良かった。対応が早かったのも。一之宮の運転手が上手くまいて時間を稼いでくれていたけれど遠くから疑いようが無い静乃宮のマークが着いた黒のワゴン車が近づいていたから本当にギリギリだったわ。)


格調高い両開きのドアを執事さん父がゆっくりと開けた先には、優しそうな50代くらいの夫婦とを同い年くらいの男の子とスーツを着て前髪を緩やかに七三分けしたお母様をイケメンにした感じの男の人がいた。この人達が遊馬家の面々だろう。


物々しい雰囲気の人々はお母様を見るなりパッと笑顔になるとさっきから表情筋をピクリとも動かさない男の子を除いてお母様を見るなりビックリするくらいの雄叫びに近い声を出すと自分達より大きな大人たちが奇声を発する光景にポカンとする紫苑と綴を他所に一目散にお母様に抱き着いた。後ろでは執事さん父が涙ぐんでいる。


ひとまずお母様と家族が再会を喜んでいる間に執事さん父に用意されたお菓子を黙々と食べていると、やっとこさ遊馬家の皆さんがこちらの存在に気付いた。


「こんにちは。忍の兄で(さく)って言います。シオンちゃん?だよね。シオンちゃんの叔父にあたります。この会社じゃなくて僕の妻のほうの会社の社長をしています。君はシオンちゃんの婚約者の綴君だね。宜しく。」


スーツを着たイケメンがニコッとして挨拶をする。


「……………………俺はアマネ。円周率の周で周。君とは又従兄弟……。同い年だと思う。中等部から麗火学院に編入するから君とは学友になる。綴君もよろしく。」


 紫紺の紫苑と同じくらいに大きな瞳に紫紺を薄めた端色の髪は肩にかかるギリギリのミディアム。ちょっと無愛想な、将来きっと美丈夫になる事が約束されたようなどこかしら見覚えのあるその風貌は、紫苑の脳内で彼の言った「又従兄弟」と「周」という文字が結び付く。と同時に頭を殴られたみたいな衝撃が紫苑を襲った。


(…………周?それって…………?)


遊馬家の跡取りであり、


「テン上人とのコイ遊戯」の一之宮綴を攻略する上で攻略必須な攻略対象でもあり、


静乃宮紫苑の最強の味方じゃないか。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


第四幕もご拝読頂き有難うございました。

紫苑ですが、前世の自分と今世の紫苑が混ざり合っている状態の為に語尾の「~なのよ。」、「~だわ。」などの言葉遣いを少なくしています。


下から、紫苑母と織部の設定です。


静乃宮 忍 (33)

遊馬銀行総取締役の一人娘。

「シズノ」社長の正妻。

・夫の事は学生時代(紫苑達と同じく麗火学院)の頃から嫌いらしい。

・紫苑を生んですぐ、夫の完全移住(愛人宅)が始まると同時に監禁されるがパワフルな性格で織部に迷惑をかけながら静乃宮宅の天井裏を這い回る。

・非常に家族思い。(夫以外)

・織部の事は結構愉快な執事だと思っている。


織部 (しずく) (27)

麗火学院高等部を卒業するとそのまま忍に付いていき、静乃宮家別邸の執事となる。

忍の家族を想う気持ちから出来る行動力には心から尊敬しているが現状に歯がゆく思っていた様子。

気絶中ではあるものの忍が家族と会う事が出来た事を喜んでいる………と信じている。(忍談)

・よく見るとまぁまぁの美男子だが小心者な一面やすぐ泣く癖がある為、その事実を認識する人は少ない。




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