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ブラッディー マリー 4

煌びやかな商店が並び、中流階級の住宅が立ち並ぶ大通りを過ぎると、突き当たりに石造りの門が見える。その先には石造りの家屋があるが、木造の家屋もちらほらと見え始める。


この街は身分により住む所が仕切られており、ここに住む者は下流階級の人達。そして、ここの外れにマリーの目指す孤児院はあった。


「階級制度……ね、全く下らないわ」


アリアナの馬車を降り孤児院に向かいながら、道を見渡すと嘆く様に呟く。住民達には活気があり治安は良いとは言い難いが、それなりに良い所だ。時折、路地裏から聞こえる呻き声がマリーの耳に届く。


「見えない所で悪事を行う、醜いものね……私も人の事は言えないけれど」


先日の決闘は、上の階級の者が申し込んで来たものだったらしい。それは古い戦が終わった今、上流階級の者達にしてみれば娯楽になっている。剣から銃へ扱う武器も変わり、戦闘の試行錯誤。新たな闘争への準備期間の様にも見える。


「新しい時代……出来れば、下らない慣習も変えてもらいたいわね」


歩みを進めながら思考を巡らし呟くと、子供の無邪気な声が耳に届き我に戻る。目の前にある石造りの家屋、昔住んでいた者が階級を上げ出て行ったもの。維持するのにも経済的に困難だった為、孤児院として利用してくれと寄付されたらしい。


マリーは自分の醜さを隠す様に、微笑みと言う偽りの仮面を被り孤児院に入る。


「マリー姉ちゃんお帰り〜」と無邪気な声で出迎える二人の子供。


「ローエン、ちゃんと良い子にしてた? サニカもちゃんとお手伝いしてたのかな?」


決闘で親を亡くし身寄りが無かった為、この子達は孤児院に引き取られた。私と同様に笑みを浮かべてはいるが、子供ながらに仮面を被る事を受け入れている。ただ違うのは醜さではなく、悲しみを隠している所。その健気な仮面が、本当の感情になる様に守ってあげたいと思う。


「はい!」「うん!」と、元気よく返される返事に思考を遮られる。マリーは籠に手を伸ばすと、紙の包みを取り出し二人に手渡した。


「じゃあ、これはご褒美の飴よ。ちゃんと皆んなで分けて食べるのよ」


「わ〜い! ありがとうマリー姉ちゃん」喜びの声を上げると共に、二人は他の子達が居る部屋に駆けて行った。その背中を手を振り微笑みながら見届けると、背後から声が掛けられる。


「お帰りなさいマリー」そう表情を曇らせ言葉を掛けてきたのは、中肉中背で茶色の髪に白髪が混じる初老の女性、この孤児院の主人である。


「ただいまハンナさん。ああ、安心して頂戴。あの子達にあげたお菓子は、マッチを売ったお金で買ったものだから」


「はい解ってますよ。ですが、お嬢……」


「ハンナさん、ここで話す事じゃないわ」少し語気を強めハンナの言葉を遮り、口調を戻し更に続ける。


「続きはハンナさんの書斎でしましょう。見せたいものもあるしね」


ハンナはやれやれと、少々呆れた様に肩を竦める。その様子を見て笑顔を浮かべ告げると、書斎へ向かい歩き出す。


私達は弱者、銃という兵器を手にした事によって、私でも強者に報いる事が可能になったが、弱者という立場は変わらない。だからこそ彼らに気付かれないように、慎重にならなければならない。


「弾丸が奴の命を穿つまでは……」

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