表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/8

ブラッディー マリー 3

陽射しが辺りに降り注ぐ頃、積もった雪に反射されて煌びやかに街を彩っており。郊外に続く道にも平等に、冷たくも優しく降り積もっている。そして、一人の男が街外れの墓地に向かって歩いていた。


足取りは重く身体を支える為に、杖を両手で使い一歩一歩ゆっくりと踏み締める様に歩く。身形はボロボロで側から見れば、その姿は死者を想像させてしまう。


(ようや)く目的の場所に辿り着くと、墓石の前に女性の姿があり先客が居たようだ。


「レベッカおばさん……」


男が先客に声を掛けると、レベッカと呼ばれた女性は視線を向ける。


「フランク! アンタ何でそんな格好してるんだい!」


そう言うとレベッカは、フランクに駆け寄り身体を支える。


「ごめん、おばさん。決闘したんだけど勝てなかった」


告げた瞬間、辺りに響く頬を打つ音。


「何考えてんだい! マリクはそんな事望んでないよ! アンタが死んだら悲しむに決まってる……」


レベッカはそう言うと涙を流しフランクを優しく包み込む、枯れた筈の涙が再びフランクの視界を歪ませる。そんな中で支えられながらも墓前に歩み寄ると、目に入る鉄屑二つと使い込まれた財布。


鉄屑の一つはマリクの銃で直ぐに気が付いた、そしてもう一つの銃は見覚えが無かった。


それを手に取ると、グリップに幾つもの傷跡が刻まれていた。多分だが、人を倒した数を記しているんだろう。反対側のグリップを見ると名が刻まれていた。



イーサン・ブラウン……。



銃に雪が積もっていなかった事に気が付くと、フランクはレベッカの元を離れ辺りを探す。しかし、視界に入る人影は居なかった。


「マリーか。金じゃ返せない、でかい借りが出来ちまったな……」



フランクの呟きが虚しく響き渡る頃、街に帰って来た少女に近付く一台の馬車。

少女の横に付け止まると、窓が開けられ声が掛かる。


「ご機嫌は如何かしら? マリーさん。宜しければ孤児院まで送りますわ」


「そう、お願いするわ……」


そう言うとマリーは馬車に乗り込み、其れを見届けると馬車はゆっくりと走り出す。


「さて……街中で声を掛けるなんて、配慮が少々足りないんじゃないかしら?」


「それはそうだけど、殿方はパーティーに御執心でね。私は暇なのよ」


「侯爵夫人の言葉とは思えないわね……」


そう言うと封筒を二つ渡され、ずっしりと重量を感じる方には紙幣。

もう一つにはある男の調査報告が入っていた。封を切り報告書に目を通すと溜息を付くマリー。


「ここに書いてある情報では、何も解らないと同じね」


「調べる相手が曲者過ぎるんじゃ無いかしら?」

「ふう、そう言う事にしといてあげるわ……」


窓を流れる景色を見つめ、思いを馳せるマリー。


「もうここで良いわ、おろして頂戴」


そう言うと馬車は止まり静かに扉が開かれ、降りようとする所に夫人から言葉が投げられる。


「イーサンを葬る程の腕、勿体ないわ。賞金稼ぎになった方が良いんじゃない?」


本人からしてみれば、賞賛の言葉だったかもしれない。しかし、その言葉を受け静かに視線を夫人に向けると言葉を返す。


「事情は解ってる筈よ……それと、お喋りは早死にするかもねアリアナ?」


「わ、悪かったわ。今のは忘れて頂戴」


アリアナは彼女の表情、獲物を捉えた狩人の様な笑みに思わず戦慄してしまった。


そして、馬車を降りると思い出したかの様に声を掛ける。


「そうそう、また何かあったら宜しくね。それでは御機嫌よう……」


少し先にある孤児院を視線に捉えると、笑顔を温かいものに変え歩き始める。

その裏で自分の中の決意を色褪せないように、呪文の様に繰り返し言い聞かす。



あの男を葬るまでは死ねない……誰が相手でも。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ