私は勉強をする気がない
彼は高校時代、いつも勉強ばかりしていた。
英語の勉強をしていた彼は、授業中に出されるどんな文法問題も単語問題も容易く解いて見せた。
英語の勉強を一切していなかった私は、授業中に出されるどんな文法問題も単語問題も全く解くことが出来なかった。
それなのに全国模試の成績は、彼よりも私の方が上だった。
「どうして俺よりお前の方が点数がいいんだ?」
その理由は私にも分からなかった。
私は家に帰って、いつものようにレンタルショップで借りてきた洋画を字幕を付けずに鑑賞していた。
映画を見るのが好きな私は、いつのまにか字幕を付けなくてもストーリーが読み取れるようになっていた。
彼は古文と漢文の文法や単語の意味のほとんどをマスターしていた。
だから、模試でも文法や単語を問う問題のほぼ全てが正答していたらしい。
私はと言えば、記述式ということもあって文法や意味を問う問題は悉く落としていた。
それでもテストでは、古文も漢文も合計点は私の方が上だった。
「どうして文法も単語も出来てないのに文章題が全部合ってるんだよ?」
その理由は私には分からなかった。
だって、そもそも古文や漢文の物語を問題にする意味を理解できなかったからだ。
そんなこと、普段から古文や漢文を読んでいればわざわざ考えるまでもないことじゃないのだろうか。
そう思いつつ、私は下ネタばかりが載っている今昔物語を読みだして、思わず笑ってしまいそうになるのをこらえていた。
彼は教科書の内容をほぼ丸暗記したらしく、日本史も世界史も満点を叩き出していた。
私は、日本史も世界史も半分も点数を取ることが出来なかった。
彼はそんな私の点数を見て、勝ち誇ったような顔をしていた。
歴史に興味が持てない私は、日本史も世界史も回答欄にほとんど記述をすることが出来なかった。
ただ、好きな歴史物の漫画や映画があったおかげで、その部分だけ記述を埋めてなんとか点数を取ることが出来た。
しかし、現代社会の科目に関しては私の点数は彼を凌駕していた。
というか、現代社会においては私は学年トップの成績だった。
「どうしてうちの高校には現代社会の科目がないのにそんなに点数が取れたんだよ?」
私には彼が何を言っているのか分からなかった。
普通にインターネットの記事やテレビのニュースを見ていれば、こんな問題分からない方がおかしいと思えたからだ。
私には分からない。
彼はどうしてわざわざ勉強していたのだろうか。
勉強したくもないのに勉強したって、頭に入ってくるものなんて何もない。
今の彼は、そのことに気付いているのだろうか。
大人になった今も、私は何かを勉強する気もない。
けれど、生きていくのに困ることはあまりない。
だから今日も、海外のドキュメンタリー映画でも見ながら見分を広めてみようかなと思った。