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機械の心に花束を  作者: アルミニウム
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おてんばロボット

弘法にも筆の誤り、河童の川流れ、猿も木から落ちる、この世に失敗しないなんて事はあり得ないんです。

ないんです。

突然だが言っておくことがある。

私は頭がいい。

それはバカな奴らが調子良さげに言う冗談ではなく、れっきとした事実だ。

私はこの世のありとあらゆる知識を有している。

いやありとあらゆるなどと言うと嘘っぽいから言い方を変えよう。

私は知識の化身である。

つまりは完璧という事だ。


よくあるダメなロボットは、たった一つの脳みそで物事を処理するのだろうが、私は違う。

私は体のいたるところに小型の脳が存在しており、それぞれが高速で演算をする事により、思考力を大幅に高めている。

その数は二十四。

全ての脳は同じ意識を有しているが、それぞれに別々の思考をさせることもできる。

これを使えば、一人将棋は二十四人将棋となり、一人でありながら十二局を同時にすることが出来る。

この機能は私の暇つぶしに大いに貢献しており、私が最も誇る機能とも言える。


突然こんなことを語っても何のことだかと思うだろうが、理由があるのだ。

それもやんごとなき理由がある。


私は予定通り仲間を造っていた。

施設は復活。

私は完璧かつ天才。

頭脳も技術も抜かりはない。

そんな私が本気でロボットを造ろうというのだから、それは生半可な物ではない。

それはもう完璧超人が生まれるぐらいである。


人間の親が私を造ったが、私からすれば不幸としか言いようがない。

私は確かに完璧だが、もし造ったのが私であったなら、人間に造られていなかったなら。

私はさらに高みへ行っていただろう。

そう私は、私からすれば失敗作なのだ。

私ならば最も素晴らしい命を造れたのに、と思わずにはいられない。


故に、故に私は造ろうとしていた。

素晴らしいボディ、完全な頭脳、これより未来にこれ以上の存在は現れないと言わしめるほどの子供を造ってやろうと思っていたのだ。

しかし、私はとある理由からそれが出来なくなってしまったのだ。

私は完璧あれと造られたにも関わらず、私は自らの子供を完璧には出来なかった。

それは私が生涯悔やみ続けることを約束させ、いっそ自分自身の機能を停止させてしまおうかと考えるほどだ。


全く、私はバカだ、大馬鹿だ。

いや、バカではなかった。

私は完璧だ。

しかし完璧でも失敗ぐらいある。

バカではないが…そうだな。

おっちょこちょい。

そう、おっちょこちょいだ!

私はおっちょこちょいロボなのだ。


私の犯してしまったおっちょこちょい。

それは、命のプログラムを書き終え、体内の機構を作り上げた時のことだ。

あとは体の型を作り、内に嵌めていけば完成だった。

しかし私はそこで飛んでもない事に気がついちゃった!

それは!


「材料が足りない。」


この施設、ほぼ全てありとあらゆるなどと事が可能だが、唯一の欠点が素材の調達手段が存在しないことだ。

施設内に製鉄等の機能はなく、ある物を使うしかない。

備蓄も存在するが、私が生まれる際に殆どを使ってしまった。

そのため、綺麗にした壁や床、格子、等々ある物を使っていたのだが、ボディを作る段階で何にも無くなってしまった。

事実、今私は剥き出しのコンクリートの土台の上に立っているし、壁は支柱となる柱が表に出ているし、薄っすらと水が滲み出てきている。

後先考えず、なあなあで考えていたら、取り返しのつかない事になっていた。

一体なぜ。


手元には中途半端なロボット、辺りは土壁。

その主人の私は無一文だ。


しかし、まだ嘆くのは早い。

確かに私は無一文になったし、施設はもう手遅れだが、このロボットはまだ望みがある。

完璧ではなくなるが、機能を削り、もっとコンパクトに仕上げれば形にはなるだろう。

私はロボットではあるが、もう気持ちは父親なのだ。

ロボットに性別もクソもないが、とにかく気持ちは親なのだ。

この子をこの世に産んで見せる。

私はそれだけを心の支えに、施設の破壊に及んだのだ。


必ず、必ず産んで見せるぞ我が子よ。

鼻緒を結んで待っているがいい!



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