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機械の心に花束を  作者: アルミニウム
3/7

完璧なお掃除ロボット

ルンバが欲しい今日この頃。

私はいつでも完璧を求める。

声もそうだし腕を動かした時の軋む音なんて虫唾が走る。

そんな物は完璧には程遠い。

だから嫌いだ。


勿論掃除でもそうだ。

完璧なる掃除において誤魔化しや、やり残しなんてあってはならない。

ドラマの小姑の様に完璧な美しさを求めるのだ。

ボロボロな壁は全部引き剥がし、張り替え。

床もそうだ。

油跡も傷も許しはしない。

古くなった床は、私のスーパーロボパワーで全面張り替えだ。

空気にだって埃が浮くのを見逃さない。

全ての埃は右腕に内蔵された掃除用大型ライターによって焼却処分。

できた煤は私の左腕、つまりは掃除用超強力吸引装置により全て集められた。

後に壁外へ捨ててしまおう。


鉄格子全てを研磨し凹凸及び汚れを削る。

これには私の体に内蔵された装備、万能工作機器RP号が役に立つ。

これは大小様々な八つのブラシ型アームが、私の脳内で描かれた3D図面の通りに、あらゆる材質の物を1/1000ミリ以下の誤差で加工できるという優れた機械である。

私の能力を持ってすれば、瞬きする間もなくマッチ棒を1/1000スケールミロのビーナス像に加工してみせよう。

因みにだがRPとはロボプラムの略である。


そして最後の仕上げとして、足に取り付けられた加速用振動装置を使う。

名は加速用だが、掃除にも使える優れもので、小刻みに振動を床に加えることによって、部屋全体にしつこくこびり付いたゴミを浮かせ、吸引装置で集める。


するとあら不思議でもなんでもない、掃除が完了するのである。




私は新調した椅子に腰掛けた。

光届かない地下であるが、美しく飾られた椅子が、壁が、床がまるで光り輝いている様に見える。

顎をこすり、辺りを見回す。


「完璧すぎる掃除ではないか。」


完璧、その一言に尽きる。


鉄格子は全てサビを落とし、芸術性を加えてみた。

見る角度を変えると、ミロのビーナスがこんにちわしているのだ。

勿論檻としての機能も問題ない様に設計をしている。

これならば檻に入れられた物を監視しながらも視覚的に楽しめる寸法だ。

我ながら匠であると自負している。

壁と床はかつての地味かつ汚いものからは一変。

中世ヨーロッパを意識したモダンアートに仕上げてある。

そしてここでもっとも重要な変化が、私のネームプレート。


古いプレートは廃棄し、新しい物を作成。

知識にある、花と蝶が舞う丘をイメージした装飾を施した。

字面はロボプラムに彫り直し、文字が光る仕様にした。

しかも一時間ごとに文字色が変わる仕組み、時計がないので正確な時間は知らないが、今は赤だ。

気分は夕焼けである。


今まさに心が満たされている。

今の状況から省みて、おそらくこれが満足感というものだろう。

大変な作業をやり遂げて得られる物。

心が温かく、高揚感を得られる事。

記録にはあるが、経験するのは初めてである。


今まさに、人としての心が、そしてロボットの知識欲が満たされている。

私は幸せだ。


少しだけゆっくりしよう。

ロボットであるが、私は人なんだ。

ロボットに出来なくて、人に許される事。


それは自分の意思で休む事だ。


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