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今日から学校と仕事、始まります。①莞

募集中、お一人様限定

作者: 孤独

禁酒、禁煙。


「戦う者として、当然のケアだ」


木見潮朱里咲きみしおしゅさとさき

とあるヤクザの”用心棒”として在籍している、脅威の身体能力を持っている”超人”の1人である。


「心身共に万全な状況を常に作り出すことが、私達に求められている命の獲り合いだ」


その強さは女性ながら、ヤクザの組でもトップレベルであり、戦闘の技術においては彼女に勝る者はいないとまで称されるほど、強き女性である。


「予防接種はちゃんと受ける、注射を怖がらない。野菜と魚は残さずよく噛んで食べる」


そんな彼女が今、講習を行なっている場は…………


「なぁ、なんでヤクザの者が警察署で講演をしているんだ?」

「腕の立つ武闘家による、戦いにおける心構えを教授してくれる人を募集してたら、来たらしい」


その顔は警察も知っているくらいの武闘家。彼女の父親が、とんでもない戦争屋であるのは有名なこと。

しかし、そんな罪な父親を持ってしても、朱里咲がこれまで殺してきた人間に平和主義や一般人はいない。自分と戦う相手がやたら好戦的で弱いだけだからだ。


「えーっ、いくら拳銃を持ち、警棒を振り上げたところ。私のような者には無力であるし、なにより。君達、若輩者の警官諸君にはその覚悟すら生まれぬだろう」


若輩って。意外とあの人は歳がいっているのか?


「いかんなぁ、小声とはいえ。人を侮辱するくらいの覚悟はあるんだな」


次の瞬間。朱里咲は手に持っていた、マーカーペンを発言した警官に高速で投げつける。それはボウリングの球のように重く硬く変化しており、一撃で気絶させる武器となっていた。

騒然とし、そして、沈黙する警察官。


「覚悟とはただやる事じゃない。無謀な覚悟は蛮勇と批難される」

「は、はい!」

「こーいう覚悟は実戦の中で、人が歩んだ道で造り上げていくものだ。できない事を恥じたり、恐れたりする事も無い。先ほどの彼も痛い目を浴び、思い知った事だろう」



年齢には触れてはいけないようだ。

朱里咲の話は纏められていく。



「作られた平和を守る覚悟が求められる警察は、何より優先すべき事は敵のことではない。守るべき人だ。一方で、私のような者は守る者じゃなく、殺す者を優先する。それを履き違えるな」


犯人を殺すことを目的とした正義は、悪と変わりない。犯罪に犯罪を重ねるというもっともらしい、お返しであろうとそれは正義でないのだ。

そもそも、ヤクザもんが毎日のように暴れていたら平和も何もないだろう。こんな平和だから


「健康的で元気に挨拶する、困った連中は助ける、争いは止める、暴力の判断は最後にする。大変に地味でやりがえのない正義であろうと、君達が選んだ戦い方だ。もう全うしろ」



◇     ◇



朱里咲は武闘も教えたりする。父親も武術の師範を務めていた経緯があり、それを振り返りながら教えると、かなり上手く行くとか。経験から出ているものだ。

しかし、大人になった者達に武術を叩き込むことはあまり好んでいない。


「成長などそう見込めない」

「いや、ぜひともあの格闘術を新米達に教えて欲しい」

「警察が戦う組織になってどうする?国の暴力装置は私達、鵜飼組だけで十分だろ?」


署長にお礼を言われる。こーゆう職業をやっているのだから、警官の中に知り合いが何人かいる。自分より年上が必然、多くなってくるが。


「心構えから始めなきゃならん、クソガキ共など。指導する側も良い迷惑というものだ。ほとんどが将来の安定を考えてやがる。警官は楽なもんじゃないぞ」

「はははっ、その苦労は私が教える務めです」


長い勤務時間、くだらない人間関係のやりとり、時には助けること、戦うこと。色々やってくる。

警察署の訓練施設で新米の警官達は走らされていた。


「まずは体力作り。さらには健康管理ですね。最近の子はどうも、体力があっても気力のない子が多い」

「仕方のない事だ。色々便利になってくる世の中だ。必要な事が少なくなってきた」


その目は何か、捜しているようだと。署長は感じて、口走った


「山寺光一くんは元気にやっているのかね?」

「!知らんが、あの男が簡単に死ぬわけないだろう」

「また会えると良いな。思い人なのだろう」

「良い覚悟しているよ、あんたは……」


失言と感じず、応援している声に溜め息をもらした朱里咲。金のためとか、平和のためとか、そんなもんで引き受けたわけじゃないし。意味のないことだって。



「やっぱり、私より弱い男は好きになれん」

「そうでしょうよ?」

「いかんなぁ、私は私を知っているから……。恋もロクにできんよ」

「君は相当、できないよ。もう歳もあるんだから」


お見合い気分で、婚活目的で引き受けたこの講義。見た目がかっこいい若い男は何人かいたが、そのトキメキは人間的なものではなく、妥協であることが理解できる。やっぱり求めているものを貫いている。それが自分の揺ぎ無い強さに繫がるから、付き合うべき男にも求める。


「早く帰って来てくれ、じゃないと結婚も子育てもできんしな」

「君には夢物語じゃないか?それを求めてるとは思えないし」


募集中、でも、お1人様限定。みたいな、


「ま、退屈したら。光一を捕まえに行くさ。あいつの娘と一緒にな」


諦めちゃいけない、と強くなって知る事もある。分別も、途中で捨ててもだ。

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