空想妄想短編
彼女がダンジョンに捕われた、との一報を聞き、俺はかの地へと飛んだ。
バイトは辞めてきた。致し方あるまい、いつまでかかるかわからないしな。
ダンジョンに潜る前に、いろいろと準備をしなければならない。「備えあれば憂いなし」
まずは仲間を見つけなければ。現地近くの街の酒場へと急ぐ。
店に入り、女主人に聞く。
「ダンジョンに行きたい、仲間が必要なんだ」
すると、彼女は「215」と書かれた札を渡し、「番号が呼ばれましたら、1番の窓口へ」と言った。
ベンチで座って待つこと30分、「215番の方、どうぞ」とコールがあった。
1番窓口担当の50代くらいのメガネ男性に要件を伝える。
「なるべく強い人たちが必要なんです」
「すみませんが、今は商人と遊び人くらいしか空いてませんで」
申し訳なさそうに、彼は言う。
仕方ない、一人で行くしかないのか・・・俺は覚悟を決めた。
ハンバーガーとオレンジジュースとスタンガンを買い、いざ、ダンジョンの中へ。
意外なことに、彼女はすぐに見つかった。
ダンジョンに入って5分、彼女はとある行列にならんでいた。
「ここのコーヒースタンド、今日オープンなの」
俺の心配などどこ吹く風で、彼女は微笑みながら言った。
「ちょうどよかった、ちょっと代わりに並んでて。お手洗い行ってくる。」
そう言い終わらないうちに、彼女は走り去っていった。
取り残された俺は、深くため息をつく。
やれやれ、こんなことなら読みかけの文庫本持ってくるんだった・・・