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番外編・両親との再会2

その日の午後、私はアレクセイ様と共に庭の花を眺めていました。

「美しいな……」

思わずと言ったようにアレクセイ様が呟かれます。

「はい…とても…」




ここは父が母の為に作った母の特別な庭。

幼い私もここが大好きで、毎日のようにこの場所を訪れていました。

そしてここには……


「アーニャ…久しぶりです。フレイアはあなたのお陰でここへ戻る事が出来ました…ありがとうございます」

白く悲しい墓標に花を手向けて話しかけます。

「今日は私の大切な方を紹介します。この方がアレクセイ・バートン様。私の未来の旦那様です」

「アレクセイ・バートンだ。あなたのお陰で私はフレイアに出会う事が出来た。…感謝する」

アレクセイ様も頭を下げて下さいます。



アーニャ…もう一度あなたに会いたかった。

会って抱き締めて貰いたかった。





私はもう一つの花束を名前の無い白い墓標にそっと置きました。

ここは私の身代わりとなった名前も知らない少女のお墓。

彼女が生前にどの様に生き、そして亡くなったのかは分かりません。

痛みは無かったかもしれません…。

しかし彼女がその身体を傷付けられた事に変わりはないのです。

私の……代わりに…。




そっとアレクセイ様が私の肩を抱き寄せて下さり、いつの間にか流れていた涙を拭って下さいます。

「風の精霊よ……彼女達に永遠の安らぎとご加護を…」

私の声は頬を撫でる風に舞い、空へと消えて行きました。








どれ位そうしていたでしょうか。

ふと今まで黙っていたアレクセイ様が後ろを振り向かれました。

「…お父様…」

父がこちらへ歩いて来ます。その顔は…とても険しいものでした。


「話がある」


それだけ言って王宮の方へと歩き出されます。一体どんな話でしょうか…。

不安に思ってアレクセイ様を見上げると、とても優しく微笑んで下さいました。それだけで気持ちが楽になります。

「心配するな。大丈夫だ」

そう言われると本当に大丈夫な気がするから不思議ですね。

私は頷いてアレクセイ様と共に父の後を追いました。







父の執務室には父と母、それにアル兄様が待っていました。

私は緊張に身体を固くしながら腰を下ろします。

「………」

「………」

重苦しい程の沈黙。あぁ…やはり父には認めて貰えないのでしょうか…。

「もうっ、お話しするのでしょう?いい加減に腹をくくりなさい!!」

突然母が立ち上がり、父を睨み付けます。

「いや……しかし…」

「しかしじゃありません!!さっさと話して下さらないと困ります。色々とやる事があるのですよ!?」

母に怒鳴られて再びシュンとする姿は一国の主には見えません…。

「さぁ、早く!!」


母にビシッと指を指され、父が観念したように深呼吸しました。

「まずは…アレクセイ殿」

父は一転して真剣な表情でアレクセイ様を捉えます。

「はい」

アレクセイ様も背筋を正してしっかりと父の瞳を見返しました。

「フレイアは私の…私達の大切な宝だ。君はその宝を守り、一生側にいると誓えるか?」

「誓います。私の命に代えて彼女を守り、何があっても側にいます」

しばらくお互いに見つめ合っていましたが、ふいに父が視線を逸らして私を見ました。

「フレイア…君は幸せかい?」

「はい!とっても!!」

勢い込んでそう答えると、父は優しく微笑んで私達を交互に見ました。

「そうか……ならば二人の婚姻を認めよう。…おめでとう」

「「ありがとうございます!!」」

二人で揃って言い、思わず顔を見合わせて微笑み合いました。

本当に、良かったです!!!




「二人の婚姻が決まった事に際して私から決め事がある」

父が真剣な表情で話し出します。な、何でしょう…。

「まずは婚約期間はきっちり二年。そして結婚式はここ、クシャナ王国で挙げる事。それから……」

ここで話を切って、ギッとアレクセイ様を睨み付けます。

「婚約期間中は清い関係を守る事!婚姻が成立するまでフレイアはこちらの城に住まう事!!フレイアに会う時は私かアルフレッドの許可を得る事!!!それから、私の可愛いレイを悲しませるような事があれば私の全精力を注ぎ貴様を殺してやる!!!それから……!!!」




「……全く…仕方のない人ね」

長々と続く父の叫び声に耳を塞ぎながら母が溜息を吐きます。しかしその顔に浮かぶのは穏やかな微笑み。

「レイ、お父様は放っておいて私の部屋に行きましょう」

私は一瞬アレクセイ様を見やりましたが、今は父のお説教を粛々と聞いておられます。

「大丈夫よ。何とかなるでしょ」

母はカラカラと笑いながら私の手を引いて歩き出されます。その際父に「程々にしておかないとフレイアに嫌われますよ」と爆弾を落とす事を忘れずに。

「そうなのか!?嫌われるのか!?」とアレクセイ様に縋る父の姿を最後にパタンと扉が閉められました。

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