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「ベル!!!」
アルフレッド様が遠くから凄い勢いで走って来られます。しばらくご無沙汰しておりましたがお元気そうで何よりです。にしても今日は一段と恐い顔をされていますねぇ。何かあったんでしょうか?それにしてはアレクセイ様が落ち着いて……いえ、ニヤニヤしていらっしゃいますよ?
一体何が…と思っている間にアルフレッド様が私の側までやって来られました。
「ベル!!倒れたと聞いた!!もう平気なのか!?顔が真っ赤じゃないか…熱があるんじゃないのか!?」
「この通り元気だ」
「お前に聞いてな………おいアレク!!お前ベルに何て事をしてるんだ!!」
「何って…膝に乗せてる」
「そうではなく!!何故お前の膝にベルが居るんだ!?早く下ろせ!!」
「嫌だね。俺はベルの婚約者だ」
「こんっ…!?」
ピシッと固まる姿を笑いながら堪能してからアレクセイ様は私を下ろして下さいました。
正直それどころではなかったのですが、恥ずかしい所を見られてしまいましたよ…。
更に真っ赤になる私の耳にアレクセイ様が囁かれます。
「話…してやれ」
私が小さく頷いたのを確認し、頬に軽いキスを落とすと(アルフレッド様が「きゃーっ!?」などと言われてました)アレクセイ様は王宮に戻って行かれました。
「べ、ベル……本当なのかい?…そのぅ…アレクと…」
私が真っ赤になって頷くとアルフレッド様は虎のような唸り声を発した後、私の頭を優しく撫でて下さいました。
「おめでとう」
私はその優しい手を感じながら、大きく深呼吸をします。
そして顔を上げてアルフレッド様を見つめた瞬間…
アルフレッド様は私を見てポカンとされました。え?何ですかね?ここの男性は私の顔を見て驚く方が多いと思いますよ。失礼ですよね。
「ベル……まさ、か…その瞳…」
あぁ…アルフレッド様が驚いていたのはソレだったのですね!!疑ってごめんなさい。
「アルフレッド様…お話があります」
私が話し出したことにより、再びアルフレッド様がフリーズされました。しかし私も必死です。ここはこのまま勢いで言っちゃいます!!
「アルフレッド様…いえ、アル兄様。私は貴方の妹のフレイアなのです。信じられないとは思いますぐぅぇっ!?」
「フレイアァァッ!!やはり生きていた!!!ベルがレイなのか!!!あぁ…神様…!!」
アルフレッド様は泣き叫びながら私を思い切り抱き締められました。ぐ…ぐるじぃ…。
「私の可愛いフレイア!!やはり私の目は間違いではなかった!!姿が変わっていても私はレイを見つけていたんだ!!死んでなどいなかった!!!!」
「アル兄様…」
ポロポロと流れる涙はどちらのものでしょうか。
お互いにひしと抱きしめ合い、暫くの間失われた時間を取り戻すかのようにお喋りをしました。
「父上も母上も言葉にはされなかったが、ずっとレイが生きていると信じられていたんだ。この事を知られたら喜ぶどころの騒ぎではないよ」
「ですが…私は死んだ事に…」
「そんな事は関係ない。レイはこうして生きてここに居るのだから」
「アル兄様…」
「フレイア……あの時護ってやれなくてごめん。側に居たのに…私を恨んでいるのだろうか」
「いいえ!!私は恨んでなど!!!アル兄様の事は一番に大好きです!!」
「フレイアっ!!」
アル兄様はまた涙を流して私を抱き締められます。
「早くお二人にレイを合わせてあげたいよ…だが内緒にして驚かせてみようか?」
その表情は悪戯を仕掛ける少年のようで、私は思わず笑ってしまいました。
「アル兄様ったら。そんな事をしてはまたお母様に叱られますよ?」
それなら嬉しい、と少し悲しげに微笑まれます。
「…母上はレイが居なくなってから特に変わってしまわれた。笑っていても、怒っていても心からではなかった……私も父上も、家族の関係が何処かぎこちなくなっているのが分かっていて何も出来なかったんだ…」
「そんな……」
「でもレイが生きていると分かったら今度こそ母上は心から笑って、泣ける。…本当に生きていてくれてありがとう」
そして…と私の瞳を見つめ、とても無邪気に笑われました。
「お帰り。私達のフレイア!!」
「ただいま!!アル兄様!!!」




