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…思い出した。


私は私。



クシャナ王国第一王女、フレイアだ。





目の前に横たわる隊長様とリューク様。そして城中の皆……。


皆傷付き、倒れている。



「許さない…私はあなた達を許さない」




出した言葉は巻き起こった突風に煽られ消えて行く。

私は立ち上がり、ゆっくりと瞳を閉じ…そして開いた。



私の口は不思議な旋律を紡ぐ。

今までは分からなかった言葉がすんなりと頭に入って来る。


「癒しの風よ…皆を闇の淵より救い光の元へ!!!」


瞬間。立っていられない程の風が巻き起こりレーヨンやキャサリン、バームさんも吹き飛ばされる。

真っ白だったリューク様の顔色が戻り、小さく身動ぎされたのが分かった。



隊長様は…動かない。




私はぐらりと傾ぐ身体を両足で支える。

まだだ。

まだ、駄目だ。


「戒めの風よ!!悪しき者達を捉え力を奪え!!!」


再び起こった風がレーヨン達を拘束し、見えない檻に閉じ込めた。


「精霊の名の下…に、彼らを…裁く!!我は精霊の愛し…子フレイア!!我の願い、を聞き届け…よ!!」



風に拘束された者達が言葉も無くぐったりとした時、私はその場に崩れ落ちた。


まだ…まだ、駄目…。


私は最後の力を絞ってズルズルと隊長様の元へ這って行き、手を握り締めた。

冷たい…。氷のようだ。


「隊長様……お願い…死なないで…目を開けて下さい…」

私は必死で自身の力を注ぐ。

「精霊達…お願いだからアレクセイ様を助けて…」

情けない程に涙でぐしゃぐしゃになりながら、隊長様の名前を呼び続ける。

お願い!!

死なないで!!!

お願いだから私を置いて行かないで!!!

アレクセイ様!!







「泣い…てい……のか?」

掠れた声がし、私はバッと顔を上げた。

「俺…以外に…泣かされ、るな…と言った…ろう?」

隊長様は優しく微笑むと私の頬に手を当てた。

その、温かな手。


「……っ!!!」

私は言葉が出せず、隊長様の胸に倒れ込んでしまう。

「アレクセイ様っ……!!」

良かった、良かった!!

皆!!ありがとう!!!


「ベル…声が?」


その言葉を最後に、私の意識は途切れたのだった。

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