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副隊長様が仰られた『アドリアーノ公爵家の噂』とは、


『亡くなられた公爵の養子が、公爵未亡人に使用人として扱われている』


だとの事。



それ、噂でも何でもなくて思いっきり事実ですよね〜。

誰が言い出したかは知りませんが、過大表現となる事のない真実ですよ。

噂って尾ヒレがつくものじゃないんですかね?なのに本当に真実のみがストレートに表現された素晴らしいお話ですよ。逆に驚きですね。



「実際この目で確かめようと足を運んだのですが…事実だとは…貴女様には大変な苦労をかけさせてしまった事と思います。…ただの噂と侮っていたこちらの職務怠慢が招いた結果です。本当に、申し訳ありません」

副隊長様はガバッと音が聞こえそうな勢いで頭を下げられました。

や、そんな…別に困ってはいませんし…。今の方が余程困りますから。

慌てて首を振りますが、何せ声が出せませんので頭を下げた副隊長様は気付いておられない様子。


いつもは手を叩いたり鈴を鳴らして気付いて貰うのですが、今の相手は副隊長様。そんな事出来ませんよ。

なので側まで歩いて行き、副隊長様の腕にそっと手を掛けます。あくまでそっと、です。だってガッツリ持ったら反射的に殺られるかもしれませんからね。なんせ相手は副隊長様。きっと常人よりも素早いのだと思うのです。


副隊長様が何事もなく顔を上げてくださったので、私は笑って首を振ります。


大丈夫ですよ〜。

苦労だなんて思ってませんよ〜。

と、思いを込めたのですが、副隊長様には伝わらなかったようで。

「そんな健気に……私を気遣って下さるのですね……ありがとう…ございます…」



…泣き出してしまわれました。





これには正直焦りますよ。

なんせ良い年こいたオジサンが、小娘の前でおいおいと泣いているのですから。

慌ててハンカチを渡しながら背中を撫で、ジェスチャーを交えて私は大丈夫だと伝えます。するとしばらく経ってから、副隊長様はハッとした顔になり私を見つめられました。

「貴女は……もしかして…」

はい。何ですか?

小首を傾げて見つめ返すと、その茶色の瞳にみるみる涙が浮かんで来ます。

うわぁ〜…何ですか……。

「まさか……言葉が…」

え……えぇ。話せませんとも。申し訳ありません。

引き気味に頷くと、途端に大声を上げて泣き出してしまわれました。威厳と貫禄が手を振って離れて行く幻覚すら見えそうです。



ひ〜っ!!誰が助けてぇっ!!!










「やはりか……」

混乱を通り越して遠い目をしていた私の耳に知らない声が届きました。

おお!!救世主様!!!

助けを求めて振り返ったドアの所には、一人の男性が無表情にこちらを見ておりました。


その方はなんとも現実離れをした美しさの持ち主でした。紺色の髪は珍しくありませんが、注目すべきはその瞳。なんと、金色に輝いているのです。綺麗なのに何処か恐ろしい…そんな印象を抱いたのは、その醸し出されるオーラでしょうか。



それはまるで……



私が惚けている間にその男性はズカズカと副隊長様に近寄り、思いっきり後頭部をゲンコツで殴りました。いっ、痛いですっ!!『ボグっ』って音がしましたっ!あぁっ!!副隊長様が倒れ込まれてしまいましたっ!ピクピクしています!!!

通り過ぎた混乱と再会している私に、男性は表情を変えずに頷きました。


「大丈夫だ。俺は頑丈だ」




そうですか、それなら良か……って、良くないですよね!?


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