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目を覚ますと二日が過ぎていました。最近このパターンが非常に多い気がします。私、疲れているのでしょうか。
寝ている間にアルフレッド様が国へ帰られてしまっていたのが残念です。もっとちゃんとお別れしたかったです。
「すぐに会いに来ると伝えてくれ」と何度も何度も言われたよ、とリューク様が後から疲れた顔で仰っていました。
隊長様はまたお忙しいらしく、一度だけ顔を見に来て下さった時には疲れた様子でした。しっかり睡眠は取って下さいとお伝えすると「分かっている」と微笑んで下さったので大丈夫でしょう。
私の記憶は……戻っていません。
リューク様によると「余りにも強く忘れているので今回は思い出せなかったけど、時間が経てば思い出すよ」との事です。
せっかくマティルダ様に来て頂いたのに申し訳ないです。
強く忘れている……それって私が忘れようとしたって事ですよね?幼い私に一体何があったと言うのでしょう。
いくら考えていても答えは出ないので、私はこの件は暫く保留とする事にしました。
はい。まさに先送りです!
決定!!そうしましょう!!!
「少し休憩なさいませんか?」
私が重大な決断を下し、ほっとして顔を上げたのを見てリリアンさんが声を掛けて下さいました。
『ありがとうございます』
リリアンさんがお茶を淹れて下さり、オリビアさんがお茶菓子を用意して下さいます。
お二人はいつも素晴らしいコンビネーションですよね。何も言わなくてもお互いの動きが分かるというか。
ここにアリアさんがいると、いつも賑やかにお話をして下さるんです。とっても楽しい方なのですよ。
そのアリアさんはまだ戻って来られていません。
ドレスの件でショックを受け療養中との事ですが、どんな具合なのでしょうか。とても心配です。
あの時も…いつも元気なアリアさんがあんなに泣いておられました…。
『アリアさんはどうされていますか?』
静かに控えるお二人に尋ねると、リリアンさんが困った様に首を振りながら仰いました。
「アリアはまだ部屋から出て来ません。ベル様にはご迷惑をお掛けします」
『迷惑だなんて!!私の方こそ皆さんに迷惑ばかりかけてしまって…申し訳ないと思っています。お休みも…取れていないですよね?』
「いえ…迷惑ではありません」
オリビアさんが優しく微笑んで下さいます。美しい中性的なその顔立ちのせいでドキドキしてしまいますよ。
『あ、ありがとうございます。本当に感謝しています』
「私たちの方こそ、ベル様には感謝しているのですよ」
ニッコリと言うリリアンさんの言う意味が分からなかったのですが、その後すぐにリューク様がお茶を飲みにいらっしゃり聞き返す事が出来ませんでした。
カタン。
夜になり、早々にベッドに横になっていた私は隣の部屋から聞こえた小さな物音に身を起こしました。
その部屋は衣装部屋で誰もいない筈です。耳をすませていましたが、その後は特に何の音もしません。
今日はリリアンさんがお泊りなのですが、先程反対隣の部屋に下がられましたし……。
一度気になると眠る事が出来ず、私はとうとう問題のドアの前まで行きました。
ドアに耳を付けて中の物音を聞いてみますが、特に変わった音はしないようです。
気のせいだったんですかね?
それでも小さくノックをして中を確認してみました。
返事はありません。
もしかしたら何かが落ちた音だったのかもしれませんよね。何をそんなに気にしているんでしょう。
私は小さく笑ってベッドに戻りました。
ガタッ。
今のは聞き間違いではありません。
今度はもっと大きな音ですよ。
私は何となく胸騒ぎを覚えて再びドアの前に立ちます。
『誰か居ますか?』
先程より大きくノックをしてみますが、やはり返事はありません。
…気のせい?
そのまま寝てしまえれば良かったのですが、人というのは可笑しなものですよね。どうしても確かめずにはいられなかったのです。
『開けますよ?』
聞こえるはずのない言葉を掛けて扉を開けました。




