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隊長様とアルフレッド様はご存知なかったそうなので、私は自分の過去を掻い摘んでお話ししました。別に私がズタボロの瀕死で保護されたなんて言う必要ありませんしね。


話し終えた後にアルフレッド様が口を開かれました。

「辛い過去は思い出さない方が良いだろうな…」


シスター・フィー達は幼い頃に虐待を受けた結果全てを無くしたのだろうと推測されておりましたし、私自身辛い記憶は思い出さない方が良いのではと思うのです。

しかし……


「辛いだけではないかもしれんだろう」


そうです!そうなのですよ。

私は隊長様に大きく頷きます。



確かに私の両親は私を捨てた人なのでしょうし、虐待もされていたでしょう。しかし私は思うのです。その辛い生活の中に小さな幸せは無かったのか、私を産んでくれた人は私を抱きしめてくれたのか…と。


そこまで考えて下を向きました。

楽観的過ぎますよね…。




「小さな幸せはあったんじゃないか?」




隊長様の優しい声にビクリとなります。

また心を読みましたね!?

「魔術に読心術なんてない。お前が分かりやすいんだ。バカ」

本当に優しい声で仰るので顔を上げられませんよ。どうしてくれるんですかぁ!!





俯いたままの私の頭を優しく撫でる大きな手。





「僕も絶対あったと思うよ。ベルの幸せ」

「そうだな。必ず」





同情ではなく確信が籠っている優しい声。





そうですよね……

きっと、いえ絶対幸せはあったはずなのです!幸せに“してもらう“のではなく“なる“のです!!

自分の気持ちで世界は変わるんですよね!!シスター・フィー!!!






「今のうちに泣いとけ。…舞踏会までまだ日がある。舞踏会に目を腫らしていては今以上に見るに耐えん顔になるだろ」




煩いですよぉっ!!

台無し!!!台無しですっ!!!





一向に止まらない涙を流しつつ気持ちだけで睨み付けます。





「アレクはいつも一言多いんだよね」

「ベルは目が腫れていたとしても可愛いから安心しなさい」

「それは流石に言い過ぎじゃない?」

「そんな事はない。私は真実を述べたまで」

「普通女の子ってそういう事言われて喜ばないよ?」

「容姿を褒められたら嬉しいのでは?」

「…やっぱりアレクもアルも変な奴だよね〜」

「「お前には言われたくない!」」



三人の会話を聞いていて思わず噴き出してしまいました。


だって、皆さんって…面白い!



「ベルは笑ってる時が一番可愛いよ」

「いや…泣いていても」

「お前は黙ってろ」

「君の前向きな所が好ましいと思うし、見習いたいとも思う」

リューク様は私の頬をご自分のハンカチで拭って下さいました。

「だから、ね?迷惑だとか、畏れ多いとか考えないで?迷惑じゃなかったら友人になって欲しい」

『私が…リューク様のご友人に!?』

「駄目?」

上目使いに小首を傾げられる姿は…とても……とても腹黒そうに見えてしまうのはイケナイ事でしょうか。

リューク様は尊敬しておりますし、大好きです。しかし私が畏れ多いと断ったとしたら、私の黒歴史の一つや二つ持ち出されそうですよね…。


『わ…かりました。友人として、よろしくお願いします』






そうして私はドサクサに紛れて“王太子の友人”と言う称号を手に入れたのでした。

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