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「ベル!!」
隊長様の必死な声が聞こえて目を開けます。するとそこには…
「大丈夫か!?」
そこには超絶どアップな隊長様のお顔がありました。と言うか、私は床に座った状態で肩を抱き締められていますよ!?
な…なにゆえ!?
「大丈夫なのか!?」
大丈夫です!!とても元気ですよ!!でも今にも大丈夫じゃなくなりそうですぅ!!
「良かった……」
隊長様は私の肩口に顔を埋めて仰いました。サラサラの髪が頬に当たりますし…いっ…息が耳にぃっ…!!??はははは離れてくだしゃぃぃ!!!
「お前……いい匂いがするな」
隊長様はクスリと笑って仰います。
『ひゃぁぁぁぁぁっ!?』
そ、それは私の反応を面白がってますね!?絶対『ニヤッ』と笑ってますよね!?
私の顔は最早赤を通り越して黒くなっているのではないかと思われます。
もう何が何だか分からなくなってきた時、隊長様の頭が…正確には私と隊長様が同時に後ろへ離されました。うぁーっ!?今度は何ですか!?
「あまりイジメちゃ嫌われちゃうぞ?」
「ベル!!大丈夫か!?この男に何をされた!?」
私を引き寄せられたのがアルフレッド様。隊長様の頭を片手で鷲掴みにされているのがリューク様です。
「お前ら……おい、分かったから手を離せ馬鹿力!!」
「ベル!?何をされたか言ってご覧?しっかり退治してやるから」
「バカは君でしょう?押し倒すならベッドじゃなきゃ!!」
「押し倒してねぇ!てか離せよっ!!」
「押し倒…っ!!??やはりベルはここに置いておけんな!」
「取り敢えずベル様を椅子に座らせて差し上げては…」
リリアンさんのナイスフォローで男性三人が一斉に黙られました。ありがとうございますっ!!!
「それで?倒れたって聞いたけど何があったの?」
「大丈夫なのか?」
『本当に大丈夫です。重ね重ねご迷惑おかけしました…』
「迷惑じゃないよ。心配はしたけどね」
「そうだぞ?あんな事があったのだから仕方ない」
『私は倒れたんですか?』
自分でも分からなくて隊長様とリリアンさんを交互に見つめます。
「ベル様は突然頭を抑えて倒れられました」
「時間にして数分だが…気を失っていたな」
『そうなんですか……自分でも良く分からなくて…あの時は……』
ノートに記しながら記憶を辿ります。目覚めた時のインパクトが強すぎて忘れていましたが……
『頭痛がして………夢を見ていました』
どんな夢かとリューク様に問われますが、自分でも思い出そうとする程薄れていく気がします…。でも夢ってそんなものですよね?
「どんな感じだった。とかなら覚えてない?」
やけに詳しく聞こうとするリューク様を不思議に思いながら、私は再び考えます。
どんな感じ………夢……そうだ……あれは………
『女の人の優しい手…それに温かい感じと……冷たい手……それと……声が…』
「それは誰の?」
『そこまでは憶えていません。…もしかしたら私が幼い頃の記憶かもしれません』
「それは孤児院に居る頃の?それともその前?」
リューク様の言葉に驚いてポカンと見つめてしまいました。よくご存知ですね!!
「王宮に住ませるんだから少しは調査しなきゃでしょ?」
戯けたように言われますが、確かにその通りです。そして恐らく調査は少しではないのでしょう。
『前の…かもしれませんし、違うかもしれません。ご存じだと思いますが私は幼い頃の記憶がありませんので』
「記憶がないだと?」
「それはどう言う事だ?」
隊長様とアルフレッド様が同時に声をあげられます。
あれ?てっきりご存じかと……。




