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1.メル友

これは2年前位に書いた、始めて完結出来たお話です。

拙い部分もありますけど、短いお話なので我慢して、サクッと読んでくださいね。

 

 

8月某日 午後6時頃

 連日の猛暑日が続く8月、楽しいはずの高校1年生の夏休みのある日の夕方、まだ西日が窓から差し込み充分に明るい部屋の中で、なぜか浮かない表情の少女が、自分のベッドの上で寝転びながら気怠げに、ペラペラと少女コミックのページをめくっていた。


【あぁ~~、暇だぁ~、暇だぁ~、マジなんもすることないよ~】

大きなあくびを噛み殺すと、詰まらなさそうにゆっくりとページをめくる少女。とそのページをめくっていた指がピタっと止まる。少女は今めくったページに載っている、その見開きの大きな広告にじ~っと視線を投げかける。そしてその広告を目で追う少女の顔には興味ぶかげな表情が、はっきりと浮かんで行った。


 今少女が興味深げな視線を向けるその先には、でかい白抜きの文字でこんな一節が踊っていた。

「女性完全無料! 携帯・スマホ完全対応! 大手だから安全・安心で携帯メアドだって秘密にできる。すぐにいっぱい友達やメル友が出来きちゃうし、もしかすると素敵な彼氏もできちゃうかもよ? さぁ、すぐに@ニコニコメールに今直ぐ登録だ! 出会い系ではありません!」

その少女←結城蒼(16歳)が、その日少女コミックで大手メールサイトの広告をみて【なんか、面白そうだなぁ】って思ったのが全ての始まりでした……。


【メル友かぁ……。そんなんも、ありなんかな~】

テーブルの上に無造作に投げ出していた、ストラップが幾つもぶら下がった、ほとんど鳴る事のない自分のスマホを取り上げる。今日もメールの着信はなしか……。ちょっと考えてから、ささっと画面をタップする蒼。


【メールなんか、全然来た事ないなぁ~】

最後に来たメールって云えば、それは1週間前に母からきたお買い物依頼のメールだった。周りの友達がいっつも云ってる「メールの返信が、ちょ~大変」なんてセリフを思い出しながら、自分のスマホの受信BOXの履歴をみて思わず「ふぅぅ~」と溜息を漏らす蒼。「こんなん普通あり得ねぇ~よね……」


 そして視線をさっきの広告へと戻す。

「別に怖い事ないよね。これくらいの事……、だって出会い系じゃないって云ってるし」


 広告に載ってたURLを2次元バーコードリダーでサクサクと読み込むと、そこには“@ニコニコメールへようこそ”と云う画面がスマホに表示されました。蒼は一瞬だけ躊躇したけど、直ぐにスマホの画面をポンとタップしました。


“@ニコニコチャット登録メニュー”スマホの画面にそんな文字が表れると、後は一切の躊躇なく登録の入力を進める蒼。会員登録の操作を簡単にササっと済ませると、続いてプロフ作成メニユーが表示されました。


 そこに次々と現れる項目に迷う事無く回答をしていく蒼。HN=「蒼奈」、年齢=「秘密」、身長=「150代」、体重=「秘密」、彼氏の有無=「いない」、すきなタイプ①=「明るい」、すきなタイプ②=「優しい」、好きな会話=「面白い」、希望対象年令=「10代~20代」等々、そんなプロフ情報にピッピッと気軽にタップ入力して行く蒼の表情はかなり楽し気でした。


 最後に現れた画像登録だけはちょっと怖いから、目の下辺りで切れた写メをUPしておきました。「まぁ、これなら誰かは判んないよね……」。あっと云う間、そうほんの5分位の簡単な操作でした。そして最後に”プロフを公開してメル友を募集する”というボタンを、あっさりとタップしました。




【これでお終いかぁ。すごっく簡単よね。でもこんなもので、ほんとにメールとかくるのかな?】

そしてメル友の募集をしてから2分後。


“ピピッピピッ・ピピッピピッ”と蒼のスマホが鳴りました。慌てて受信BOXを開くと、そこには“@ニコメに新メッセが来てるよ♪”とのメールが有りました。慌ててサイトに行き、その最初のメールを読んでいると 次々と新しいメールが届いたとのメッセージがスマホに来るのでした。それは蒼にとってほんとに初めての経験でした。あまり友達のいない蒼にとって、それはとてもとても楽しい驚きだったのでした。


《こんにちは、はじまして僕は21歳の大学生です。蒼奈ちゃんは、いくつなの? メル友になろうよ》

《こんばんは、蒼奈ちゃん。僕は17歳の高校生のダイです。趣味はスポーツ全般、どう? 友達になりませんか?》

《蒼奈ちゃん、はじめまして、こちらは26歳の独身のサラリーマンです。趣味は……》


 もともと彼氏居ない歴=年齢、つまり16年の蒼は、女子高に入学したこともあって、最近は男子と普通にしゃべるチャンスさえ、あまりない日常を送っていました。

次々と届くメールに、もう必死に返信を繰り返す蒼。とうとうその日は、深夜2時頃までかかって全てのメールに返信をしました。最後にはスマホの電池が切れてしまいました。


【あ~~、メール返信が、こんな大変だなんて思ってもみなかったな。でもでも楽しい~】それが蒼の正直な感想でした。

翌日、朝8時に起きると早速スマホを確認します。すると返信した人の半分くらいの人から、返事が戻ってきていました。その返信メールに、すぐに返信をはじめる蒼。今日はスマホを電源に繋げたままですから、電池切れの恐れもありません。するとメールを返信したその中の数名から、即座にまた返信が戻って来たのでした。当然蒼もその人達に返信をしたのです。


 こんなメールのやり取りをした経験がほとんどない蒼は、たちまちメール交換に嵌っていきました。一日にそれそこ何十通もメール交換をして、いろいろな話をする蒼。それは本当に楽しい経験でした。実際メールの内容なんてどーでも良いのでした。メール交換をしてる。その事実が蒼に取っては新鮮で楽しかったのです。


【メル友さんて、こんな楽しいんだ。もっと早く始めればよかったな】

そこには、鼻歌交じりにスマホを握りしめたまま一日中いつでもどこでも、楽し気にメールを読んだり、書いたりする蒼の姿がありました。ええ、確かにその姿はどこにでも居る女子高生の姿でした。


如何でしたか?


まだ全然怖くはないです。

次話位から、少しづつ変な現実が始まります。

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