崩壊の序曲
何かが壊れていく音がする。それは君?ソレトモボク?
入口に視線を向けると、あったはずの扉は破壊されて木片となって床に散らばっていた。
そこに立つのは鎧を着込んだヒューマンの男2人にエルフの女が1人おり、こちらを下卑た笑みを浮かべこちらを見ていた。
いや、老人と少女を見ていたというのが正しいのだろう。
中心に立っていたヒューマンの男がリーダーらしく、歩みを進めながら言った。
「こんばんわぁ~カクスさぁん。取り立てにこさせていただきましたぁ。今日こそキッチリ払ってもらうぜぇ?」
それに対しカクスと呼ばれた老人は厳しい表情を浮かべ
「ふんッ。また来おったか。無いもんは無いのだから払えるわけがなかろうよ。客人もいるんだ。さぁ、帰ってくれ!」
そう言うと、男達に背を向けた。
何が楽しいのかは知らないが男は笑みを深めると、こちらに近寄ってきた。
「こいつぁ驚いた!まだこの街に俺らの言うことを聞かない馬鹿がいたとわ!!」
とゲラゲラ笑いだした。
全く状況が掴めない俺は、とりあえず下品な笑い声をあげる馬鹿を無視し、隣で俯いている少女に問いかける事にした。
「何なんだコイツ等は?」
それに少女は悔しさを噛み締める様に教えてくれた。
「こいつ等はアスガルド城主がリーダーの血盟、不夜城血盟です。前城主を卑怯にも人質を使って殺害して城を奪い取り、街を・・・・・・人を・・・・・・。」
そう言って黙ってしまった少女を見る限り、余程非人道的な行為が行われたのだろう。
まぁ、それでも昔の自分が行った行為に比べればまだマシだとは思うがね。
笑うのに飽きたのか、男は俺に歩み寄り武器を抜き放った。
「もうそこのちんまいのから話は聞いたでしょ?俺たちは最強最悪のギルド様ってわけ。わかったら家に帰って膝でも抱えてなよお兄さん?」
首に寸止めで剣を添えてニヤニヤ笑っているがコイツはわかっているのだろうか?
自分が
誰に
喧嘩を売っているのか?
人間であった時から自分は少し変わっていた。何がというと一言に尽きる。
血を見るのが大好きだということだ。
もちろんだからといって、人を殺したことはない。精々犬や猫くらいだ。それでも十分異常であることは間違いない。
嗜虐趣味とでもいうのだろうか?現実世界では限界がある行いも仮想現実であるゲームの中では許される行為。PK。
どこの誰かだなんて関係ない。俺の思うまま、自由に、殺しまわったあの日々。
その俺様に、たかだかC装備を着たヒューマンが、脅し。
あんだけ滅入ってたはずなのに、何故か今は笑いが込み上げてくる。
あぁ・・・・これが我慢できようか?我慢できるはずがない!
あは・・・・あはははは!さぁ、宴を始めよう!!誰もが血に染まる最ッ高の宴を!!!!
注)人間時代の主人公は異常性癖はありましたが、ここまで歪んでません。ただ、PKキャラクターの身体になったこと・PKしてまわった世界にいること。それが歪みの原因です。
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