閑話休題 これまでの概略
大分、期間が空いてしまいましたが、再開します。
今回は、一応、これまでのあらすじという形です。
以前読んでくださった方も、そうでない方も、よろしくお願いします。
自分の生まれ故郷の村、そしてその村に住む友人・知人……、それを自らの手で根こそぎ破壊してしまった青年、ハヤン。
彼が、自身はまるで望みもしないが、ある時、強大な力を手に入れてしまった結果に起こった悲劇であった。
ハヤンにとって、それは自分の人生の根本が破壊されたのと同義であった。
自分が所属する世界、それを突然に喪失したのだから。
あるいはそれが天災であるなら、いや、天災でなくても何か別の物が原因であるならば、ハヤンは立ち直る可能性があったかもしれない。
誰かがそれをやったのならば、それが幸福かどうか分からないが、その復讐心を胸に生きる事も彼には出来ただろう。
しかし全ては他の誰でもない、彼自身の力が引き起こした事だ。
自分自身を殺してやりたかった。
死があるいは救済なのかもしれなかった。
実際に、幾度と無くそれを試し、そしてそれはただの徒労に終わった。
狂ってしまえば楽だったかもしれない、だが人はそう簡単には狂えない、99%狂う事ができても残り1%が残る、それを失えば、もう人とは呼べない。
ハヤンは全てを失いながらも人間であり続けた。
だが、彼は絶望に満ちていた。
自分の身の内に宿った力は強大で、凶々しく、狂暴だった、少しでも気を緩めると、近くにいる全てを殺そうと暴れる。
ハヤンに残された最後の生きる意味、それはその力を封じる事だけだった、例えそれが自らの命と引き換えになろうとも。
当て所無く歩く彼には、唯一の救いである自分を殺す方法を探す旅という、常人ならばありえない目的以外にはその足を進ませる方法が無かったのだった。
彼の暗闇の希望に向かう為の物語は、ここから始まる事となる。
だが、ハヤンにとっては絶望的な忌まわしい力であっても、それを必要とする人間はいる。
それらの企みを持つ人間達の襲撃をハヤンは掻い潜らなくてはならなかった(ハヤンは殺される事を望んでいるので、相手が圧倒的に強く殺してくれるのならば、それは望み通りなのだが、捕らえられ戦争の道具に利用される事をハヤンは恐れていた)。
数々の戦いを乗り切っていたハヤンだが、ようやく、旅に光明が見えた。
自分を殺す可能性の有る、伝説の武器の存在とその場所の情報である。
彼はそれを求め、有る街に訪れるのだが、そこで彼は現存する唯一の知り合いと会う事となる。
それは、彼が自身に宿る忌まわしい力を手に入れた際に、村を訪れていた軍人である。名前はプルシコフといった。
ハヤンと同様に人知を超えた力を手に入れていたプルシコフは、見事にハヤンを遂にその手の内に納める事に成功したのだった。
当然これは古い知り合いとして、友好的にハヤンがプルシコフに付いて行ったと言うよりは、脅迫と言う形に近かった、要求を断ればどうなるか想像に難くない。
ハヤンは、自らの意思で力を抑える薬を飲み、そして意識を失った。
その際に、この街では象徴的存在であり、超絶的な魔力を有する少年も同伴する事となった、名はエクといった。
薬で意識を失わされたハヤン。
彼は今、自らを心配し付いてきたエクと、プルシコフと仲間であるダルマ、クァルゴと共に、移動中であった。
そこに新たなる闇が迫っているとは、今なお悪夢に魘されているハヤンにはとうてい知りえない事であった。