とある少女の決断
ドックン、ドックン。胸が高まっている。それは、私が政府と呼ばれる社会のまとめ役に腕を買われて雇われている身でありながら、飼い犬に手を噛むがごとく逆らう真似をしようとしているから。それとも使い慣れない"これ"でうまくやれるのか不安になったから。そのいずれにも当てはまらない。(まったくなかったかと言われれば嘘になるのだが)しかし、そのときの私はあの人のことで頭がいっぱいだった。もう一度会いたい。会って話したい。彼が最後に残してくれた手紙をぎゅっと胸に抱きそっと机の残っているスペースに置いた。さあ、私の一世一代の行動開始だ。
ミーンミーン、ミーン。蝉の声が聞こえる。今は、夏真っ盛り。僕は、補習のため学校の教室にいた。特に成績が悪かったわけでなく、まあ生徒すべてが受けるタイプの補習だ。実際は補習と言っておきながら、授業を進めていくのだが。さすが進学校である。1年生の時は少し驚いた。ここの所、暑さのせいかぼ~っとすることが多い。自分が幽体離脱した感じ?そんなことを思っていると、教壇に立つ先生の声に混じって音が聞こえてきた。
「・・・、・・・」
外からでなく、頭の中から直接響いてくる。どこかで聴いたことのあるような音。いや、声?思い出そうとする。なにか忘れている気がして、思い出さなければならないことがあると思ったから。しかし、頭の中に靄がかかっていて・・・今日も補習が終わった。この後は友達数人とカラオケに行くことになっていたはずだ。お気に入りの歌を小さく口ずさみながら、友達の元へ歩いていった。楽しい一日になりそうだ。