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第六話

午後三時。

点滴は抜かれ、診察室の窓からは冬の淡い光が差し込んでいる。

結衣は、昨日より少しだけ顔色がいい。

「身体的には問題なし。今日は帰宅でいい」

 湊はカルテを閉じる。

「次の外来、来週」

「はい」

間が空く。

「親には」

結衣が先に口を開く。

「言います。内定のこと」

声は小さいが、はっきりしている。

「今日、帰ったら」

「怖い?」

「めちゃくちゃ」

それでも、目は逸らさない。

「でも、隠して飲むよりは、怒られる方がマシかも」

苦笑。

「怒られたら、また来ます」

「電話してから」

「……練習どおりに?」

「そう」

結衣は深呼吸をひとつする。

「消えたくなりました、って」

「うん」

「ちょっと多めに飲みそうです、って」

「うん」

「来てもいいですか、って」

湊は頷く。

「いいよ」

前回と同じ言葉。

だが、今度は約束ではない。

選択肢としての言葉。

結衣は立ち上がり、ドアノブに手をかける。

「先生」

「うん」

「昨日より、参加してる感じがします」

あの言葉。

参加していないことにしたい。

それが今、少しだけ変わった。

「よかった」

扉が閉まる。

廊下の足音が遠ざかる。

今度は、自分の足で帰っていく音だった。

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