第零話 同音異義語
キーンコーンカーンコーン...
代わり映えのない無機質な音が教室で鳴り響いた。
「えー、次回は98ページからやります。号令」
退屈な国語の授業が終わった。四時間目の後は四十分間の昼休みだ。いつも周りに人は居ないが、今日は特段といない。ような気がする。
「ねぇあの根暗な奴の投稿。見た?えんじょー?しててマジウケる笑」
一軍女子が言っている根暗というのは僕、【日溜 翔】の事だろう。ひだまりなんて名字にも関わらず根暗だとはなんという皮肉だろうか
「噂になってるね。根暗君。」
そう僕に嫌味を言ってきたのは幼馴染の【花丸 風花】だ。
「...なんのことだが」
「とぼけんなよ。先週SNSで見たぞ。なになに...。アカウント名show0622...引用元〈この絵画素晴らしい...一体どんな生活をしたらこんな絵が描けるのだろう。〉に対して〈素人が絵の評価をするとか。それにこれの何処が良い?僕なら三十分で描けるね。〉」
風花の声が教室で響き、何やらザワザワとしだした。
「お、おい。フウそれくらいにしてくれ...」
「まさかここまで大ごとになるとは思わなかっただろう?この絵を描いた画家の熱狂的海外ファンや日本のファンから苦言を呈され、もの凄い勢いで拡散され、本名や住所まで特定される始末なんだから。」
そう。僕は先週の金曜、有名な画家である立花の作品【紫陽花と向日葵】に対する一般人の賞賛に嫌気が差し、引用ポストをしたのが事件の発端だった。
「言論の自由...当たり前の権利だろ。」
「さぁねぇ。君にとっては何も響かない軽いものだったとしても、世の中は広いのさ。それが人生を大きく変えるものであるかもしれない。アートってそういうものなんだろう?」
「僕には響かない軽いものだった。世の中は広いらしいからね。感受性が違うんだ。自称熱狂的ファン達が何もここまですることはないと思うが...」
「世の中が変化していくように、SNSも変化していく。tweetではなく今ではpostさ。呟きで済まされていたものが、意見や意思と捉えられる時代。君はもう少し言葉の重みを理解した方がいい。」
元々、僕は立花の熱狂的ファンだった。...いや、この場合は僕たちというのが正しいだろう。フウと僕は立花のファンだった。ファンという三文字で片付けてしまうのは勿体ないくらいに。黙り込んでいる僕に、惣菜パンを口に入れながらフウは続けた。
「最近、私は君がしたいことが分からないよ。こんな事、きっと立花も望んでいないさ。」
「ッ...じゃあ立花は...」
「皆まで言うな。君は正義のためやっているつもりなんだろう?ただそれは自称正義だ。」
返す言葉が見つからなかった。フウは続ける。
「...そして君の意図を汲み取れるのは私だけだ。周りの人が平等に君の自称正義を分かってくれるはずが無い。君も分かっているはずだ。」
「...それでも!」フウが僕の言葉を遮るように畳み掛ける。
「それだからこそ、私達はあの事件を風化させてはいけない。」
あの事件とは...立花、【立花 灯】が殺された殺人事件の事である。厳密に言えば公では自殺として処理されているが。
「今日の放課後...空いているかい?喫茶 ito で集合だ。」
ここから始まったのだ。僕たちのartは。
続きは書くかわかりません。カッコいい感じの話が書きたかったです。




