キミの手を離さない
異世界恋愛……かなあ?
ボクはきっと歪んでいる。
キミに冷たく当たる日常。 ボクに連れ添うように言われ、仕方なくボクに付いてくるキミにただ当たる日々。
ボクは歪んだ心でキミに辛く当たった。
キミはその度に泣きそうな顔でボクを見つめる。
その顔が好きなボクは、きっと歪んでいる。
オレは歪んでいる。
生まれついてか、王子という立場のせいか、周りの貴族どものせいか……。 兎に角オレは歪んでいる。
愛しいアイツをただ傷つけたくて仕方がない。
アイツが好きだと言った絵画を燃やし、アイツが撫でた犬を斬った。
それでもアイツはオレが嫌っているからだと思っているんだろう。 涙ぐましく刺繍なんぞを贈ってくる。
それに意味などありはしないのに。
オレはアイツが愛おしいからこそアイツを傷つけているのだから。
アイツの泣き顔を見て高揚するオレは、間違いなく歪んでいる。
わたしは歪んでいる。
真面目な王太子として在りつつも、彼女には歪んだ愛情しか与える事はなかった。
だからこんな形の反逆も仕方のない事なのだろう。
「ディアレス王子! 貴方は間違ってる!」
そう言うのは……確か辺境伯の息子だったか。
彼女は四六時中わたしと一緒にいたというのに、よくも他の男と乳繰り合う暇が在ったものだ。 そこは素直に賞賛しよう。
「それで?」
「! ――彼女を、ミリアムを解放して貰う!」
燃えるような赤の髪が勢いになびく。 暑苦しい男だ。
「辺境伯は真面な礼儀も教えていないようだな。
公女様、だろう? 誰の許しを得て彼女の名を呼んでいるのだ、貴様は? 身を弁えよ、下郎」
辺境伯の息子 ――名は知らん―― はそう言われたじろいだろうに見えたが、それでも気を持ち直したようだ。 彼女を背にしているその様子が酷く苛つく。
その表情は期待か希望か。
「彼女の自由を賭けて、決闘だ!」
建前上、学園は治外法権。 身分差はない事になっている。
とは言っても、普通目上には敬意を払うものだが、この馬鹿はその建前を大義名分にしているのだろう。 くだらぬし、詰まらぬ男だ。
「まさか逃げはしな――!?」
耳障りな口上を止める。
飛び散る鮮血に彼女 ――ミリアムの表情が希望から絶望に変わったのがはっきりと見えた。
ピピッと白い頬に付着する真紅が似合うようにも思えるが、この愚か者が彼女にへばりつく様で目障りでもある。
「自分から決闘などと嘯いて隙だらけとは、辺境伯は禄に戦いの仕方も教えていなかったと見える」
わたしの手元に生まれた氷の剣がその首を掻き斬ったのだ。
首から溢れる血を押さえる愚かな男に語りつつ、わたしは彼女を見る。
青白くなった、絶望に染まる表情。
幼い頃から見続けた彼女の、明るい未来への期待と、それを裏切られた時の正しく失意と失望に堕ちた表情。
ああ、いい顔だ。
今度その表情を見る事が出来るのはいつになるのか、期待するわたしは何処までも歪んでいる。
ホラーじゃん!?
そう言われるのを期待する私がいる!
ちなみにボク→オレ→わたしは幼少期→少年期→青年期の一人称です。




