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追放された雑用科の俺が、辺境で領地経営を始めたら王国も教会も手出しできなくなった  作者: 空城ライド


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第20話 中立は、力で証明される

 それは、夜明け前だった。


 まだ空が白み始める前、

 自警団の詰所に、短く鋭い笛の音が響いた。


「――接触だ!」


 ドランの声に、全員が即座に動く。


 松明が灯り、武装が整えられる。

 だが、慌てた様子はない。


 訓練通りだ。


「数は?」


「十前後。

 正規兵じゃない。

 装備がバラバラだ」


(……来たな)


 俺は、地図を広げながら即座に判断する。


 これは軍ではない。

 だが、盗賊でもない。


 意図的に曖昧な存在。


「目的は、襲撃じゃない」


 俺は、はっきり言った。


「試しだ」


 誰も、否定しなかった。


 中立を宣言した以上、

 必ず“踏み絵”は来る。


 それが、今だ。


「迎撃はする。

 だが――追撃は禁止」


 ドランが、頷く。


「致命傷も、避ける」


 その指示に、何人かが一瞬だけ目を見開いた。


「……甘くありませんか?」


「違う」


 俺は、低く言う。


「選別だ」


 殺す必要はない。

 だが、無力でもない。


 それを、見せる。


 襲撃者たちは、柵の弱点を正確に突いてきた。


 人数は十二。

 二手に分かれ、倉庫と居住区へ同時侵入。


(……素人じゃない)


 動きは荒いが、判断は早い。


 おそらく――

 王国系傭兵か、教会系の私兵。


 どちらとも取れる。


「第二班、左へ!」


 ドランの号令が飛ぶ。


 松明が一斉に掲げられ、

 闇が照らされる。


 その瞬間――

 敵の動きが、僅かに鈍った。


「……統制されてる?」


 誰かが、呟く。


 そうだ。


 こちらは、もう“集団”だ。


 短い衝突だった。


 刃は交わった。

 血も流れた。


 だが――

 死者は、出なかった。


 数分後、

 襲撃者たちは、負傷者を抱えて撤退した。


 追撃は、しない。


 夜が、再び静まり返る。


「……終わりました」


 ドランが、息を整えながら言う。


「被害は?」


「軽傷三名。

 倉庫の被害、なし」


 完璧ではない。

 だが――十分だ。


 夜明け。


 捕縛した一人を、広場に座らせた。


 男は、歯を食いしばり、口を閉ざしている。


「所属は?」


 問いかけても、答えない。


 俺は、無理に聞き出さなかった。


 代わりに、言う。


「伝えて帰れ」


 男が、顔を上げる。


「次に来るなら、

 もう少し本気で来い」


 周囲が、ざわつく。


「だが――

 次も同じなら、

 今度は“逃がさない”」


 男の瞳に、はっきりと恐怖が浮かんだ。


 昼前。


 王国側から、使者が来た。


「……昨夜、この周辺で

 不穏な動きがあったと聞いた」


 知らないふりだ。


「こちらも、被害を受けた」


 俺は、淡々と答える。


「犯人は?」


「不明です」


 事実だ。


「ですが――」


 一拍、置く。


「この地で武力を用いるなら、

 どの勢力であれ、排除します」


 使者の顔が、引きつる。


 同じ日の夕方。


 教会からも、問い合わせが来た。


「異端的な武力行使があったと……」


「防衛です」


 俺は、即答する。


「祝福を受けた地を、

 守っただけです」


 皮肉は、通じた。


 司祭は、それ以上踏み込めなかった。


 夜。


 焚き火の前で、ミレイアが言った。


「……怖かったです」


「そうだろう」


 俺は、否定しない。


「でも――」


 彼女は、続ける。


「誰かに守られた怖さじゃなくて……

 自分たちで立った怖さでした」


 それでいい。


 それが、独立の感覚だ。


 ドランが、低く言う。


「これで、

 “中立は弱い”とは言えなくなったな」


「ああ」


 俺は、頷く。


「中立は、

 最も殴られやすい立場だ」


 だが――

 殴られても立っていれば、評価は変わる。


 この一件で、

 王国は軽率に動けなくなる。

 教会も、正義を振りかざしにくくなる。


 理由は単純だ。


 ここは、思ったより面倒だ。


 それだけで、十分な抑止になる。


 俺は、夜空を見上げる。


 中立は、宣言ではない。

 信仰でもない。


 実力で維持する、最も重い立場だ。


 そして――

 その実力を、今夜、示した。


 次に来るのは、

 様子見ではない。


 ――条件交渉だ。

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