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追放された雑用科の俺が、辺境で領地経営を始めたら王国も教会も手出しできなくなった  作者: 空城ライド


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第16話 領地は、もう隠れられない

 変化は、静かに――しかし確実に始まった。


 教会の巡察団が去ってから数日。

 領地の外れに、見慣れない人影が増え始めた。


「……また来てます」


 見張り役の声に、俺は丘の上へ向かう。


 そこにいたのは、武器を持たない人々だった。

 家族連れ。

 老人。

 そして、単身の若者。


 共通しているのは――

 疲れ切った顔。


(流れてきたな)


 噂は、もう止められない。


「ここが……魔物が来なくなったっていう……」


「教会の結界があるらしい」


「王国の監察官も来たって聞いたぞ」


 噂は、事実と憶測が混じって膨らんでいる。


 だが、結果は同じだ。


 人が集まる。


 ミレイアが、帳簿を抱えて駆け寄ってきた。


「……一週間で、人口が三倍です」


「予測より、少し早いな」


 俺は、短く息を吐く。


 人が増える。

 それは、力だ。


 だが同時に――

 リスクでもある。


「全員、受け入れるんですか?」


 ドランが、低い声で聞く。


 その問いに、領民たちの視線が集まる。


 俺は、少しだけ考え――首を横に振った。


「選ぶ」


 空気が、張り詰めた。


「この領地は、まだ脆い」


 はっきりと言う。


「無制限に人を増やせば、

 食料も、治安も、統制も壊れる」


 これは、善悪の話じゃない。


 生存の話だ。


 俺は、受け入れ基準を示した。


「条件は三つ」


 指を一本立てる。


「一つ。

 働けるか、働く意思があること」


 もう一本。


「二つ。

 この領地の規則に従うこと」


 最後に。


「三つ。

 過去を持ち込まないこと」


 ざわめきが起きる。


「それは……」


「犯罪者も、元兵士も、元貴族も関係ない」


 俺は、全員を見渡す。


「だが――

 ここでは全員が“新参者”だ」


 過去の身分も、恨みも、持ち込ませない。


 それが、統治の最低条件。


 その日のうちに、数人が去った。


 条件が厳しすぎる、と。


 だが――

 残った者たちの数値は、明確だった。


【定着意欲:高】

【規律受容度:中〜高】


(……悪くない)


 量より、質。


 ここで失敗すれば、

 後の拡大は、すべて瓦解する。


 夜。


 焚き火の前で、ドランが呟いた。


「……冷たい判断だな」


「そう見えるだろう」


 俺は、否定しない。


「だが、優しさは後からでも配れる」


 まずは、守れる形を作る。


「生き残るための秩序がなければ、

 誰も守れない」


 その言葉に、ドランは黙って頷いた。


 翌日。


 商人トルバが、再び姿を現した。


 今度は、一人ではない。

 後ろには、荷馬車が二台。


「……随分、人が増えたな」


「噂が走った」


「だろうな」


 トルバは、苦笑する。


「忠告だ。

 もう“辺境”の扱いじゃない」


「分かってる」


 俺は、即答した。


「だから、次の話をしよう」


「ほう?」


「取引量を増やす」


 彼の目が、光る。


「代わりに?」


「情報」


 即答。


「王都。

 教会。

 周辺領地の動き」


 トルバは、数秒考え――頷いた。


「……高くつくぞ」


「払える」


 金ではない。


 場所と安定で。


 その夜、ミレイアが言った。


「……情報、怖いですね」


「ああ」


 俺は、焚き火を見る。


「だが、知らない方がもっと怖い」


 領地は、もう隠れられない。


 だが――

 見られるということは、

 選ばれる可能性があるということでもある。


(次は、拡張だ)


 人が増え、

 金が動き、

 外が見えてきた。


 なら次に必要なのは――

 守りを“力”に変える段階。


 ただ耐えるだけの領地は、

 いつか潰される。


 だが――

 潰すと損をする領地は、

 簡単には触られない。


 俺は、静かに次の盤面を思い描いた。


 この土地は、

 もう“逃げ場”ではない。


 ――拠点だ。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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