第1章 第7話――高慢ダンスを踊っただけなのに、各国から絶賛されましたわ!
第7話では、学園舞踏会という大舞台で、
主人公エリザベートの“悪役ダンス”がまさかの 外交級評価 に跳ね上がりました。
・冷たい微笑 → 礼法として最高評価
・悪役ムーブの姿勢 → 王妃教育の極致扱い
・使節団からスカウト
・アレクシス殿下の恋愛フラグ爆増
という、主人公にとっては地獄の展開が炸裂。
学園内だけでなく、ついに 国際問題級の勘違い が始まります。
第1章 第7話――高慢ダンスを踊っただけなのに、各国から絶賛されましたわ!?
魔法授業で“天才扱い”されてしまった翌週、
アカデミア学園では年に一度の大イベント――
学園主催の舞踏会が開催される。
格式高いパーティーで、王城からの来賓も多い。
踊り、礼法、立ち振る舞い……
あらゆる“社交スキル”が見られる特別な場だ。
(ここでこそ……悪役令嬢ムーブを決めますわ!)
悪役令嬢といえば、舞踏会での“高慢ダンス”。
背筋を伸ばし、冷たい笑みを浮かべ、
「私こそがこの場の主役」と言わんばかりの圧で踊るアレである。
(乙女ゲームでも悪役令嬢のダンスは名物イベント……!
ここで悪女としての威厳を示さないと!)
***
王城大ホールを借りた舞踏会の会場は、
金のシャンデリアと大理石の床が輝く豪奢な空間だった。
「エリザベート様、今日もお美しい……!」
「殿下と踊るのかしら……?」
「いや、きっとあの堂々たる立ち姿……注目間違いなしね……!」
(頼むから……今日だけはそっとしておいてほしいのですけど!?)
肝心のアレクシス殿下は、少し離れた場所から私を見つめていた。
きらきらした目で。
……本当にやめてほしい。
(ダンスは……殿下と踊らなければ“悪役ムーブ”の妨害が少ないはず……)
そう考えた私は、別の男子生徒に声をかけた。
「あなた、少しダンスのお相手をなさい」
「エ、エリザベート様!? 光栄ですっ!」
(よし。ここで“高慢ダンス”を見せるわよ……!)
楽団の奏でる優雅なワルツが始まる。
私は慎重にステップを踏み出した。
背筋を伸ばし、冷たい微笑みを湛え、
ドレスの裾を完璧な角度で翻す――
(いける……! 今日こそ悪役ダンスが決まる……!)
その瞬間。
「な、なんだあれは……」
「信じられないほど優雅……」
「あれほどの礼法を持つ者がこの国に……?」
(え? 私なにか“とんでもないこと”しました!?)
ざわ……ざわ……
まるで王城全体が揺れるようなざわめきが広がる。
ダンスを中断しそうになったその時、
外国からの使節団が歩み寄ってきた。
「ローゼンクロイツ嬢。
あなたのダンス……見事としか言いようがない」
「えっ……? わ、わたくし……?」
「背筋の角度、足運び、手の位置……
すべて“王妃教育を受け切った者の動き”だ」
(いや……悪役令嬢ムーブをしただけでしてよ!?)
「まるで……我が国に伝わる古の宮廷礼法を見ているようだった」
「わざわざ“気高さ”を纏うように踊るとは……
あれほどの者は滅多にいない」
(私、ただツンとした顔で踊ってただけなんですけど!?)
他国の使節たちが次々と私の手を取り、並べて称賛する。
「ローゼンクロイツ嬢、ぜひ我が国に来てほしい」
「王族にもぜひ紹介したい逸材だ」
「外交の象徴としても申し分ない!」
(やめてやめてやめて!!!
悪役令嬢は外交官にならないの!!!)
地元の貴族もざわつき始めた。
「エリザベート様……本物の上流階級……」
「やはり殿下の隣に立つべき方……!」
(違うぅぅぅぅぅ!!)
しかし最もヤバい存在が近づいてくる。
「エリザベート」
アレクシス殿下だ。
(や、やばい……バレる!?
いや、そもそもバレても困るし!!)
彼は真剣な顔で言った。
「先ほどのダンス……完璧だった。
上流の礼法だけでなく、民の視線まで惹きつける魅力……。
本気で……君に見惚れていた」
「~~~~ッ!?!?」
(や、やめてーー!! 好感度上げないでーー!!)
殿下は続けた。
「他国も君を称賛していた。
君の存在は今や、我が国にとって欠かせないものになりつつある」
(いやいやいや!!
私、悪役令嬢になりたいんですわよ!?
国の宝扱いとか真逆ですわ!!)
その日の夜、王城では
「ローゼンクロイツ嬢、王妃候補として海外でも話題に」
「舞踏会で見せた“気高い優雅さ”は後世に残る」
という噂が広がり、
私はその中心に立たされる羽目になった。
(悪役令嬢ルート……どんどん遠ざかってますわぁぁぁぁ!!)
お読みいただきありがとうございます!
第7話では、
“悪役令嬢になりたいのに、なれないどころか国宝扱いされる”
という本作のテーマが、さらに大スケールで展開されました。
次回は第8話。
「ヒロインを軽く無視 → ヒロインが自主成長」
という、ミリアの成長が本格化する回です。
ご希望あれば、8話もすぐ執筆します!




