1話 王妃なんてお断りですわ!――女王なら、考えてあげなくもなくてよ?
1話 王妃なんてお断りですわ!――女王なら、考えてあげなくもなくてよ?
……最初に、
はっきり申し上げておきますわね。
わたくしは、「王妃」と呼ばれるのが嫌です。
理由ですか?
簡単ですわ。
王妃というのは、
「王の隣に立つ役割」であって、
「王の代わりに立つ役割」ではありませんもの。
それに――
おじさんの王ですとか、
皇太子ですとか。
ええ、
名前は出しませんけれど。
結婚する気は、一切ございません。
ありませんったら、ありませんわ。
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そもそも。
どうして皆さま、
「責任を取る=結婚」
という短絡的な発想になるのかしら。
国を見て、
意見を聞いて、
判断を下す。
それは仕事ですわ。
仕事と結婚を、
一緒にしないでいただきたい。
(……本当に、
誰が決めたのですか、その文化)
⸻
ですから。
「王妃になってください」と言われるたび、
わたくしは思うのです。
それ、
一段階、
飛ばしていませんこと?
⸻
もし。
本当に、
この国がわたくしを必要とするなら。
もし。
誰かの顔色をうかがい、
隣で微笑むだけの存在ではなく。
判断し、
決断し、
責任を負う立場を
求めているのだとしたら。
――話は、別ですわ。
⸻
その場合。
わたくしは、
こう申し上げます。
「女王なら、
なってあげなくもなくてよ?」
ええ、
“なくてよ”です。
“ぜひ”ではありません。
“仕方なく”です。
⸻
なぜなら。
わたくしは、
悪役令嬢ですもの。
誰かの隣で
守られる役など、
性に合いませんわ。
立つなら、
前です。
座るなら、
一番高い椅子。
そして。
文句を言われるなら、
正面から。
⸻
それに――
女王なら、
結婚しなくても
問題ありませんでしょう?
(ここ、とても重要です)
⸻
ですから。
今後もし、
誰かがまた
「王妃として――」
などと口にしたら。
わたくしは、
にっこり微笑んで、
こう返しますわ。
「勘違いなさらないで」
「わたくし、
選ばれる側ではありませんの」
「選ぶ側ですわ」
⸻
……まあ。
本当のところを言えば。
わたくしは、
そんな役職、
どれも欲しくありません。
ただ、
静かに退場して、
完璧な悪役として
語り草になる予定でしたのに。
どこで、
どう間違えたのかしら。
⸻
まったく。
悪役令嬢は、
生きづらいですわね。
才能がありすぎると。




