表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『悪役令嬢になりたいのに、全部善行扱いされてしまうんですが!?』  作者: ゆう
王都編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/71

第34話:なぜこの場所に戻るの!

第34話:なぜこの場所に戻るの!


その日は、

あまりにも“普通”に始まった。


エリザベート・フォン・ローゼンクロイツは、

いつも通り目を覚まし、

いつも通り紅茶を飲み、

そして――


「本日は、

 最終確認の日でございます」


(来ましたわね)


(最終断罪)


エリザベートは、

静かに立ち上がった。


「……ええ」


「覚悟は、

 できておりますわ」


侍女は、

なぜか少し泣きそうな顔で頷いた。


(その反応、

 やめてくださいません?)



広間は、

見覚えのある顔ばかりだった。


評議会の面々。

王城の重鎮。

そして――

アレクシス王太子。


誰一人、

“裁く顔”をしていない。


それが、

一番怖い。


「……ローゼンクロイツ嬢」


年配の評議員が、

穏やかに口を開く。


「本日は、

 最終的な確認です」


(はいはい、

 最後の確認ですわね)


エリザベートは、

背筋を伸ばした。



「あなたは、

 婚約を自ら破棄しました」


「それでもなお、

 混乱は起きなかった」


「判断は早まり、

 争いは減りました」


エリザベートは、

心の中で叫ぶ。


(それは、

 私のせいではありませんわ!)



「王妃候補としての扱いも、

 拒否されました」


「それでも、

 支持は揺らがなかった」


「むしろ――」


評議員は、

一度言葉を切る。


「“逃げない覚悟がある”と

 評価されました」


エリザベートは、

ついに声を上げた。


「逃げましたわ!」


「全力で!」


「これ以上ないほど

 分かりやすく!」


広間が、

一瞬だけざわついた。


だが、

誰も否定しない。



アレクシス王太子が、

一歩前に出る。


「……だからこそだ」


「君は、

 この場所に縛られない」


「縛られないから、

 戻ってきたときの言葉が

 信じられる」


エリザベートは、

頭を抱えた。


「理屈が、

 おかしいですわ!」


「悪役令嬢は、

 嫌われて終わる存在ですのよ!」


「なぜ――」



その瞬間。


評議会の全員が、

一斉に立ち上がった。


「ローゼンクロイツ嬢」


「我々は、

 あなたを――」


一拍。


「王妃として迎えたい」


静寂。


完璧な静寂。



エリザベートの思考は、

完全に停止した。


数秒後。


彼女は、

ゆっくりと顔を上げ、

そして――


全力で叫んだ。



「なぜこの場所に戻るの!!

悪役令嬢なのに!!」



沈黙。


次の瞬間。


誰かが、

小さく笑った。


それを皮切りに、

広間は――

温かな空気に包まれる。


「そこが、

 あなたらしい」


「最後まで、

 自分を曲げない」


「だからこそ」


「この国は、

 あなたを選びます」



エリザベートは、

力なく椅子に座り込んだ。


「……納得できませんわ」


「一つも」


アレクシス王太子は、

苦笑しながら手を差し出す。


「それでいい」


「納得しなくていい」


「君は、

 最後まで

 悪役令嬢でいればいい」


エリザベートは、

その手を見つめ、

小さくため息をついた。


「……悪役令嬢が、

 王妃ですって」


「聞いたこと、

 ありませんわ」


殿下は、

静かに答える。


「だから、

 国が持つ」



その日。


王城に、新たな記録が残った。


《王妃就任の言葉》

――

「納得はしていない」


だが。


その不満げな表情と、

最後まで折れなかった背筋は――


史上もっとも支持された王妃として、

永く語り継がれることになる。



そして今も。


エリザベート・フォン・ローゼンクロイツは、

王妃の椅子に座りながら、

本気で思っている。


(……いつか、

 完璧な悪役になってみせますわ)


その夢が叶う日は、

きっと来ない。


だが――

誰も困らない。



完。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ