表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『悪役令嬢になりたいのに、全部善行扱いされてしまうんですが!?』  作者: ゆう
王都編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/71

第33話:前提として扱われる日常(※本人は未承諾)

第33話:前提として扱われる日常(※本人は未承諾)


その朝。


エリザベート・フォン・ローゼンクロイツは、

目覚めた瞬間から違和感を覚えていた。


(……部屋が、静かすぎますわね)


扉を開けると、

そこには侍女が三人。


全員、やけに姿勢がいい。


「おはようございます、

 ローゼンクロイツ様」


「……ええ」


(人数、

 増えてません?)


気のせいだろう、と自分に言い聞かせたその時。


「本日の予定でございます」


差し出されたのは、

見覚えのない予定表だった。



《午前:王都視察》

《昼:評議会補助会合》

《午後:殿下との意見交換》

《夕刻:調整》


(……調整?)


「……これは?」


「王妃候補用の予定表です」


(即答)


エリザベートは、

一拍おいてから聞き返した。


「……誰の?」


「ローゼンクロイツ様の」


(私、

 まだ何も承諾してませんわよね!?)



王都視察。


街は平和だった。


あまりにも平和すぎた。


「ローゼンクロイツ様、

 この税制案について

 どうお考えでしょう」


商人が、

当然のように聞いてくる。


「……当然のように

 聞かれていますわね」


「はい」


「当然ですので」


(そういう問題ではありませんわ)


エリザベートは、

反射的に答えてしまった。


「短期的には利益が出ますが、

 長期的には反発を招きますわ」


「では、

 修正いたします」


(即採用)


(あれ?

 今の、

 悪役ムーブのつもりでしたのに)



昼。


評議会補助会合。


席に置かれていた名札を見て、

エリザベートは固まった。


《王妃候補:ローゼンクロイツ》


「……」


そっと、

裏返した。


(見なかったことに)


だが五秒後。


「ローゼンクロイツ様、

 ご意見を」


(見なかったことに

 できませんでしたわ)



午後。


回廊でアレクシス王太子と遭遇。


「……忙しそうだな」


「殿下のせいですわ」


即答だった。


「私は、

 戻るつもりはありませんでしたのに」


殿下は、

どこか諦めた顔で言う。


「知っている」


「だが、

 君が拒否するたびに」


「周囲は

 “王妃らしい”と

 思ってしまうらしい」


「……迷惑ですわね」


「非常に」


二人の意見は、

完全に一致していた。



夕方。


黒薔薇会との茶会。


「……エリザベート様」


マルグリットが、

おずおずと聞く。


「もう、

 “候補”じゃないですよね……?」


エリザベートは、

紅茶を置いた。


「ええ」


「前提ですわ」


「前提!?」


リリアが、

勢いよく立ち上がる。


「悪役なのに!?」


「ここまで

 自然に組み込まれてどうするんですか!?」


クレアが、

淡々と告げた。


「拒否が

 イベント扱いされてます」


「拒否するたび、

 評価が加算されています」


「詰みです」


セシリアは、

遠い目をした。


「ここまでくると、

 もはや才能よ」



その夜。


エリザベートは、

自室の椅子に深く座り込み、

天井を見上げた。


「……なぜ」


「なぜ、

 この場所に戻るのかしら」


婚約は破棄した。

役目も拒んだ。


それなのに。


明日の予定表は、

もう更新されている。


「悪役令嬢なのに……」


誰も、

答えてくれない。


だが一つだけ、

はっきりしていることがあった。


この城は、

この国は――

彼女を“外側”に置く気が、

 一切ない。



翌朝。


新しい通達が出る。


《王妃候補関連案件は、

 従来通り

 ローゼンクロイツ様を基準とする》


エリザベートは、

それを読んで小さく呟いた。


「……基準」


「悪役令嬢が?」


その問いに、

誰も疑問を挟まなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ