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『悪役令嬢になりたいのに、全部善行扱いされてしまうんですが!?』  作者: ゆう
王都編

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第26話:エリザベート、悪役を叱る

第26話:エリザベート、悪役を叱る


その異変は、

黒薔薇会でも、王城でもなく――

王都の端の、小さな広場から始まった。


「ローゼンクロイツ様のやり方を、見習うべきですわ」


甲高い声が響き、

周囲の空気が凍る。


発言した令嬢は、胸を張っていた。

その隣には、同じような表情の貴族たち。


「曖昧な態度は、美しくありませんもの」

「覚悟を示さない者は、黙るべきですわ」


――正しそうな言葉。

――だが、妙に鋭い。


人々は口を閉ざし、

視線だけが泳いでいた。


そこへ。


「……それは、違いますわ」


静かな声が、

場を割った。


振り向いた先にいたのは、

エリザベート・フォン・ローゼンクロイツだった。


扇子は閉じられ、

表情は、珍しく柔らかくない。


「覚悟、覚悟と仰いますけれど」


一歩、前に出る。


「あなたは、

 誰の覚悟を背負うつもりですの?」


令嬢は、言葉を詰まらせた。


「そ、それは……」


「ご自分の覚悟ですか?」

「それとも、

 ここにいる方々の人生ですか?」


空気が、

一段、冷えた。


エリザベートは、

はっきりと言い切る。


「覚悟とは、

 相手を黙らせるための言葉ではありませんわ」


「それを使うなら、

 責任も、結果も、

 すべて引き受けなさい」


沈黙。


誰も、

反論できなかった。


それは

“悪役令嬢の言葉”だったが、

同時に――

完全に筋が通っていた。



遠巻きに見ていた人々が、

息を呑む。


「……叱った?」

「ローゼンクロイツ様が?」


「でも、

 あれは……」


「正論だわ」


誰かが、

ぽつりと呟いた。


「……怖いけど」

「逃げ場を作ってくれてる」



少し離れた場所で、

アレクシス王太子と黒薔薇会は

同時に固まっていた。


「……止めた」


マルグリットが、

小さく声を漏らす。


「しかも、

 感情じゃなく……」


クレアが、

眼鏡を押さえる。


「論理で、です」


セシリアは、

深く息を吐いた。


「……最悪」


「“統治者向き”の止め方よ」


リリアは、

悔しそうに歯を噛む。


「悪役なのに!!」

「悪役なのに、

 守ってるじゃないですか!!」


セラフィーナは、

腕を組んだまま、低く言った。


「……あいつ」


「本気で嫌われに行ってるのに」

「一番、信頼されるやり方を

 無意識で選んでる」



その後。


広場の空気は、

ゆっくりと戻った。


誰かを責める声は消え、

人々はそれぞれの話を始める。


エリザベートは、

それを見て満足そうに頷いた。


「……ええ」


「しっかり、

 嫌われましたわね」


「正面から言われるのは、

 きっと、

 お嫌でしょうし」


(……逆です)


(めちゃくちゃ評価上がってます)


誰も、

その事実を

彼女に伝える勇気はなかった。



その日の夜。


王城には、

一つの報告が上がる。


「本日の広場での件ですが……」


「ローゼンクロイツ嬢の対応が、

 非常に冷静かつ公平だったと」


「“感情論を排した調停”として、

 高く評価されています」


アレクシスは、

目を閉じた。


(……始まったな)


それは、

最初の小さな事件。


だが確実に、

“個人の問題”ではなくなった瞬間だった。


エリザベート・フォン・ローゼンクロイツは、

その夜、日記にこう記した。


《本日》

《少々、強めに申し上げました》

《きっと、嫌われましたわ》


そして、

一行付け足す。


《悪役令嬢として、

 良い仕事をしました》


――王都は、

その“良い仕事”を、

別の名前で呼び始めていた。


**「王妃の器」**と。


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