表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『悪役令嬢になりたいのに、全部善行扱いされてしまうんですが!?』  作者: ゆう
王都編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/71

第25話:同盟初日、全員が即後悔する

第25話:同盟初日、全員が即後悔する


その同盟は、

結ばれた瞬間から間違っていた。


黒薔薇会と王太子アレクシスによる

“エリザベート管理同盟”。


目的は明確だった。


――これ以上、

 彼女に成功体験を与えないこと。


ただし、

誰も一つ大事な前提を

確認していなかった。


本人に説明していない。



「というわけで」


エリザベート・フォン・ローゼンクロイツは、

朝のサロンで、

にこやかに宣言した。


「本日より、

 皆さまと殿下が

 わたくしの行動を

 “見守って”くださるそうですわ」


殿下は、

喉を鳴らした。


「……“見守る”というか」


「ええ」


エリザベートは、

即座に頷く。


「制限付き悪役修行ですわね」


(違う)


黒薔薇会全員の

心の声が揃った。



最初の異変は、

早かった。


「ではまず」


エリザベートは、

扇子を閉じて言った。


「今日は、

 何を“控えれば”

 よろしいのかしら?」


殿下と黒薔薇会は、

一斉に固まった。


(控える……?)


(なぜ、

 そう解釈した?)


クレアが、

慎重に答える。


「……控える、

 というより」


「はい?」


「“相談してから”

 動いてほしい、

 という意味です」


エリザベートは、

少し考えたあと、

感心したように言った。


「なるほど」


「単独犯行を

 やめろ、

 ということですわね」


(犯行!?)


セラフィーナが、

頭を抱えた。


「……違う」


「でも、

 訂正すると

 余計ややこしくなる」



その直後。


エリザベートは、

小さく手を挙げた。


「では」


「最初の相談ですわ」


全員が、

一斉に身構える。


「……何だ?」


殿下が、

恐る恐る聞く。


エリザベートは、

にっこり微笑んだ。


「今日、

 どなたを

 突き放せば

 よろしいかしら?」


沈黙。


フローラが、

声を裏返らせる。


「つ、突き放す……!?」


「はい」


「距離感の調整ですわ」


「……えっと」


「悪役として、

 適切な対象を

 選びたいですの」


(もうだめだ)


(初日で、

 詰んでる)



殿下は、

深く息を吸った。


「……誰も、

 突き放さなくていい」


「本日は、

 “様子見”だ」


エリザベートは、

目を輝かせた。


「まあ!」


「“何もしない”という

 高度な悪役ムーブですわね!」


(違う!!)


リリアが、

思わず叫んだ。


「それは、

 悪役じゃない!!」


エリザベートは、

きょとんとした。


「……?」


「え?」


「何もしないのに、

 皆さまが

 緊張している……」


「これ、

 最高に効いてません?」


殿下は、

その場で膝を折りかけた。



昼過ぎ。


同盟は、

すでに崩壊寸前だった。


エリザベートは、

一挙手一投足のたびに

相談してくる。


「今、

 冷たい視線を

 向けるべきかしら?」


「この沈黙、

 続けた方が

 不安を煽れます?」


「この紅茶、

 飲まずに置いたら

 嫌味になります?」


そのたびに、

黒薔薇会と殿下は

全力で止める。


「飲んでください!」

「普通に飲んでください!」

「それはただの放置です!」


だが、

エリザベートは

満足そうだった。


「まあ」


「皆さま、

 熱心ですわね」


「こんなに

 悪役修行に

 付き合ってくださるなんて」


(……違う意味で、

 熱心なんだが)



夕方。


全員が、

完全に疲弊していた。


殿下は、

椅子に沈み込み、

呟く。


「……初日で、

 ここまでとは」


セシリアが、

遠い目をする。


「同盟って、

 もっと

 希望があるものだと

 思ってたわ」


クレアは、

静かに結論を出した。


「計画が、

 必要です」


「場当たり的に

 対応すると、

 こちらが削られます」


マルグリットは、

小さく手を挙げた。


「……で、

 エリザベート様は」


全員が、

視線を向ける。


そこには、

紅茶を飲みながら

上機嫌な令嬢がいた。


「……?」


「どうなさいましたの?」


殿下は、

力なく答えた。


「……なんでもない」


エリザベートは、

満足そうに微笑んだ。


「では」


「明日も、

 よろしくお願いしますわ」


同盟初日。


全員が、

心の底から思った。


――この同盟、

 長期戦になる。


そして同時に、

こうも思った。


――逃げ場は、

 もうない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ