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『悪役令嬢になりたいのに、全部善行扱いされてしまうんですが!?』  作者: ゆう
王都編

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第20話:殿下、すべての責任を背負う

第20話:殿下、すべての責任を背負う


アレクシス王太子の一日は、

ため息から始まった。


机の上に積まれた書類は、

昨日の倍。

しかも、内容がどれも似ている。


――「改革の進捗について」

――「殿下のご意向の確認」

――「ローゼンクロイツ様式の運用是非」


(……何一つ、

 指示していない)


それなのに、

すべてが彼の名前を経由して回ってくる。


「殿下」


側近が、

静かに扉を叩いた。


「本日、

 黒薔薇会の方々が

 面会を求めております」


アレクシスは、

一瞬だけ固まり――

そして悟った。


(……来たな)



応接室。


扉が開いた瞬間、

空気が変わった。


エリザベートはいない。

だが、

彼女に最も近い存在が、

全員揃っている。


マルグリットは、

胸元で手を組み、

おどおどと立っていた。


フローラは、

少し怯えた様子で

周囲を見回している。


クレアは、

無駄のない動きで

椅子に腰を下ろし。


リリアは、

最初から臨戦態勢だ。


セシリアは、

腕を組み、

完全に“話を聞く側”の顔。


そして――

セラフィーナは、

一歩前に出て、

真っ直ぐ殿下を見据えた。


「……殿下」


その声は、

低く、ぶっきらぼうだった。


「最近の王都、

 ひどい」


アレクシスは、

即座に反論しなかった。


それが、

彼の限界を示していた。



最初に口を開いたのは、

マルグリットだった。


「あ、あの……

 エリザベート様の言葉が……

 その……

 少し、

 違う形で……」


「歪んでいる」


クレアが、

端的に補足する。


「本来は、

 覚悟と責任を

 同時に求める言葉です」


「今は、

 責任を他人に押し付ける

 免罪符として

 使われている」


リリアが、

机を叩いた。


「それは正義じゃない!!

 ただの威圧だ!!」


フローラは、

小さく頷く。


「……怖いですぅ。

 みんな、

 “正しいことを言ってる顔”

 してますけど……」


セシリアは、

ため息混じりに言った。


「空気だけが正義ぶって、

 中身が追いついていない。

 よくある話ね」


全員の視線が、

アレクシスに集まる。


セラフィーナが、

一歩踏み出した。


「……あんた」


「彼女を、

 守るって言っただろ」


殿下は、

ゆっくりと息を吸った。


「……守っている」


「どうやって?」


「……」


沈黙。


それが、

答えだった。



「止めなかった」


クレアが、

静かに言う。


「それは、

 容認と受け取られます」


「殿下の立場なら、

 なおさら」


アレクシスは、

机に手を置いた。


「……私は」


「彼女の言葉を、

 正しく理解している」


「だが、

 王都が勝手に――」


セラフィーナが、

遮った。


「それを、

 放置した」


――ぐさり。


完全に、

心に刺さった。



そこへ。


「失礼しますわ」


場の空気を、

一瞬で塗り替える声。


エリザベート・フォン・ローゼンクロイツが、

扉の前に立っていた。


「……皆さま、

 どうしてこちらに?」


全員が、

一斉に振り向く。


アレクシスは、

立ち上がった。


「……来てくれたか」


「ええ。

 何やら、

 大変そうでしたので」


彼女は、

いつも通りの微笑みで

席に着いた。


「……で?」


「何が起きているのか、

 分かりませんの」


黒薔薇会の面々は、

一斉に言葉を詰まらせた。


(……本人、

 知らない)


(ここまで、

 完全に)


セシリアが、

額を押さえた。


「……殿下」


「はい」


「これはもう、

 殿下の仕事よ」


アレクシスは、

苦笑した。


「……分かっている」


エリザベートは、

首を傾げる。


「……?」


セラフィーナは、

ぽつりと言った。


「……大丈夫だ」


「お前は、

 何も間違ってない」


エリザベートは、

少し驚いた顔で

目を瞬かせた。


「……そうですの?」


「……ああ」


アレクシスは、

深く息を吐いた。


(……私が、

 全部引き受けよう)


王都は、

この瞬間、

ようやく理解した。


――一番大変なのは、

 “何もしていない人”である。


その代表が、

今ここにいた。


そしてこの後、

殿下はさらに忙しくなる。


だがそれは、

また別の話。


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