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『悪役令嬢になりたいのに、全部善行扱いされてしまうんですが!?』  作者: ゆう
王都編

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第14話:王都、基準を捨てる勇気

第14話:王都、基準を捨てる勇気


王都は、ついに悟った。


「……基準を、捨てよう」


その言葉が発せられた瞬間、

会議室にいた全員が――

深く、深く頷いた。


誰一人として反対しない。

誰一人として代案を出さない。

なぜなら全員が、同じ地平に立っていたからだ。


――考えるだけ無駄。


「基準を作って」

「運用して」

「即座に崩壊した」


この三点セットを経験した以上、

もう試行錯誤という名の自爆は不要だった。


「……つまり」


年配の貴族が、

恐る恐る言葉を選ぶ。


「ローゼンクロイツ嬢に対しては」


「はい」


「何もしない」


「……はい」


「考えない」


「……はい」


「触れない」


「……はい」


沈黙。


「……それ、

 最初からそうしていれば

 よかったのでは?」


全員が一斉に目を逸らした。



その方針は、

即座に現場へと下ろされた。


――“ローゼンクロイツ対応・最終案”。


内容は簡潔。


・彼女を見ても驚かない

・動いても報告しない

・発言に意味を求めない

・異変があっても平常心


(※難易度:極高)



庭園。


エリザベートは、

今日も紅茶を飲んでいた。


それだけで、

昨日までは王都が揺れていた。


だが今日は違う。


護衛たちは、

**必死に“何も見ていない顔”**をしている。


(……見ない)

(聞かない)

(考えない)


それはもはや、

修行僧の域だった。


エリザベートが立ち上がる。


――誰も反応しない。


(……よし)


方向を変える。


――誰も反応しない。


(……耐えろ)


紅茶を置く。


――誰も反応しない。


(……勝った)


護衛の一人が、

内心でガッツポーズを取った。



……次の瞬間。


「今日は、

 少し人が少ないですわね」


――アウト。


その一言で、

全員の精神が崩壊しかけた。


(少ない……?)

(誰と比べて?)

(昨日? 一昨日?)

(王都全体?)


だが、

そこは新方針。


誰も動かない。

誰も顔色を変えない。


……五秒耐えた。


六秒。


七秒。


ついに、

一人の護衛が

限界を迎えた。


「……通常です!」


声が裏返っていた。


エリザベートは、

少し驚いた顔で首を傾げる。


「そうですの?」


(あ、

 普通の会話だ)


全員が、

その事実に衝撃を受けた。


(……今)


(普通に会話した?)


(何も起きてない?)



その頃、王城。


報告を受けたアレクシスは、

慎重に確認した。


「……で、

 問題は?」


「ありません」


「本当に?」


「はい。

 何も起きていません」


「……彼女は?」


「紅茶を飲まれています」


アレクシスは、

ゆっくりと息を吐いた。


「……それでいい」


「殿下?」


「それでいいんだ」


その言葉は、

祈りに近かった。



夕方。


エリザベートは、

紅茶を飲み終え、

満足そうに立ち上がった。


「今日は、

 とても落ち着いていますわ」


王都側は、

全力で頷いた。


(はい)

(落ち着いています)

(何も考えていません)

(どうかそのままで)


王都は、

初めて学んだのだ。


――分からない相手には、

 分からないまま接するしかない。


それが、

この日の最大の進歩だった。


もちろん。


翌日には、

全部台無しになるのだが。


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