表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『悪役令嬢になりたいのに、全部善行扱いされてしまうんですが!?』  作者: ゆう
王都編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/71

王都編・第7話 ローゼンクロイツ嬢は、危険です

王都編・第7話 ローゼンクロイツ嬢は、危険です


王都の会議は、今日も静かに始まった。


――静か、というのは表現として正しい。

内容は、まったく静かではなかったが。


「では、

 例の件について整理します」


書記が、淡々と告げる。


「ローゼンクロイツ嬢――

 現在の分類についてです」


(……またこの話か)


何人かが、内心でそう思った。

だが同時に、誰も否定できない。


なぜなら――

分類できていないからだ。


「まず確認ですが、

 彼女は王都で問題行動を起こしていますか?」


「……いいえ」


「反王家の発言は?」


「……確認されていません」


「他家との軋轢は?」


「……直接的な衝突はありません」


沈黙。


(……では、何が問題なのだ)


一人が、慎重に口を開く。


「……にもかかわらず、

 社交界が彼女を“避けている”」


「ええ。

 誰も敵対しない。

 誰も近づかない」


「称賛はある。

 だが、関与がない」


別の者が、額に手を当てた。


「……厄介だな」


「非常に」


誰かが、ぽつりと漏らす。


「……“危険”なのでは?」


即座に反論が飛ぶ。


「違う。

 危険なら、

 もっと分かりやすい」


「騒ぎを起こす」

「主張する」

「敵を作る」


「彼女は、

 そのどれもしない」


(……それが問題なのだが)


別の者が、低く言った。


「彼女は――

 期待を受け取らない」


空気が、わずかに張り詰めた。


「褒賞に反応しない」

「役割を拒否する」

「誘導できない」


「しかも、

 拒否が丁寧で、

 否定に見えない」


(……それが一番厄介だ)


王都は、

“拒否される”ことには慣れている。


だが――

“納得されない拒否”には、慣れていない。


「では、

 どう分類する?」


沈黙。


誰も答えを出せない。


そのとき、

王太子アレクシスが口を開いた。


「……彼女は、

 危険人物ではない」


全員の視線が集まる。


「だが、

 安全でもない」


(……殿下?)


「彼女は、

 王都のルールを

 理解していないのではない」


「理解した上で、

 選ばない」


その一言で、

空気が変わった。


「……つまり?」


アレクシスは、静かに続けた。


「自分の基準でしか動かない」


「称賛されても、

 それを目的にしない」


「評価されても、

 役割にしない」


「だから、

 誰も彼女を掴めない」


沈黙。


それは、

王都にとって最悪の評価だった。


「……では、

 結論は?」


書記が、恐る恐る尋ねる。


誰かが、疲れたように言った。


「……“危険枠”だな」


「だが、

 排除対象ではない」


「刺激厳禁」

「接触は慎重に」

「囲い込み禁止」


(……なんだ、それは)


(扱えない、

 という意味ではないか)


アレクシスは、内心でため息をついた。


(……彼女は)


(本当に、

 悪役令嬢になりたいだけなのに)


(どうして、

 ここまで話をややこしくするのだ)


会議は、

結論を出さないまま終わった。


いや――

出せなかった。



同じ頃。


エリザベート・フォン・ローゼンクロイツは、

自室で紅茶を飲みながら、

機嫌よく考えていた。


(……今日は、

 妙に静かでしたわね)


(これはこれで、

 成功ですわ)


(きっと、

 わたくしの“強め悪役ムーブ”が

 効いていますの)


――その評価が、

「危険枠」に入った結果だとは、

露ほども知らずに。


(次は、

 もう少し踏み込みましょうかしら)


王都と、

エリザベートの認識は、

今日も見事にすれ違っていた。


――続きますわ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ