表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『悪役令嬢になりたいのに、全部善行扱いされてしまうんですが!?』  作者: ゆう
新章 『婚約破棄したはずなのに、なぜか評価が更新され続けますわ』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/71

新章・第7話 保護対象に指定されましたわ

新章・第7話 保護対象に指定されましたわ


それは、エリザベート・フォン・ローゼンクロイツの知らぬところで、

静かに、そして確実に進行していた。



職員室。


重厚な扉が閉められ、

教師たちは円卓を囲んでいた。


「……では、本題に入りましょう」


年配の教師が、咳払いをする。


「ローゼンクロイツ嬢の件です」


一斉に、空気が引き締まった。


「婚約破棄後の反響が……

 想定を超えています」


「学園内外からの視線が集中しすぎている」


「精神的負担を、

 本人が自覚していない可能性も……」


別の教師が、眉を寄せる。


「彼女は落ち着いていますが、

 それが“無理をしている”可能性も否定できません」


「……確かに」


「年齢を考えれば、

 あまりにも冷静すぎる」


(※本人はただ呆然としているだけ)


生徒会顧問が、腕を組んだ。


「つまり……

 我々としては――」


沈黙。


そして。


「保護対象として扱うべきではないでしょうか」


その言葉に、

誰も反論しなかった。



一方、その頃。


エリザベートは、

いつものように学園の廊下を歩いていた。


(……今日は、

 やけに静かですわね……)


視線はあるが、

声をかけられない。


ざわめきが、

妙に抑えられている。


(……嵐の前触れですわ)


その予感は、

すぐに現実になった。


「ローゼンクロイツ嬢」


呼び止めたのは、

担任教師だった。


「少し……

 お時間をいただけますか」


(……来ましたわ)



応接室。


丁寧に用意された紅茶。


過剰なほどの配慮。


教師は、

慎重に言葉を選びながら告げた。


「最近……

 あなたを取り巻く状況が、

 非常に慌ただしくなっていますね」


「……そうでしょうか」


(自覚はありますけれど)


「そこで、

 学園として一つ、

 決定を下しました」


嫌な予感しかしない。


「ローゼンクロイツ嬢を、

 当面の間、

 “特別保護対象”とします」


「……は?」


エリザベートの思考が、

一瞬、停止した。


「保護……

 対象……?」


教師は、

柔らかく微笑む。


「無理な勧誘、

 過度な取材、

 私的な接触――

 そうしたものから、

 あなたを守るためです」


(……守られてしまいましたわ)


「必要であれば、

 移動時の同行、

 スケジュール調整、

 周囲への注意喚起も行います」


(完全に“貴重品”扱いですわ……)


「……わたくしは、

 そこまで――」


「遠慮は無用です」


(遠慮ではありませんの!!)



その決定は、

即座に学園中へ広まった。


「聞いた?」

「ローゼンクロイツ様、

 保護対象ですって……」


「やっぱり……」

「繊細な方だもの……」


(繊細ではありませんわ!!)


黒薔薇会の部屋では、

即座に緊急会議が始まっていた。


「ほ、保護対象……!」

マルグリットが、

蒼白になっている。


「エリザベート様……

 無理していらっしゃったんですね……!」


「してませんわ!!」


フローラは、

目を潤ませる。


「わたしたち……

 もっと優しく……

 静かに……」


「静かにしなくて結構ですわ!」


クレアは、

冷静に分析する。


「学園側、

 リスク管理に入った」


リリアは、

拳を握りしめた。


「守るってことですね!!

 完全防衛ですね!!」


「防衛しなくていいですわ!!」


セラフィーナは、

腕を組んで唸る。


「……まあ、

 ここまで来ると……

 当然か」


セシリアは、

ため息をついた。


「……完全に

 “触れてはいけない存在”ね」


(それが一番困りますの!!)



そして。


黒薔薇会は、

“保護対象の友人”として、

独自解釈を始めた。


「エリザベート様、

 次の授業まで、

 ご一緒します……!」


「お茶は……

 刺激の少ないものに……!」


「変な人が近づいたら、

 すぐ合図を!!」


(皆さま、

 過保護ですわ……!!)


結果。


エリザベートの周囲には、

常に人の壁。


声をかける者は、

遠慮し、

距離を取り、

目礼だけになる。


新聞部ですら、

遠巻きに囁くのみ。


《ローゼンクロイツ嬢、

 そっとしておこう運動》


(そんな運動、

 誰が始めましたの!?)



放課後。


一人になれたと思った瞬間。


「……エリザベート」


低い声。


振り向くと、

セラフィーナが立っていた。


「……どうしたのですの?」


「……本当に、

 平気なのか」


その声は、

ぶっきらぼうだが、

どこか真剣だった。


エリザベートは、

少し考えてから答えた。


「……正直に申し上げますと」


「?」


「状況が、

 よく分かっていませんわ」


セラフィーナは、

小さく笑った。


「……だろうな」


「ですが」


エリザベートは、

まっすぐ前を見る。


「わたくしは、

 自分の選択を後悔していません」


「……」


「だから……

 “守られる存在”になるのは、

 本意ではありませんの」


その言葉は、

静かだが、

強かった。


セラフィーナは、

一瞬目を伏せ――

そして言った。


「……なら、

 ちゃんと立ってろ」


「……?」


「守られてる間に、

 飲み込まれるな。

 それだけだ」


(……相変わらず、

 ぶっきらぼうですわね)



その夜。


エリザベートは、

自室で一人、考えていた。


(評価を下げるどころか……

 “保護”される段階に……)


(……これは……)


小さく、拳を握る。


(……次は……

 “守れない存在”だと、

 示さなければ……)


その決意が、

どんな混乱を招くのか。


彼女は、

まだ知らない。


新章は、

さらに危うい局面へ――。


――続く。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ