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『悪役令嬢になりたいのに、全部善行扱いされてしまうんですが!?』  作者: ゆう
《悪役令嬢ムーブ、全敗》 ――すべてが善行に変換される地獄の学園生活

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第1章 第2話 ――嘲笑するつもりが“救世主”になりましたわ!?

第2話では、主人公の“悪役令嬢ムーブ”が再び裏目に出る展開を書きました!


・嘲笑しようとする

 → 正義の味方扱い

・いじめっ子が逃げる

 → まったく意図してない


という、完全な勘違い劇です。


ミリアがさらに主人公を尊敬していく構図が始まり、

学園内での立ち位置も“悪役”とは逆方向へ加速中。


次回はさらに大きな誤解が起こります!


第1章 第2話 ――嘲笑するつもりが“救世主”になりましたわ!?


 ミリアを“救ってしまった”あの日から一週間。

 私はどうにか立ち直り、今日こそ悪役令嬢としてのムーブを成功させようと決意していた。


(前回はたまたまよ。段差なんて反則……!

 今日は絶対、悪役令嬢らしく振る舞ってみせますわ!)


 そう心に誓いながら、学園の回廊を優雅に歩く。

 太陽の光を受けて揺れる金の巻き髪。

 完璧に整えたドレス。

 悪役令嬢ムーブにふさわしい仕上がりである。


 そこへ、前方から“聞き捨てならない声”が聞こえた。


「ミリアってさ、奨学生なんだって?」

「庶民のくせに調子に乗ってるよね」

「ねぇ、今日ちょっと懲らしめちゃわない?」


 ――いじめだ。


(……よしきた!悪役令嬢の大チャンス!)


 本来の悪役令嬢は、こういう場面で

「まぁ、浅ましいことですわね」

と優雅に嘲笑し、

“悪役らしい”冷酷さをアピールするもの。


(ここで悪役ムーブを披露すれば……! 私の株も悪女ポイント急上昇!)


 私はヒールをコツコツと鳴らしながら、いじめっ子のもとへ向かう。

 彼女たちは私に気付くと、一瞬だけひるんだようだ。


 ――よし、威圧は完了。


 私はうっすら笑って、金の髪を払いながら言ってやった。


「まぁ……浅ましいことですわね」


 完璧。

 SNSで観た悪役令嬢の名台詞を、私はついに生で言ったのだ。


(うふふ……! これで私の悪役ムーブは――)


「ひっ……!」


 いじめっ子たちが、青ざめた。


「エ、エリザベート様!? ご、ごめんなさい!」

「わ、私たち、ただ……!」

「ミリアさんをいじめるなんて、とんでもないです!」


(……あれ?)


 いじめっ子たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。


 残されたのは、優等生タイプの教師と、震えるミリアだけ。


「エリザベート様……!」

教師が感動した声を出した。


(やだ予感しかしない)


「先ほどの言葉……いじめを見つけてすぐ一喝してくださったのですね!」


「いや、あの、それは……」


「素晴らしい判断力です! 生徒の模範となります!」


(ひぃぃぃぃーーッ!!)


 ミリアは涙をにじませながら、私の手を握った。


「エリザベート様……! 私、また救われました……!」


「ち、違うのよミリア! 私はただ――」


「ありがとうございます! 私、もっと強くなります!

 エリザベート様のように!」


(だから違うのよ~~~!!)


 教師まで深く頭を下げる。


「本当に……あなたのような方がいてくれて良かった。

 本日、生徒指導室に報告しておきます」


「やめて!!」


「えっ?」


「い、いえ、その……わざわざ報告するほどのことではなくてよ……!」


 教師は感動のまなざしを向けた。


「謙虚さまで……! さすがはローゼンクロイツ家……!」


(なんでそうなるの!?)


 私は両手で顔を覆った。


(これじゃ……これじゃ正義の味方じゃない……!

 悪役令嬢としての道から……また遠のいていく……!!)


 その日の学園では、

「エリザベート様、いじめを一喝」

という話がもう回っていた。


 私は静かに天に祈った。


(……お願いだから。次こそは悪役ムーブを成功させたいの……!)


 しかし――この願いが叶うことは当面なかった。


ご読了ありがとうございます!

第2話はいかがでしたでしょうか?


“悪役になりたいのに、善行になる”

というコンセプトがさらに濃く出た回でした。


このあと

・高慢発言 → 女子に崇拝される

・王太子に冷たくする → 惚れられる

と、主人公の勘違いっぷりは加速します。


次話 第3話:高慢発言 → 「気高さ」と崇められる

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