第5章 第24話――断罪イベントが完全に消え、殿下の公開プロポーズが発動しましたわ!?
第24話はついに、
断罪 → 消滅
殿下 → 公開プロポーズ発動
会場 → 祝福の嵐
主人公 → 絶望で真っ白
という、本作最大のターニングポイントになりました。
本来のクライマックスが完全に反転し、
エリザベートにとっては地獄、
周囲にとっては歓喜の瞬間。
書いていて一番テンションが上がる回でした。
第5章 第24話――断罪イベントが完全に消え、殿下の公開プロポーズが発動しましたわ!?
会場全体が“殿下のプロポーズ待ち”の空気に染まり、
断罪イベントはすでに跡形もなかった。
(いや……まだですわ……!
私が壇上で罪を告白すれば……
今からでも、断罪イベントに戻せますわ!!)
私は震える手をぎゅっと握りしめる。
「みなさま……!
本日は、わたくし──」
会場が静まり返る。
今なら言える……!
ここで悪事を全部並べ立てれば──
「──わたくしには、重大な──」
その瞬間。
殿下が私の前に立ち、
会場全体に響く声で叫んだ。
「エリザベート。君に“罪”などない!!」
(ちょっ……殿下ぁぁぁぁ!?
今から言おうとしてたところなのに!!
黙っててくださいまし!!!)
殿下は壇上の中心に立ち、
強い目で会場を見渡した。
「皆に告げる。
エリザベート・フォン・ローゼンクロイツは──
この国にとって不可欠の女性だ」
(不可欠……? 断罪対象ではなくて……?)
「彼女は誰よりも努力し、
誰よりも正しく、
誰よりも他者を想う心を持っている!」
(悪行しかしていませんのよ!?
全部失敗して善行扱いになってるだけなのよ!?)
会場からすすり泣きが聞こえた。
「エリザベート様……」
「なんて……なんて清らかな……!」
(清らかじゃないーー!!
わたくし、悪役令嬢志望者なのよーー!!)
殿下は私に向き直り、
手を差し出した。
「エリザベート。
今日、この場で伝えたい言葉がある」
(き、きた……!!
断罪じゃなくて“プロポーズの構え”ですわ……!!!)
殿下の瞳は深く澄み、
もう逃がす気など一切ない。
私は震える声で言った。
「で、殿下……その……
わたくしは……悪役令嬢になりたくて……!」
殿下は一瞬だけ笑みを浮かべた。
「君がどう思おうと関係ない。
私は君のすべてを受け入れる」
(受け入れないで!!
悪役志望は普通、敬遠されますわよ!?)
そして……
殿下は一歩前へ進み、
壇上の中央に立った。
「皆に聞いてほしい!!」
会場の空気が張りつめる。
殿下は右手を胸に当て、
左手を私へと差し伸べた。
「私は──
エリザベート・フォン・ローゼンクロイツを──」
(まさか……まさか……)
「──王妃に迎えたい!!!」
(言ったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!)
会場が爆発するように揺れた。
「きゃあああああ!!」
「ついに!! ついに!!」
「殿下とエリザベート様のご婚約だ!!」
「歴史が動いたぞ!!」
(歴史は動かさなくていいの!!
今日断罪されたいだけだったのに!!
なんで婚約させられていますのーー!?)
殿下は私の手をぎゅっと握った。
「エリザベート。
どうか……私の隣に来てほしい」
私はパニックになり、
必死に否定しようとした。
「む、無理ですわ……!
わたくしは……悪行を……罪を……!!
わたくしこそ……断罪されるべきでして……!」
だが殿下は優しく微笑む。
「“自分を責める癖”も、君の愛しい一部だ」
(ちが……違ーーう!!
わざと悪事してるだけーー!!
それを愛しいと言われるのは一番困るーー!!)
そして――
会場全体が叫んだ。
「エリザベート様!!」
「殿下のプロポーズを!!」
「どうかお受けください!!」
(うけたくありませんわよ!!
わたくし、悪役で断罪死ルート希望ですのよ!!)
壇上の熱気と歓声の中、
私は真っ白になって立ち尽くした。
(お……終わりましたわ……
本当に……断罪の未来が……霞のように消えていった……)
殿下はそっと私の手を包み込む。
「……君の答えはゆっくりで構わない。
だが私は、必ず君を迎えに行く」
(迎えに来ないでくださいまし!!
わたくし、断罪イベントに置いていかれたい女なの!!!)
こうして、
私の望んだ断罪イベントは正式に消滅し、
世界は殿下のプロポーズ一色に染め上げられたのだった。
ここで第5章はほぼ終わり、
残すは 最終章 のみです。
次の 第25話(最終話) では、
「悪役になれなかった令嬢の、幸せすぎる大団円」
「望まないはずの王妃ルートが強制確定」
そんな、本作を締めくくるラストを描きます。




