第5章 第22話――断罪イベントのはずが、なぜか公開プロポーズ会場になりましたわ!?
第22話では、
本来なら“断罪イベント”が行われる式典の当日に、
殿下がまさかの 「公開プロポーズ準備」 をしているという
最大級の地獄展開になりました。
エリザベートは罪を暴露して断罪されたいだけなのに、
殿下は完全に「今日言う」と決めており、
話が一切かみ合っていません。
第5章 第22話――断罪イベントのはずが、なぜか公開プロポーズ会場になりましたわ!?
学園中が「エリザベート様は聖人」と讃え、
殿下までが“彼女は国の希望だ”などと断言したせいで、
私はついに悪役としての逃げ道を完全に失った。
(……終わりましたわ……
悪役令嬢になりたいだけの人生が、
こんな大事故になるなんて……)
しかし──
私は諦めていなかった。
(いいえ、まだ……まだ手はありますわ!)
そう、断罪イベントである。
この学園の卒業前に必ず行われる
“公開進級式典”──
本来の乙女ゲームでは、ヒロインが悪役令嬢に断罪され、
殿下が救いに入るあのイベント。
私はそこで悪行を“告白”し、
堂々と断罪されてみせるつもりだった。
式典の数日前、私は控え室で拳を握りしめる。
(ここよ……!
ここで全てを暴露し、
王太子殿下に嫌われ、
ヒロインルートを邪魔し、
断罪という名の華々しい死に場所を……!)
その日は朝から準備が進み、
会場は学園生徒だけでなく、
貴族や使節までもが招かれていた。
(すごい人数……。
でもむしろ好都合ですわね。
これだけの前で“悪役宣言”すれば、一発で嫌われますわ!)
私は壇上へと続く裏通路を抜け、
緊張したまま待機していた。
すると、控え室にノックが響いた。
「エリザベート、入っても良いか?」
(殿下……! 来ないで!!
本日だけは、本当に来ないでくださいまし!!)
それでも殿下は容赦なく入ってきた。
そして、いつものように柔らかく微笑んでいた。
「……綺麗だ、エリザベート」
「殿下!? 今日は褒められに来たんじゃありません!!」
殿下は私の抗議など気にせず、
そっと手を差し出してきた。
「君が壇上に立つのを、ずっと見ていた。
緊張しているのだろう?」
(してますわよ! 断罪されるために緊張していますのよ!)
「大丈夫だ。
何があっても……私は君の味方だから」
(それが一番困るのですけれど!?)
私は慌てて殿下の手を振りほどき、
はっきり言った。
「殿下……どうか……本日はわたくしを庇わないでくださいまし!」
殿下は瞬きし、ゆっくりと息を吸った。
「……どうして、そんなことを言うんだ?」
(どうしても何も! 断罪されたいのよ!!)
「わたくし……本日は……!
皆さまの前で大きな罪を──」
そう言った瞬間。
殿下は、信じられないほど優しい声で遮った。
「……君は罪など犯していない」
(犯しましたわよ!? 言わせて!!)
「君が“罪”と呼ぶのは、
自分が自分に厳しすぎるだけだ」
(違うのよぉぉ!!
本当に悪行なのよ!! わざとやった悪行ばかりなのよ!!)
殿下は一歩近づき、
私の肩にそっと手を置いた。
「……エリザベート。
この式典で、私は君に伝えることがある」
(……は?)
殿下の瞳は、迷いなどひとつもなく、
まっすぐ私を射抜いていた。
「大勢の前で、どうしても言わねばならないことがあるんだ」
(ま、まさか……)
「式典が始まったら、
真っ直ぐ俺のところへ来てほしい」
(無理無理無理無理!!
それは断罪場所に行く導線ですわよ!?
なんでプロポーズ会場みたいな口調なの!?)
「君が壇上に上がったら──
私はすべてを話す」
(ちょっと待って!?
“すべて”って何!?
断罪ではなく、どう考えても告白の気配しかしませんけれど!?)
殿下は手を伸ばし、
私の指先をそっと取った。
「覚悟していてくれ、エリザベート」
(断罪の覚悟ならとうにできておりますわ!!
でもそちらの覚悟はできておりませんのよ!?)
殿下は静かに微笑んだ。
「君は……必ず私の隣に立つべき人だ」
(
……
……言ったーーーーー!!!
それ、“公開プロポーズの直前の台詞”ではなくて!?
)
私は真っ青になった。
(だめ……今日の式典……
断罪イベントが……完全に殿下のプロポーズ宣言に乗っ取られてますわ……!!)
控え室の扉の外からは、
式典開始の合図が聞こえてくる。
私は震える足で立ち上がった。
(……どうしましょう……
本当に……このままでは……
悪役令嬢になれませんわ……!!)
お読みいただきありがとうございます!
次回の第23話はいよいよ――
「断罪イベント本番……のはずが、まさかの会場全体がプロポーズ待ちになる」
という、本作最大のクライマックスに突入します。
エリザベートの悲鳴が一番大きくなる回です。




