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『悪役令嬢になりたいのに、全部善行扱いされてしまうんですが!?』  作者: ゆう
《悪役令嬢ムーブ、全敗》 ――すべてが善行に変換される地獄の学園生活

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第1章 第1話 ――“邪魔ですわ”が救命になるなんて聞いてませんの!

ここまで読んでいただきありがとうございます!


第1話は、主人公エリザベートの

「悪役令嬢ムーブが全部裏目に出る」

というコンセプトを最も分かりやすく描いた導入話です。


“邪魔ですわ” → “命の恩人”

という予想外の方向転換が、今後もどんどんエスカレートしていきます。


気軽に楽しめるコメディを目指していますので、

次話もよろしくお願いします!

第1章 第1話 ――“邪魔ですわ”が救命になるなんて聞いてませんの!


 ローゼンクロイツ家の馬車が、アカデミア学園の前でゆっくり停止した。


 転生から数日。

 私はついに――

 “悪役令嬢学園ムーブ”の本番を迎えたのだ。


(……今日こそ、悪役令嬢として華々しくデビューしてみせますわ!)


 胸がドキドキする。緊張……ではない。

 悪役令嬢としての初出勤に心が踊っているのだ。


 金の巻き髪は完璧。宝石のような赤い瞳は朝日を反射して輝き、

 深紅のリボンで結んだドレスは「悪役カラー」として100点満点。


 侍女マルティナが心配そうに微笑む。


「お嬢様、本日も……たいへんお美しゅうございます。あまり無理をなさらずに」


「ええ、問題ありませんわ。おほほ」


 ※実際は内心めっちゃテンパっている。


 私は馬車を降り、人で賑わう校門を堂々と歩いた。

 令嬢たちがコソコソ視線を寄せ、ひそひそ声が飛び交う。


 ――来た。噂になってる、これ絶対私のことよね?


(高慢ムーブの見せどころ……!)


 今日の私の目標はただ一つ。


“庶民ヒロインに嫌味を言って悪役令嬢としての存在感を出す”

 これだけだ。


 悪役令嬢の初手といえば、

 「そこをどきなさい」

 「あなた、邪魔よ」

 などの高圧ムーブが基本。


(SNSで見た悪役令嬢テンプレが、いま私の中に……ッ!)


 そして――ターゲットが来た。


 茶色い髪の、小柄で純朴そうな少女。

 ゲームでいえば絶対にヒロイン属性持ち。


(絶対この子でしょ……! 運命の出会いイベントってやつね!)


 私は口元に冷たい笑みを浮かべた。

 震える心を抑え、堂々と歩み寄る。


「そこの庶民。邪魔ですわ――」


 その瞬間。


「きゃっ……!」


 少女の足元にわずかな“段差”があった。

 つまずき、前のめりに倒れかける。


(あっぶなッ!?)


 反射的に私は少女の腕を掴んで、ぐいっと引き寄せた。


 結果、

 少女は倒れずに済んだ。


 ――完全に、助けた。


(ちょ、待って。違うんですけど!?)


 計算外の結果に心の中で悲鳴が上がる。


「だ、大丈夫……?」


 すごく普通の声が出た。高慢ムーブどこ行った。


 少女は震えながら私を見上げた。


「……あ、あの、助けてくださったんですか……?」


「えっ(違う)」


「段差に気付いて……私を……!」


 少女の目が潤む。

 周囲の令嬢たちがざわつく。


「エリザベート様、危険な段差を瞬時に見抜いたって……!」

「なんて優しい方なの……!」

「気高さだけじゃなく、慈愛まで……!」


(いやいやいやいや!)


 言ってない!やってない!

 私はただ、悪役ムーブの第一声を言っただけで――

 結果的に助けただけ……!


 少女は深く頭を下げた。


「わ、私……ミリア・ハートフィールドと申します!

 今日から学園に……っ。お礼を言わせてください!」


「い、いや、本当に偶然というか……」


「エリザベート様のおかげで命拾いしました!」


(やめて~~~ッ!!)


 周りの視線が熱い。

 称賛の声。尊敬の眼差し。

 悪役令嬢としての初手は……大失敗だった。


「……エリザベート様。後でお礼をさせてください!」


 ミリアは嬉しそうに走り去る。


 私は天を仰いだ。


(私、悪役令嬢としてデビューしたかっただけなのに……!

 なんで初手が“救世主ムーブ”なのよ~~!!)


 こうして私の学園生活は、

 悪役令嬢として歩むはずが、“慈愛の聖女”として始まってしまったのだった。


第1話、いかがでしたでしょうか?


悪役令嬢を気取ろうとしては失敗し、

周囲からは好評価の嵐。


エリザベートが苦悩すればするほど、

彼女の魅力は周囲に伝わってしまう──。


そんな“誤解コメディ”を中心に、

ミリア、王太子、学園の面々を巻き込んでいきます。


次話 第2話:いじめを見て嘲笑 → 正義の味方扱い

を準備していますので、ぜひ続きもお楽しみください!

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