第4章 第18話――断罪イベントを自分で告知したのに、称賛されましたわ!?
第18話では、ついにエリザベートが
自作自演で断罪イベントを告知しました。
しかし結果は……
・罪の告白 → 自己反省と誤解
・生徒全員 → 感動して涙
・殿下 → 「君の心は尊い」
・断罪イベント → 尊敬イベントに強制変換
という、本作でも指折りの“悪役阻止回”となりました。
第4章 第18話――断罪イベントを自分で告知したのに、称賛されましたわ!?
殿下の恋愛フラグが完全に確定し、
学園では「実質婚約者」とまで言われるようになった翌日。
(な、なにが“実質婚約者”ですの……!?
私は悪役令嬢になりたいだけなのよ……!!
王太子の隣なんて本来、断罪待ちの席でしょう!?)
私は朝から胃が痛かった。
だが、まだ逆転の可能性はある。
そう、自分で 断罪イベントを作ればいい のだ。
(殿下との恋愛フラグを折るには──
“世間の前で嫌われるしかない”!!)
私は震える手で書類を用意していた。
『本日正午、中庭にて重大発表あり』
学園掲示板に貼り付け、
その下に、自分の名前を書いた。
(これで人が集まるはず……そしてその場で自分の悪行を宣言し、
自ら断罪イベントを起こしてみせますわ!!)
悪役令嬢が自分で断罪を宣告するなんて前代未聞だが、
もうそんなことを気にしていられない。
***
正午、中庭。
私が掲示した文言に惹かれた生徒たちが、
予想以上に集まっていた。
「エリザベート様、何があるんだろう」
「殿下との大事な話かもしれないわ」
「もしかして……新しい慈善活動の告知……?」
(ちが……違いますわ……!
今日は慈善活動じゃなくて断罪イベントの日!!)
私は台の上に立ち、深呼吸した。
「皆さま。
本日は……私から、どうしても伝えたいことがありますの」
ざわつく生徒たち。
殿下まで駆けつけてしまっている。
(来ないで!! 今日だけは来ないで殿下!!)
覚悟を決め、私は声を張った。
「わたくし……重大な“罪”を犯しました!!」
中庭が水を打ったように静まった。
(来た……! これで悪役令嬢ルート復活の兆し……!
さぁ皆、私を非難してちょうだい……!!)
だが。
次の瞬間、ミリアが震える声で叫んだ。
「……エリザベート様……
ご自分を“罪”なんて呼ばないでください!!」
(いや罪を呼んでほしいのよ!?)
「エリザベート様は……いつも私たちのことを思って……
自分の努力不足を“罪”と思い込んでしまわれているんです……!」
(ちょっと待って!? 認識が違いすぎますわ!!)
「わたくしは実際に──」
と言いかけた私を遮るように、今度はクラリスが涙ぐんで言った。
「自分の責任を“罪”と呼ぶなんて……
なんて高潔なお方なの……!」
(違うのよぉぉぉ!! 私は実際に悪行を言いたいのよ!!)
さらにアイリーンまで叫ぶ。
「エリザベート様!
私達は、あなたのような方にいつも助けられて……!」
(助けてませんわよ!? 私は悪役ムーブばかりしていたのよ!?)
生徒たちの間に感動の波が広がり、
あちこちで涙をぬぐう姿が見える。
(なぜ泣くの!? 断罪イベントでしょう!?
今日の私は“悪女宣言”をしに来たのよ!?)
殿下がゆっくりと前に進み出てきた。
静かな声で、しかし力強く言う。
「皆、聞いてほしい」
(来た……殿下……あなたが断罪してくれたら……!!)
「エリザベートは……常に自分に厳しい。
私達がどれほど彼女に救われているか……誰も気づいていない」
(救ってませんわよ!? 悪役をやって失敗しただけ!!)
「自分の“至らなさ”を罪と言うほどに……
周囲のことを考えられる優しい女性だ」
(違う……違うー!!
本当の罪を言わせてーー!!)
殿下は私に向き直り、
優しすぎるほどの声で言った。
「エリザベート。
君が今日ここで“罪”を告白しようとしたその心……
国にとって何より尊い」
(尊くない!! 今日ばかりは尊くないのよ!!)
その言葉に、中庭中が拍手喝采した。
「エリザベート様ー!!!」
「なんて崇高な……!」
「真の淑女だ……!」
(断罪イベントが……拍手喝采の尊敬イベントになっている……!?)
私は震える唇で、小さく呟いた。
「……断罪……は……?」
殿下は優しく首を振る。
「そんなもの、この国には必要ない」
(必要ありますのよ!!!
むしろ私が今日持ってきたのよ断罪を!!)
私はその場でへたり込んだ。
(……どうして……
悪役令嬢をやりたいだけなのに……
ここまで妨害されますの……?)
中庭は祝福ムードのまま、
私の断罪イベントは秒で消滅した。
お読みいただきありがとうございます!
第18話にて、
エリザベートは完全に「断罪不可の国民的象徴」に認定されてしまいました。
次の第19話では、
「罪を重ねようとして全部善行扱い」
エリザベート最大の崩壊回になります。




