第16話――ヒロインとの友情イベントが進みすぎて、私がメインヒロイン扱いされましたわ!?
第16話は、
“ヒロインがエリザベートに友情告白→主人公ヒロイン化”
という、本作でも最もコメディが加速する回でした。
・ミリアの友情告白
・イベントCGのような湖畔シーン
・殿下の好感度上昇
・学園中の「エリザベート=ヒロイン」認識
悪役令嬢どころか、
乙女ゲームの主役ポジションに座っています。
第16話――ヒロインとの友情イベントが進みすぎて、私がメインヒロイン扱いされましたわ!?
ライバル令嬢作りに失敗して、むしろ全員が味方になった翌日。
私は机に突っ伏しながら深いため息をついていた。
本当に……何をどうしても悪役になれませんわね……。
殿下の好感度は爆上がりしたまま、
ミリアの尊敬も止まらず、
学園中の生徒たちは私の姿を見るだけで感激し始める。
悪評どころか、まるで英雄扱い。
(どこかに……誰か一人でも、私を嫌ってくれる人はいませんこと?)
そんなふうにぼんやりしていた時、
耳にひそひそ声が聞こえてきた。
「最近さ、ミリアさん綺麗だよな」
「エリザベート様に導かれて、努力してるんだって」
「もうヒロインっていうより、相棒みたい」
相棒?
なんだか胸騒ぎがして、私は廊下へ出た。
すると、ミリアがこちらを見つけて駆け寄ってきた。
「エリザベート様!」
相変わらず瞳がきらきらしていて眩しい。
そして深呼吸の後、頬を赤らめてこう言った。
「今日、放課後……ご一緒できませんか?」
「な、何をしに?」
「その……エリザベート様と……友達になりたくて……!」
友達!?
悪役令嬢に最も必要のない響き……!
私は慌てて一歩下がった。
「ミリア……わたくしは悪役令嬢になりたいのですわ。
友達なんて、その……眩しすぎて……」
「だからこそです!」
ミリアは両手を胸の前で握りしめ、必死に言った。
「エリザベート様のような方と友達になれたら、
私……もっと頑張れる気がするんです!」
(やめて……! 私がヒロインの心の支えみたいになっていますわよ……!)
断りきれず、気付けば私はミリアに手を引かれ、
放課後、学園裏の湖畔へ来てしまっていた。
ここは……乙女ゲームでヒロインと攻略対象が
絆を深めるイベント場所。
悪役令嬢が来るところではありませんわよ……!!
ミリアは緊張した様子で、小さな包みを差し出してきた。
「これ……ずっと渡したかったんです」
中には手作りのブレスレット。
細い銀糸に小さな石が編み込まれ、
不器用だけれど心のこもった可愛い品だった。
「あなたのために……作りました」
「えっ……?」
「エリザベート様に……友達になってほしいんです」
ミリアの瞳には涙が浮かび、
まるで告白シーンのように揺れている。
(こんなの……完全にヒロインの友情イベントじゃありませんの!!
悪役令嬢はこんな光の世界に来てはダメなんですわ!!)
「ミリア、本当に……?」
「はい! 世界で一番、あなたが大好きです!」
世界で一番!?
ヒロインが悪役に言うセリフではありませんわよ!!
どうしたらいいのかわからず固まっていると、
最悪のタイミングで声が響いた。
「エリザベート」
アレクシス殿下。
湖畔に現れた殿下は、ミリアの手元のブレスレットを見て
驚き、そして穏やかに微笑んだ。
「……ミリア。それは君が?」
「はい……エリザベート様と友達になりたくて……!」
殿下はゆっくりと息を吐き、こちらを見つめる。
「エリザベートは……
本当に誰からも慕われるんだな」
「いや、殿下!? この状況違いますわよ!?
私はヒロインの友情イベントに巻き込まれているだけ!!」
叫びたいのに声にならない。
「君は皆の中心に立つべき人だ」
(中心じゃない! 端っこの悪女になりたいのよ!!)
「エリザベート様は……私の光です!」
ミリアまでそう言い切る。
光……。
私は闇の女になりたかったのに……!!
その日の学園ではまた噂が広まった。
「ミリア、エリザベート様に友情告白」
「尊すぎる……!」
「殿下も認める仲なんて、絆が深すぎる」
「エリザベート様が本物のヒロイン」
(最後の一文……本当にやめてくださいまし!!
私は悪役令嬢……悪役令嬢志望なんですのよ!!)
私は湖畔でそっと天を仰いだ。
(どうして……どうして“悪役令嬢になる”ってこんなに難しいの……)
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
第16話で
主人公のヒロイン化が完全に確定 しました。
次は 第17話:殿下の恋愛フラグが確定 → 告白イベント寸前
という、恋愛絡みが最大加速する回になります




