第2章 第12話――殿下に不敬発言をしたつもりが、「本心を言える唯一の存在」扱いされましたわ!?
第12話は、
“王太子に対する不敬発言”という、
悪役令嬢にとって最大の武器を使った回でした。
しかし結果は――
・殿下「本音を言ってくれる唯一の相手」認定
・ミリアや令嬢達「深い信頼関係!」
・学園中「2人の距離近すぎ!」
という“恋愛フラグ大爆発”となり、
悪役どころか 物語のメインヒロイン になりつつあります。
第2章 第12話――殿下に不敬発言をしたつもりが、「本心を言える唯一の存在」扱いされましたわ!?
証拠捏造のつもりが功績扱いとなり、
憲兵隊にまで頭を下げられてしまった翌日。
(もう……もう無理なのでは……?
私が悪役令嬢になるルート……どこにも存在しませんわ……)
私は半ば放心状態で学園に向かっていた。
(でも、ここで諦めるわけにはいきませんわよね……!
悪役令嬢の最終兵器……
それは “王太子に不敬発言”!!)
王太子アレクシスの前で堂々と暴言を吐けば、
さすがに庇護できないはず。
(今の殿下は……完全に私びいき。
だからこそ! もっと強めの言葉をぶつけて“嫌われる”しかありませんわ!!)
今日こそは絶対に成功させる。
私は拳を握りしめながら、殿下を探した。
***
昼休み。
学園中庭。
アレクシス殿下は一人で本を読んでいた。
(よくもまあ……そんな爽やかに……!
こうなったら、ここで不敬ムーブをキメますわ!)
私は堂々と歩み寄って、
殿下の前に立った。
「殿下」
アレクシスは微笑んだ。
「エリザベート。来てくれたのか」
(……その笑顔を曇らせますわよ……覚悟なさい!)
私は深呼吸し――
心の中で最悪のセリフを選んだ。
「殿下って……本当に鬱陶しい方ですわね」
言っちゃった! 言ってしまいましたわよ!!
王太子に対して“鬱陶しい”!!!
最大級の不敬発言!!!
(よし……これで殿下の怒りゲージMAX!
断罪フラグが立つ……!!)
ところが。
「…………」
殿下は目を見開いたあと――
ふっ、と優しく笑った。
(えっ……なんで笑うの!? 怒らないの!?)
「……ありがとう、エリザベート」
「は……?」
「そんなふうに……遠慮なく言ってくれるのは君だけだ」
(??????)
殿下は静かに本を閉じて、
私へ視線を向ける。
「私は周囲から“理想の王太子”として扱われる。
誰も本音を言わない。
褒め言葉ばかりだ」
(知らんがな……!!)
「だが君だけは……違う」
(いやいや違いすぎますわよ!? 私、不敬発言しただけですわよ!?)
「君が本音で接してくれることが……嬉しい」
(なにそれ!? 恋愛フラグが急成長してません!?)
「殿下! わたくしは本気で鬱陶しいと思っておりますのよ!?」
「うん。それでいい」
「よくありませんわよ!!!」
殿下は優しく微笑むだけ。
「君が本音を言ってくれるから……
私は“自分が王太子でない時の自分”でいられるんだ」
(いや、そんな浄化イベントいらないんですけど!?
私は悪役令嬢競技の真っ最中なんですのよ!?)
さらに追撃のように、
ミリアまで駆け寄ってくる。
「殿下とエリザベート様……
なんだか“本音で語り合える関係”みたいで……素敵です……!」
(ちがああああああう!!!
私はただの暴言吐きですわよ!!)
クラリスとアイリーンも現れた。
「エリザベート様……殿下に“本心で物を言える”なんて……」
「まさに信頼の証……」
「王太子でさえ飾らずに向き合える唯一の相手……!」
(ひぃぃぃぃ!!
最大級の不敬が“最大級の信頼イベント”に変換されていくぅぅ!!!)
殿下は、そっと私の手を取る。
「エリザベート。
これからも……本音を聞かせてくれ」
「……ムリですわぁぁぁ!!」
(不敬で嫌われたいのよ!!
なんで好感度が爆上がりするのよ!!)
その日、学園に広まった噂。
「エリザベート様、殿下に唯一本心を言える相手」
「殿下、エリザベート様に特別な信頼」
「本音をぶつけ合う関係=恋仲寸前?」
(最悪……!!
私の不敬ポイント、逆に“正直ポイント”として加算されてますわよ~~!!)
私は空に向かって叫びたい気分だった。
(どうして……どうして私は……
悪役令嬢になりたいだけなのにぃぃぃ!!)
お読みいただきありがとうございました!
第12話をもって、
エリザベートの悪役計画は ほぼ壊滅 しました。
殿下との関係は、すでに“運命の人扱い”。
次は 第13話:国中の支持が高まり、悪役化がもはや不可能に




